ケセランパサラン読書記 ーそして私の日々ー

◆『都市空間のなかの文学』 前田愛 著 ちくま文庫

  

タモリは、いいなぁーと思う。
NHKのTV「プラタモリ」で、一般人が入れないところも行っちゃうんだから。
でも、ふと、思うんだよね。
「ブラタモリ」って、存外、ディープじゃないっていうか、表層的だって。(TVだから、仕方がないんだろうなと、思いつつ)

で、ディープな路地探検、建築探検だと思ったは、やっぱり、すんごい昔に、見て読んだ、藤森照信。  私が自覚的に、このジャンルに興味を抱いたきっかけ本。

でも、もっと、前、ずっうと前、漠然と、東京の街の片隅、例えば、路地のぬかるみとかに、興味を持ったのは、漱石だった。
『それから』だったり、『門』だったり。
漱石の描くその、地形、路地とその地面、街の景観。
淡路町も小川町も、本郷も、私は漱石で知った。

そして、一葉と荷風の、見ていた風景に憧れた。
竜泉とか、吉原大門にどぶ、とか、傳通院とか、小石川とか……。
そんな思いが募っていた頃、偶然、見つけた本がこれ。
『都市空間のなかの文学』なのだ。
私にとって、かけがえのない一冊である。

そんな思いいっぱいだった日々のある日のこと、訪れた神保町の、岩波ブックセンター信山社の二階にある店(…泰文堂っていうんだったかな)で、『参謀本部陸軍測量部 五千分乃一図』(明治16年版)を見つけた時は、恋い焦がれた人に出逢ったごとく、その地図を胸に抱き、価格が記された値札を見ても、たじろぐものかと、これは買いだ!と、決意し、レジに向かった。

私の、脳裡に去来するすべてが具現されていた地図だった。
言語というジャンルで理解したのが、『都市空間のなかの文学』だったが、この地図で、まさに追体験的に確認し得た世界が、あったのだった。
『都市空間のなかの文学』で、特に心をうったのは荷風の『狐』。
  
 
『参謀本部陸軍測量部 五千分乃一図』(明治16年版)にここが荷風の『狐』家だと分かる。 

漱石の『門』。間取りまで、描かれている。(P.416)    

鷗外のベルリン。当時のブランデンブルグ門。 

     (旧東ベルリン。ウンテル・リンデンの並木道にある鷗外の下宿。現在は記念館。)

一葉について、『都市空間のなかの文学』P.356、P.357の、竜泉の地図は、あまりにも細かすぎて、私の技術ではupをすることは無理。残念!!

彼の地を、訪ねて、歩いて、いったい、何十年、かかったかな。
今も、折に触れ、歩き続けているけれど。

本で読んだら、歩きたくなる。
それは、たまらなく嬉しく、そして、切ない。

『都市空間のなかの文学』前田愛の冒頭のセンテンス。
「文学のテクストを読みすすめる過程で読者がつつまれて行く「空間」は、どこか夢のなかにあらわれる空間と似たところがある」 

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