神の子池へ到着。
車を降りて池周囲を散策しようと歩き出した時、確かに運転手は一緒だった。
ところが入り口付近で見失ってしまった。
それほど広い場所ではない。
周囲を見回すと、先に歩いていた女性のグループにそれらしき人がいる。
まだ今日会ったばかりで、顔を覚えるのが苦手な私は確信が持てなかった。
でも、こちらではなくあちらのグループに池の説明をしているようなので、別人だとその時は思った。我々の運転手はきっと車に戻ったのだろうと。
彼らの後ろからゆっくりと写真を撮りながら池の周囲を回った。
この池は摩周湖の伏流水からできている、というところから「神の子池」の名がついたそうだ。
透き通った青い水が神秘的だと説明を受けた。
透き通った水は美しい。
朽ちた木から新しい命も芽生えている。
小さな滝から聞こえる水が流れる音も、我々を癒してくれる。
倒木も多く、一部が池の中に沈んでいた。
そこには青い水が湛えられて、池の底までくっきりと見える。
だが想像していたのとは違った。
池全体ではなく、一部が青いのだった。
そのまま池を一周して入り口付近まで来たとき、先ほどのグループと別れてタクシーへ向かう人がやはり我々の乗ってきた運転手だと気づいた。
我々の顔を見ると、悪びれる様子もなく「これから裏摩周へ行きましょう」とにこやかに言った。
彼にとっては、客である我々ではなく関係ない別のグループの案内をすることは至極当たり前のことのようだった。
文句を言うようなことでもないし、これから旅行中はずっと案内してもらうのだしと、おとなしくタクシーに乗って裏摩周へと向かった。