自分で限界を決めないようにしています。限界を決めたら、そこで終わってしまうので、やりきる気持ちを大事にしています。コツは「思い込む」こと。忙しくて睡眠時間が少なくても、「今日はいい睡眠がとれた」と思うようにしています。今は「二足のわらじ」ですまないくらいにやることがいっぱいあって、「無理だな」と思いつつも、最後はやり遂げるように頑張っています。
今もたくさんのことに挑戦していますが、幼い頃から習い事をたくさんしてきました。今も続けているピアノは4歳の頃に始めました。姉が先に習っていて、自分もやりたくなりました。レッスンは厳しかったけれど、ピアノを弾くことが当たり前の習慣になりました。
コンクールにも出るようになり、小2の時に「キラキラ星変奏曲」を弾いたことを覚えています。本番は1回限り。演奏している時間は5分くらいですが、準備に3カ月以上かかります。つらさもあるし、ピアノは手ごわい相手ですが、「精神を鍛える」ことにつながると思って続けました。そして、本番の舞台に立ち、演奏をきいてくれる人たちの姿を見ると、「やってきてよかった」と達成感を得ることができました。
バレエ、英語や書道も習いました。ピアノやバレエの芸事は自分から始めました。週5日は学校が終わると、習い事に出かけました。語学は苦戦してさぼると後でしわ寄せが来て、後悔したこともありました。
どれも「やめたい」と思ったことはありませんでした。毎日、何か勉強していることが当たり前の習慣になっていて、何もないと、何かしなくちゃとあせってしまいました。
習い事以外で私が夢中になったのはミュージカル。小学生低学年の時に「アニー」を見たことがきっかけです。同世代の子が舞台で歌っている姿を見て興味を持ちました。
初めてミュージカルに出演したのは小5の時。演出家の方からは、「(オーディションで)表情が硬かったね」と言われましたが、出演したことは転機になりました。怒られてへこんだこともありましたが、共演者の方たちの支えもあって、最後までやりきりました。舞台で演じている瞬間とその場の空気をお客さんと共有して、その時にしか作れない感情を体感することができ、芝居への情熱が生まれました。
乃木坂46はアイドルですが、ステージに立つという共通点があるので、興味をもちました。たまたま自分が学生の時に1期生の募集があったことにも、何かの縁を感じて、オーディションにチャレンジしました。
後で雑誌に載ったオーディション風景の写真を見ると、緊張していて、まったく笑っていませんでした。こんなに笑っていないのに合格したことにびっくりしました。
乃木坂46に入ってからも、初期の頃は、写真撮影でどのように笑えばいいのか分からず、苦労しました。自分をさらけ出すのは恥ずかしいことと思っていました。だけど、活動しているうちに、変わっていきました。ライブで感動して泣いてしまったり、メンバーが苦しんでいる姿を見て、自分も苦しい気持ちになったり。すごく笑えるようになったし、すごく泣くようになりました。
仲間として同じ方向を目指しながらも、時にはライバルとして戦わなければならないこともあります。そんな中で、感情の引き出しがたくさん増えました。演技には感情が大切なので、良かったと思っています。
私にプロとしての大切な考え方を教えてくれたのは、BO●(Oに/(スラッシュ))WYさんやJUDY AND MARYさんらを育てた音楽プロデューサーの佐久間正英さん(故人)でした。父のいとこで、アルバム「LAST DAYS」に参加させていただくことになりました。偉大な音楽家の方たちに囲まれて緊張していると、「楽しんで」とおっしゃいました。「音楽は楽しむものだよ」と。その言葉は大きかった。
それまでは、ピアノは一人の世界で、緊張して失敗しないためには真剣に練習しないといけない、と楽しむことにマイナスのイメージをもっていました。
だけど、誰かとアンサンブルして楽しめば、その楽しい気持ちが人に伝わります。自分が笑顔で楽しんでいないと、見ている方も元気になれません。伝えることの大切さを学び、乃木坂46の活動も、音楽も演技も「楽しもう」という気持ちを持てるようになりました。
普段から舞台を見て勉強しています。役者さんの演技や感情表現を感じ取り、自分が演じる時は、それらをヒントに、自分なりに工夫して演じています。尊敬するのは大竹しのぶさん。舞台を見たとき、本当にすごいと感じました。お芝居ということを忘れさせるほど、引きつけられました。
女優は様々な感情を人に伝えなくてはなりません。そのために、人生で色々な経験を重ねてもっと引き出しを増やしていきたいです。
■番記者から
乃木坂46を初めて見たとき、真っ先に注目したメンバーが、いくちゃんだった。ただ者ではないオーラを発していた。テレビでもライブでも、いくちゃんの姿を目が勝手に追ってしまう。AKB48グループのイベントに出演し、ピアノの腕を披露した時は感動すら覚えた。
今年の「プリンシパル公演」で主役のポリン姫を演じたときは、軽快な演技を見せてくれた。あんな美しいピアノを弾きながら、コメディーも演じられる。なんて器用なんだろう、と感心した。
このアイドル界屈指の才能はなぜ生まれたのか。教育なのか、DNAなのか――。今回の取材で、しっかりと努力を重ね、悩みながら成長してきたことがわかった。プリンシパル公演でも、「自信を失いかけることはたくさんあります」と言いつつ、やりきっている。
座右の銘は「限界を決めないこと」。幼い頃から継続的に学び続けてきた。習慣づいていることとはいえ、簡単ではなかったはずだ。
お嬢様なイメージがあったが、取材の受け答えは、親しみやすい雰囲気だった。いつか努力が報われて、女優として大成する姿を見てみたい。
10月8日発売のニューシングル「何度目の青空か?」で初めてのセンターを務める。学業のため、前作のシングルには参加しなかった。指名を受けた時には「もどかしい気持ち」があったが、メンバーらから「気にしなくていいよ」「そのままの姿でいいんだよ」と声をかけられて、前向きになれたという。よかった、よかった。「発売されたら、絶対、買うからね」と心でつぶやいた。
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