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『ファンドマネジメント』金融関係読書報告(NO.140)

2007年05月15日 | 資産運用
標記について、下記のとおり報告します。


1.日 時 平成8年1月10日~2月1日
2.書 名 山崎 元著
『ファンドマネジメント』
きんざい A5版  302ページ 平成7年
3.蔵書者 ABC厚生年金基金
4.読 者 高野事務長
5.概 要
 著者は、東大卒業後、三菱商事に勤め、その後住友生命をスタートに
ファンド・マネージャーとしてシュローダーを始め13ケ所渡り歩いてい
る人で、この本執筆中はパリバ証券で2週間ほど前に山一證券へ1年契
約で移り、金融商品企画の仕事をしている(山一投資顧問のY専務談)
とのことであった。
・本書は、「具体的なファンド運用の手順と考え方」をプロのファンド・
マネージャーが書いた内幕物であり、これからの年金基金の資産運用の
テキストになるものである。
・3部構成で、第1部は運用理論、第2部が本書の中心で「ファンドの
つくり方およびメンテナンスの仕方」について具体的に書かれている。
第3部は資産運用の関連事項、運用のリスク管理、フォーマンス評価、
    ファンド・マネージャーの選び方、資産運用ビジネスの諸問題等々
について本音が書かれている。
・基金の運用関係者にとって、自基金の管理面でこの程度は承知していなければならないので、運用担当には必読の本である。Hさんにも読ませたい。
・「プロとしての最低限のレベルに達するために必要なのは<2年間の集中的な努力>であると思います。」山崎 元
・MPTの世界では至上平均以上の成績を上げることは不可能ということになっており、ここからインデックス運用が多くなっているが、こういう考えを著者は
<傲慢な集団的勘違い>だという。報告者も人間は万能ではなくニッチはありえると 思うので、アクティブ運用は成立すると考える。アメリカ風の数値至上主義はどう かと思う.
・株式市場のアノマリー現象(例外的で異常な現象、例えば、小型株効果とか1月効果等々、通常より儲かる場面をいう。)はアクティブ運用のヒントの宝庫であるとのこと。
・「デリバティブは投資のための正統な手段であり、運用者にとっては運用手段の拡大 を意味します。」ただし、デリバティブの利用は<コスト>の点であり、<相場観>ではないということ。
・為替を考えると、外債をやる意味がなくなるという意見は近視眼的見方の典型である。
 相関係数の観点からリスク低下の効果があり、国債分散投資の意味がある。物事の本質をわきまえないで、表面的な事象で全般を類推する素人の行動であろう。
・「日本の機関投資家のアセット・アロケーション(資産配分)変更はコストとリスク
の両面から、頻繁かつ大幅でありすぎるような印象があります。」この点で、売買
 回転率の監視は徹底しなければならないし機動的運用という美辞麗句の実態も見極めなければならない。
・「ベンチマーク(一般的には運用評価の物差し)はパフォーマンス(運用成績)の評価を行う際の基準となる具体的なポートフォリオ(資産配分)ですが、評価の基準であると同時に、<特段の情報>(効用関数の値を改善できるような情報)がない場合の<望ましいポートフォリオ>を定義しているという意味での運用計画の表現手段、あるいはスポンサー(基金)とファンド・マネージャーのコミニュケーションの手段としての積極的な意味を持っています。」
これからの資産運用にとって重要な概念である。
・今後、年金基金でも資産運用の場面で相当程度のツール(マルチファクターモデルとかバーラモデル等)とか運用ノウハウ(回転率、リスク把握法、傾斜配分、アノマリー現象のバイアス、利害の対立等)について学習が必要である。
 その点で、現在は運用期間に委託している状態にあるポートフォリオ・マネージャーの仕事(資産配分)は、本来基金の運用執行理事の仕事なのである。
 資産配分をコントロールする特化運用を行うには基金事務局の運用レベルをかな
り引き上げなくてはならないであろう。そのために何をどう展開したらよいのか、
  どういう流れを事務局および母体企業内に構造化したら良いのか、インフラ整備が 緊急の課題である。
・政策投資が大手を振るっている日本の市場では基金の資産運用を巡る各種の利害
 対立(コンフリクト)が母体企業、行政、運用機関相互の間にあるが、基金の受託者責任の点で「運用組織に属する人間は絶えずこうした協力への誘引にさらされ
ています」ということであっても、将来的には改善されていかなければ基金が立ち
行かなくなる場面を迎えている。「これら組織の意思決定者は、主として現在の制
度で利益を受けている人々ですから、制度の自発的な改善に期待することは理屈の
上ではむずかしいと考えられます。」と著者は言うが、基金の、母体企業の財政状
態はそういうことを言わせるほどのんびりしていないと思われる。
・「日本の多くの運用組織のように大組織の中で人事ローテーションが広範囲に行われ るというようなシステムは資産運用の組織運営に適しません。」「この場合、個人に焦点を当てると、人事異動によって経験が寸断される実害とともに、人事異動の可能性が運用スキルの獲得に対する事故投資をむずかしくしている効果もあります。」
「多くの場合、資産運用の仕事そのものは比較的小規模での運営に適していますし、…・小規模の独立系の運用会社がおおく登場するようになることを期待したいと思 います。」
 このことは、基金にも大蔵省にも言えることであり、2年のサイクルで渡り歩く人
間など資産運用の世界では使えないということである。
 「また、特に日本の大規模な金融機関等で、運用の業務知識の無い上司が責任者に なることがありますが、<私は素人だ>という開き直り(あるいは、使い分け)の 態度を見せると組織全体の雰囲気が非常に悪くなります。資産運用が知識集約的な サービス業である以上、<知らないことは悪いこと>という潔い割きりを持つことが重要です。勉強するか、去るか、です。」
 こういう運用機関を見つけ排除するのも基金の仕事である。
・ファンド・マネージャーと証券会社のセールスマンとの間に情報のやり取りの場面で癒着が起きるのは世の常であるが、「ファンド・マネージャーは証券会社に全く依 存せずに投資判断が行えることが望ましいでしょう。(それが、一人前ということで しょう)」と著者は言う。リサーチを外部情報により賄うような運用をしている運用機関は基金の資産運用の世界では今後排除されていくことであろう。
・著者、最後のメッセージ「読者の皆さん、ファンドマネジメントの世界へようこそ、そして、必ず幸せになってください。」と述べて、パリバを離れ山一證券へ移籍した。
  6.その他
    次の読書報告は、証券アナリスト・ジャーナル95.12「投資に関する規制緩和」。

以 上
  

  




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