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Q&A『年金の行方』―基金解散と代行返上  はじめに

2009年05月29日 | 厚生年金基金

厚生年金基金制度がスタート(昭和41年<1966年>10月)して35年余が経過した現在、厚生年金加入者は3,158万人(平成14年3月末現在),うち厚生年金基金加入者は1,038万人(平成15年3月末現在)で、厚生年金加入者の3人に一人は厚生年金基金加入員です。

実際の年金支払の場面では、制度開始から35年ほど経過したので厚生年金(老齢年金)の報酬比例部分の大半は厚生年金基金の代行分から民間の手によって支払われています。つまり、厚生年金基金加入員の老齢年金(国が支払う)のほぼ半分は民間の厚生年金基金から支払われています。

このように厚生年金基金制度が成熟した中、平成15年<2003年>10月、厚生年金基金の将来分代行返上が認められ、一気に660基金の「代行返上」が始まりました。そのほかに確定給付企業年金に移行した基金(30基金)や「基金解散」も急拡大し、全国にそれまで1800余基金あったのが1000基金になろうとしています。要するに、多くの厚生年金基金(企業年金)が「基金解散」や「代行返上」に雪崩をうって走り始めたところです。それは、まるで巨艦から脱出するネズミの大群の如しという事態になっています。

この背景には、いったい何が考えられるでしょうか?

厚生年金基金財政の積立て不足でしょうか? 因果の連鎖をたどって見ればそれは結果でしかないでしょう。低利回り・非効率な資産運用環境、運用機関にも基金にもプロのいない資産運用、新規加入員減少に伴う数理計画の破綻、事前積立方式ではあっても政府の年金勘定と同様どんぶり勘定である基金会計の限界等々。しかし、何よりも大きな影響力を発揮したのはジャパニーズ・スタンダードの放棄を迫る時価会計の採用でしょう。退職給付債務の計上が突然巨額な負債を出現させたのです。

世界はすでにグローバル化していて、唯我独尊の鎖国状態のまま日本が生きていくことはできなくなっているのです。ましてや、資源のない製造業の輸出事業振興をメインにした経済活動がなければならないのですから、時価会計を拒むようなアナクロニズムは「死に至る病」となるのです。

否認された「三種の神器」は、厚生年金基金の経験を経路にして、新たに生まれ変わることになるのでしよう。


このような混迷のとき、社会保険事務所の年金相談コーナーには、お尋ねの人が大挙して押し寄せています。現在、窓口はプレ団塊世代の大勢の相談者も含めて溢れかえっています。ところによっては、50人待ち、2・3時間待ちが常態になっている社会保険事務所もあります。加えて、厚生年金の過払いや未払等の行政サイドのミスに対する問いただし、新聞・TV・週刊誌等の「カラ報道」による問い合わせ等の風あたりが強くなっています。それに加えて、世の中にリストラによる40代・50代の失業者が溢れかえっているのに、社会保険事務所での年金見込額の計算は、現在58歳以上でなければ資料提供をしていません。遅ればせながら、今後55歳、または50歳から資料提供をしようという予定はあるようです。二-ズはあるのですが、対応が追いついていない状態です。こうして現在の年金相談窓口は、何かと、問題含みで、平安な日々がないありさまでストレスが高まっています。

「厚生年金基金」についての相談に対する行政サイドの対応もどちらかというと消極的で後手、後手に回っています。社会保険事務所の年金相談窓口では、基金制度について制度の基本的な仕組みや加入状況、代行返上後の年金見込額等は回答しますが、基金一般についてはほとんど承知していないというのが実態です。しかも、「基金解散」や「代行返上」について詳細・細部の相談は個別基金ごとに給付内容が異なるので、年金相談窓口からすればやむを得ず「それは基金に聞いてください」ということになります。門前払いを食わされた多くの相談者は不満を抱えたまま退散することになっています。

このように基金解散と代行返上について、厚生年金基金からの説明不足と行政サイドの消極姿勢の狭間で宙に浮いている加入員等が大勢おられるのが現実となっています。そこで、筆者の厚生年金基金25年の実務経験と年金窓口相談2年余の現場経験をもとに、年金相談者と回答者の窓口風景として基金解散・代行返上についての幾つかの問題点を説明してみようと考えます。

ただし、この「Q&A『年金の行方』」は、あくまでも筆者(民間人の年金相談窓口アルバイタ-)の個人的発言であり、役所の公式な発言ではないことを重々ご承知おきください。

筆者の窓口での「年金相談」は窓口混雑のため相談件数を上げなければならないのですが、どちらかというと「人生相談」になってしまい、一人当たりの相談時間が長くなりがちです。反面、アカデミックな説明はおろそかになりがちです。そのためここでは、極力詳細に、しかもQ&Aの範囲内で、分かりやすく説明したいと考えます。年金相談一般に絡めて基金解散・代行返上を説明しますので全体をお読みいただければ、年金の概要がご理解いただけるようになると思います。

さらに、詳細をお知りになりたい方、疑問をお持ちになった方等は、直接社会保険事務所の年金相談窓口にお出かけください。年金は個別事案ですので、人情としての勝手解釈や一般論では大きな間違いとなることもありますので、個別に確認されることが非常に重要です。

さらにまた、最近は年金関係の書籍も多数出版されていますし、インターネット上には数々の年金サイト、シミュレーションもありまので、そちらを参照されることもお勧めいたします。巻末に、それらのうちの幾つかをご紹介いたします。


最後に、このQ&Aが厚生年金基金を経路とした日本の「年金の行方」についてお考え頂く何らかの端緒となればと考えます。ご満足いただける説明になるかどうかは疑問ですが、幾分かでもみなさんの参考になれば幸いです。



    平成15年11月

OPM研究会 高野 義博 

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