店に来ている人たちなら
すでにおなじみ
ピーコちゃん(つばめ)
毎年春から夏にかけて、つばめたちは店の軒並に巣を作りはじめる
時には店の中に巣を作っては、より安全に卵を生もうとする
毎年毎年、大人になったつばめたちがこの時期に帰ってきては
子供を生んで、その子供たちがまた来年やってきては、子供を生む。
そのルーティンが何十年と続いている
どこかでは、つばめは「幸運を運ぶ鳥」と言われていて、
商売を代々やっている山本家にとっては、縁起をかつぐようなもので、
ピーコちゃんに無事に卵を生ませてあげる。これは、とても大事な
イベントだ。
店にとってはオフィシャル行事のひとつかも…。
うちらは、カラスやトンビにたまごを食べられないように、
また襲われないように、親鳥たちと一緒にいつも外敵に目を見張っている
多分、ピーコちゃんたちの中では俺たちも外敵の1つのだろうが…。
そんな中、今年一回目の産卵はカラスにたまごを襲われてしまい、
失敗に終わった。ちょうどお昼ご飯を買いに行っていた時だ。
オヤジが亡くなった時は、ヘビにやられたんだよね
不吉な気持ちが入り交じった中で、自分の気を引き締めようとする。
忙しい中で、おごった自分がいるのではないか?
自分の中に少しの嫌悪感
そして数日後、別のピーコちゃんカップルが店にご来店。
これもいつぞやの巣だった子供たちだろう。
数日いちゃつき始め、たまごを温めはじめた
今度こそは、ちゃんと生ませてあげたい。と、それはまぁ、自分的には
気を使いまくり…w
何とか無事に5匹生まれて2週間。
羽を広げ飛ぶ練習からの5日後の巣立ちの日。
一匹だけが育ちが充分ではなく、飛べずじまい。
巣から何回も落ちては巣に戻してあげるが、結局その
一匹だけは巣立ちは出来ず、留まることに…
2日後。
店の中で掃除をしていると、店前に最後のピーコちゃんが
下りてきた
俺は不思議そうに眺め、近くに寄りしゃごむと、
最後のピーコちゃんは、おれの手に乗るとチュンチュン鳴いて
飛び立って行った。
朝4時ごろに早起きまでして、世話をする親たちに意味分からず
にいた子供の頃の自分だが、家族を守る立場になったいま、
また、こんな情勢の中で商売が回わり生活が出来ることを願う
今となると、たががピーコちゃん。なのだが、小さなもの、何気ない事を大切にする気持ち。
なんとなく分かる気がしてきた。
年をとったんだな、自分も…。
「今までありがとうね!」というように、飛び立っていった
それでも、まだまだ夜には帰ってくるけどね…