先だっての日本経済新聞紙上で、日米繊維交渉の顛末についての回顧録が掲載されていたのだが、結果的に故田中角栄元総理を賞賛する内容であった。
日本産繊維製品の米国輸出に端を発した経済摩擦を回避するための交渉、いわゆる日米繊維交渉は、1969年から71年(昭和44年から46年)にそのクライマックスを迎える。時の合衆国大統領ニクソンは、沖縄返還の見返りに繊維交渉における日本側の全面同意を内閣総理大臣佐藤栄作と交わしていたが、そのことは極秘事項とされ繊維業界はおろか国務大臣にすら知らされなかった。総理以外ではおそらく正副官房長官だけが知っていたのだろう。
米国と交渉を行う事務方、つまり大臣やそれを補佐する官僚たちは事実を一切知らんワケだから、なんでこんなに米国が強気なのか理解に苦しんだそうな。当時矢面に立ったのは通産大臣だった田中角栄。無体な要求に一歩も引かなかったが、米国が条約を発行して対日制裁に踏み切るとの報を受け、要求を全て受け入れて繊維業界には補填金を出すてえな案配に方針転換。直ちに補填金の見積もりを出させた。その額2000億円!
40年以上前でこの額ですから、今ならゆうに5000億は超えます。その場で総理と大蔵大臣に電話して確約を取り付けたそうで、当時の部下がその状況判断力の的確さを賞賛するコメントが載っとりましたわ。田中角栄は天才以外の何物でも無かったんやねぇ。
角栄氏に近い誰ぞが日経にカネ出して書かせたんとちゃうけと勘ぐりたくもなるのだが(笑)、我が国の政治史において最も優れた人材の1人であったことは疑う余地が無いのねん。
それにしても、米国ちゅうのはどこまでも自国の利益を追求する強欲極まりない輩ですなあ。ほんっとタチが悪いよ、まったく。