マルサカの煎餅焼きは、うわさに聞く胡麻ふりかけ方式でしたね。沢銀のおっかさんなら「もち」という練った粉をまるめたものに、ごまをなすりつけて入れるやり方ではなくて、ごくごく柔らかいもちをへらで型になすりつけ、それに胡麻をふりかけていましたね。
あれだと、ごまがへらにも付き、煎餅の裏にもたいぶ付いて、下手なヤツがやるとどっちが裏だか表だかわからなくなりそうですね。それから、あれだと耳が大きくなって、歩留まりがもちを使うより悪いと見ました。
だから、あの焼き手のおかあさんは「私の場合、焼けるようになるまで2年掛かりました」といっていましたね。