円の会の作品評、「宝塚」「丹波路」の言葉に惹かれて、というか思い入れが強すぎて難渋の体である。その最たるものは38歳のときの次の3首だった。第四歌集『草食獣・第四篇』(1ページ1首組)の112ペーシから114ページである。
一九八九年十二月三日の夜より山中に迷ふこと八時間。忘年会の帰途であった(三首)。
わけいつてもわけいつても黒い山サンタクロースの橇ぞわたらむ
腹冷えて野糞するべく屈みたるわれに帰還の妙案もなし
山陽自然歩道を歩く昼ならばスーツが不審がらるるのみぞ
阪急の宝塚だったら終点だが、JRに乗ったばかりに徹夜で歩く羽目になった。忘年歌会の帰途であった。