QRPデジタルモード専用
QDX (QRP Labs Digital Xcvr (transceiver)) の製作と保証認定
QDXトランシーバーはQRP Labs Digital Xcvr (transceiver)からとった略称でHans Summers OM (G0UPL)が開発してキット販売しているトランシーバーです。QRP LabsのWebページのここ;
https://www.qrp-labs.com/qdx.html で紹介しており、US$69で直接販売しています。更に素敵な専用ケースが$20、DCプラグが$1で一式$90。送料を含めた総額は$104.22になり、PayPayでの支払いにしました。
QDX は非常に小型ながらFT8などのデジタル通信をターゲットにした高性能で機能満載の、4 バンド (80、40、30、20m) 5W デジモード トランシーバー キットです。この大きさでFT8を開始するのに外部との接続は、①電源プラグ、②PCとの接続に使用するUSB Type B端子,③アンテナに接続するBNC端子の3か所だけです。それぞれの接続ケーブル(電源ケーブル、USBケーブル、アンテナ同軸ケーブル)のほかに必要なものはWSJT-X最新版をインストールしたPCだけです。
本体に組み込まれている回路は SDR レシーバー、24 ビット 48 ksps USB サウンド カード、CAT コントロール、基準周波数をTCXOで安定化し、周波数合成するDDS VFOなどです。QDXでは DSB波からフィルターでSSB波を作るのではなく、単一周波数の信号をデジタルPLLで直接合成して生成します。これは、関連する不要な側波帯と残留搬送波、または増幅器の非線形性による相互変調を伴う SSB 変調器ではありません。QDX は純粋な単一信号を出力しています。概要については今年のCQ誌10月号にJF1LKS 多田OMによって紹介されていましたので私も製作にチャレンジしてみたくなり、作ってみましたので報告します。
システムは全て1枚の基板上に収められており、調整箇所は全くありませんでした。非常に優れたマニュアルに助けられて、どなたでの簡単に制作できると思います。この際、自作のトランシーバーを作ってみるのはいかがでしょうか。すべての表面実装部品はすでにはんだリフローで加工されており、残ったリード部品をはんだ付けするだけです。
これが送られてくる部品のすべてです。
コイルの製作が最も時間がかかりますが、巻き数を間違わないようにして慎重に制作することが必要なことと、基板に通らなくなることがあり前もってのハンダ上げができないので、ポリウレタン線のはんだ付け部分でウレタンの除去は確実に行って、確実なはんだ付けができるようにすることです。はんだ付け後にはんだ部分に接続している回路の別のパッドを使って導通試験を行い、はんだ付けが確実に行われたことを一つずつ確認しながら行うことで出来上がりの確実性を上げることができます。
全ての部品を付けてケースに組み込んだところです。
このキットの優れたところは、調整すべきところが全くない事です。丁寧なマニュアルと上質のプリント基板です。キットとしての完成度はかなり高いと感じました。
ここまで来たらはんだ付けの不良がないか、部品間違いがないかを十分確認して定電圧が出る電源を接続します。私は12V仕様ではかなり熱を持つことがあるという事なので、9V仕様で制作しました。通常の13.8Vとは異なるために9Vをキープできる小型の降圧定電圧電源を作成し、QRPモードで交信時の電力もモニターできるように手持ちにあった中国製の4桁電圧、電流計を使って専用の電源装置として製作しました。
また、それでもQDXのケースが少し暖かくなるので手持ちの放熱板を上カバーに取り付けて、長時間の運用にも安心して使えるように工夫しています。
バンドごとの特性ですが、次の表のようになりました。
電源電圧が9V仕様で制作したこともあり、専用の電源を製作することにしました。電源をもち運びにも便利なLi-ポリマ電池(定格11.1V)または他の無線機と同じ13.8Vを使用する前提で、降圧モジュールを使うことにしました。このモジュールはAliExpressで購入(¥541)した定電圧で使用できるモジュールで、正確に一定の電圧を調整できました。個の電源についてはまた、別の記事で紹介します。
保証認定の取得
私は以前からFT8は申請していましたので局免の変更は不要です。但し、交信するためにはQDXの保証認定が必要です。
私はTSS(株)に保証認定の依頼をしました。申請の際には保証認定願いのほか送信系統図と工事設計書が必要ですこれが私は申請に使用した系統図です。
マニュアルにあるブロックダイアグラムから送信部分のみ切り取り、系統図にしました。また、デジタルモード諸元を追加して変更申請書を作成しました。また、変調方式についてはCQ誌の記事を書かれたJF1LKS 多田OMに問合せして変調方式についてご教授いただき、電子申請Littleで「上記以外の周波数偏移変調」を選択してトライしてみました。
数日後、メール経由で連絡があり、諸元表を副搬送波周波数の項目を削除して前出のものに訂正し、保証書が発行されました。
工事設計書はこのように記入しました。実際は装用の内容を電子申請で入力してファイルを作成し、TSS株式会社のWebにメールで転送して待つだけでした。
数日後に技適適合の保証書が入手できました。これはあくまで私が提出した内容であり、内容について私が保証認定・申請認可を保証しているものではありません。あくまでも個人の責任において申請をお願いします。
運用
WSJT-X以外のFT8運用ソフトも試してみましたが、私の場合うまくできませんでした。QDXのAssembly Manual Rev.2.15には” WSJT-X は 16 ビットのみを使用するため、PC サウンド システムは自動的に再サンプリングしますが、送信には24 ビット USB サウンドによってQDXに送信され、より高い解像度を使用する将来の PC アプリケーションをサポートします。” と、書かれていました。
ただし、QDXのCATシステムは完ぺきで、何ら問題ない運用が可能です。
まず、使うPCのデバイスマネージャーを開き、WSJT-Xソフトをインストールして、QDXを接続して新たに表れるCOM番号を探します。
WSJT-Xの設定(F2)では無線機のページを開きます。
私のPCではCOM16でした。ここで無線機はKenwood TS-440Sを選択します。あとは
Data Bit: Eight、Stop Bit: One、Hand Shake: なしです。上のサンプルを参考にしてください。
ページの右側では“CAT”を選択して“CATをテスト”を選択してCAT接続を確認します。OKであればこのボタンが緑に変わるはずです。もし赤になったら、QDXの電源を入れなおしてもう一度無線機とオーディオのページを確認してください。オーディオページはデジタルオーディオインターフェイス(QDX Transceiver)が現れているはずです。
設定が済んだらOKボタンを押して終了です。もちろん一般のページも最低限自局の情報(コールサインとGrid Locater)を入力しておく必要があります。
これが新しいQRP運用スタイルになりそうです。
構成は定電圧電源、韓国CSQ通信社製パワーバンクPB-817(11.1V, 10.2Ah Li-Polymer電池)と放熱器を付けたQDX、SWRメーターです。
いつか2Way QDXで交信できたらいいなと思っています。
以上 Nov 28, 2022
Rev. Dec19, 2022 送信系統図の差し替え
ご指摘ありがとうございました。