伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

5/17NHK出演野田首相の発言録

2012-05-18 22:21:36 | 国会劇場

 昨日17日のNHKニュースウォッチ9で野田首相が冒頭に生出演していました。まあ現職首相のマスメディアに出演が続いています、異例なことです。

テープ起こしをご紹介。


 

大越キャスター)N)
 あの、今日本国内の原発はすべて稼働が停止しています、一基も動いていない状態なんですが、総理はこれを異常な事態と考えるか?それとも必然的な結果だと考えますか、どちらですか。

野田)首相)
 まあやむを得ない事態です。昨年あのような大きな事故があったわけでございますので、しっかりと安全性を確認をしていくということが、今なによりも大事であります。

 一方で、やむを得ないと申し上げたのは、中長期的には脱原発依存の方向でエネルギー政策をまとめていかなければなりません。短期で考えた時に、これまで電力の供給の30%を原発に依存をしていたわけです。 それが今すべて止まっている状態で、ずっとじゃあ経済が大丈夫なのか、国民の暮らし守れるかそういう短期的課題があります。

そういう狭間の中で、どういう政治判断をしなければいけないのかというのが、今問われている議論です。

コメント:落第点。5/5までに全国の原発が止まるという「異常」事態を避けるために再稼働のスケジュールがありきだったのではないですか。そのことを問う質問に正面からは答えませんでした。「やむを得ない」という回答は一見まともなように見えますが、やりたくてできなかったという政治力学を隠すための答え方です。

N)
 やむを得ないというお話がありましたが、安全への心配を考えればそれもやむを得ないということなのかも知れませんが、一方で短期的にはこれまでの原発への依存を考えれば短期的にはそれなりの対応があるだろうということですが、ややですね、この稼働再開に向けたその政府の動き、やや急というか、場当たり的だという批判もあります。これまでの流れをちょっとまとめましたのでご覧下さい。

女性アナ)
 まずこちらです。枝野経済産業大臣は3月8日にこのスタジオで、「エネルギーの需給よりも(いま)優先度が高いのは(まちがいなく)安全の確認だ」と発言していました。

 ではその安全の確認がどう進んだのかを見てみますと、大飯原発について先月、3日に野田総理大臣が関係閣僚会議を開いて、運転再開の前提となる安全対策の新たな基準を作るよう指示しました。  その3日後の6日に、その新基準が正式に決定されます。 そして週明けには関西電力がそれに沿った工程表を提出します。野田政権はその日のうちに新しい基準に「概ね適合している」と判断して大飯原発の安全性を確認した、という流れになっています。

N)
 総理、あの短期的にはエネルギーの需給の問題を話しをされました。 しかし、枝野さんはまさにそこにお座りになって、需給よりも安全が優先です、とそのときハッキリおっしゃいました。 3月8日のことだったんですけれども。

 しかし今のこの流れを見ますと、需給ということがまず先にきていないか、つまりそこが逆転していないか、だからこれだけ急いだんではないかという疑念を持ってしまう人が多いんです。これをどう説明しますか。

首相)
 これは、枝野大臣お話しされた通り、安全性が最優先です。安全性の確認をしないで、需給だけで必要性だけで判断をするということはありえません。安全性が最優先ということは間違いないことです。

これ今見ている表は4月からの動きで仰っているから拙速に見えますけれども、事故が起こってからの一年間のこれまでの緊急安全対策であるとか、あるいはストレステストをどうやるかという議論であるとか、という一年に渡ってこれはIAEAであるとかあるいは原子力安全委員会の専門家ご意見も頂戴しながら、40回以上、専門家が入ったオープンな議論をしながら、安全対策、知見というものを集めて参りました。

その整理をしたのが4月からであって、一年間の議論の蓄積があると、そういう丁寧なプロセスがあった、ということはぜひ抑えておいていただきたい。

N)
 なるほど、このカレンダーのところは最後の詰めにすぎないと。

首相)
 そういうこと。

コメント:のだめのだめだめ。4月の2日時点で、「現時点では私も再稼働反対」との国会答弁が一旦枝野大臣からあった後での急展開であったわけで、なんらかの政治決断が行われたこと、そのもくろみが失敗したということをやはり隠してしまいました。

 ストレステストをどうやるか、という議論は昨年7月上旬の菅首相の鶴の一声以降の一週間で政治的に決着しました。その際の、EUのオリジナルなストレステストを2つに分け、ストレステスト2次評価は再稼働の決定前には行わない、とした誤った決定が、IAEAや有識者委員の意見聴取からも、そして原子力安全委員会の斑目委員長自身(1次評価だけでは安全性を評価できない、2次が必要)からもさんざん批判されてきて、なおかつ野田政権は頑として変えませんでした。 これをもってご意見を頂戴した、オープンに議論を積み重ねた、と称するのは盗人猛々しいというもの。

N)
 ではこれはどうでしょうか、工程表のなか、基準のなか、91項目ある。しかし、37項目というのは、まだ実施されていない。 例えば免震事務棟の設置でありますとか、防波堤のたかさ、これは、これからやりますよ、ということを担保にして稼働は問題ないのではないかという判断ですが、これはなかなか理解ができないんじゃないかな、と思いますがいかがですか。

首相)
 短期でやるべきことと、中長期でやるべきことがあるから、工程表になるんですね。 この短期のことをしっかりやることによって、少なくとも、ストレステスト一次評価というのはですね、福島並みの地震や大きな津波があったときに、炉心溶融に至らないという余裕がどれくらいあるか、というチェックをするわけでそこはクリアをしていることは間違いないわけであります。

その上で、安全性を確保する、ということは上限がありませんから、中長期のこともしっかりやっていくということを確認するということです。

コメント:噴飯もの。防波堤の建設、免震事務棟の建設は誰が見ても短期の運転再開前にすべきことなのに後回しにしているから質問しているのに、答えず。

N)
 あのー、これ福島の事故の後の政府の発表の仕方に通じることがあると私は感じていて、というのは、リスクというのは上限ない、と言いましたよね。 リスクというのはどの段階になっても多少はあるものだと思うんです。しかし、リスクはあまりないので取りあえず大丈夫です、動かしても大丈夫です、という言い方はかつてあった。

しかしそうじゃなくて、リスクはありますけれども、それは、こういう理由で許容範囲なんです、という説明がどうも足りないように私は思うんですがどうですか。

首相)
 説明の仕方はしっかりと工夫しなければなりませんが、良く誤解をされるのは、再稼働するとじゃあ危険になるのか、といわれれば、そうではありません。使用済み燃料は、各地の原発を抱えているところにはあるわけです、リスクといえば全部そういうことがリスクなわけです。

リスクは常にあると思うんです、だけどそれをしっかりとコントロールをしてしっかりと安全性上限はありませんが、安全対策を講じ続けるということが大事であると。

 安全性を確認をしたものについては、それは、申し上げますけれども、いわゆる立地自治体、あるいは関連する自治体のご理解を頂きながらその確認をしながら進めていくかどうかの決断をすると、いうことであります。

N)
 井上さん、今のお話についてどうですか。

女性アナ)
 んーでも、何をもって安全というのか、というところまでは、ちょっとなかなか理解できないところが大きいですね。

首相)
 さっき申しあげた通り、福島並みの津波とか地震があったときに、炉心溶融に至らないということは、徹底したチェックをしている、そういう意味での安全を確保しているということは間違いありません。

コメント:ストレステスト2次とは、炉心溶融してから先、どれほど大きな被害になるのを食い止められるかどうか、のアクシデントマネジメントの部分についての評価です。

 1次評価では「福島と同程度の」地震や津波には耐えられるという評価をしただけなので、より強い地震動(直下型地震では福島実績の約500ガルとは桁違いの2000や4000ガルという数字が国内で観測されています)の直撃を受けると炉心溶融するリスクは現実に存在します。
 ましてやストレステスト2次でも実際には評価しきれない、ヒューマンエラーの部分は、確実に残るわけですから、この答えでは到底安心できません。 

 重大事故は起こらないものとして、緊急安全装置の設置だけをしていて、実際にはICがどのように作動するのかしないのか、を東電のオペレーターが知らなかった、使用訓練もしたことがなかった、という東電のずさんなアクシデントマネジメントを、また繰り返すことが野田政権のいうリスク管理なんですね。そうではない、というのならストレステスト2次を評価、審査できるはずです。

N)
 では地元の理解ということなんですけれども、まさにその、大飯町に取材に入るとですね、そちらの方々がいうのは、非常に大事な問題、大きな問題なので、地元の理解地元の理解というけれども、非常にプレッシャーを感じているんです、あの方々は。

で、どちらの意見の方も、なかなか我々が意見を聞こうとしても意見が言えないくらい非常に重苦しい空気がですね、確かに、酷だと思うんです、小さな自治体にそういった判断を仰ぐのは。 もちろん、最終的には、政府がきちんと判断をするということでしょうが。

 どうでしょうか、総理自らですね地元に入るというタイミングを考えてらっしゃるんでしょうか。

首相)
 地元入る入らないというよりも、今大事なことは、今ご指摘のあった大飯町の町議会は、これは再稼働について合意するという意思表明をしていただきました。私はその大飯町であるとか福井県であるとかのいわゆる立地自治体、40年間にわたって原発と向き合ってきて、そして消費地に電力を供給してきた、そういう皆さんのご意向はやっぱり最優先に考えるべきだと思います。

自治体に判断をお任せしているわけではありません。我々はきちっとこういう形で安全性の確認をしました、だからご判断いただけますか、という説明をします。

で、その説明を受けて重たい判断をいただきました。今度重たい判断をするのは、政府の番だというふうに思います。

 自治体にお任せするんじゃなくて、周辺自治体の理解を求めながら、それは最後は政府が責任をもって意思決定をするということであります。責任を持って意思決定する、ということは、安全性に向けて、万全の体制を期すこと、それから需給を考えてこれは突然停電なんかなった場合にですね、これは突然例えば人工呼吸器に入っている方の人命に関わることです。あるいは、中小企業含めて、経済に大きな影響を及ぼします。

そういう悪影響を及ぼさないためにも、政府の重たい判断をしなければなりません。

 安全性は最優先、加えて必要性も加味しながらしっかりと、最後は私のリーダーシップのもとで、4閣僚で意思決定をしたいと思います。それはもうそろそろ、その判断の時期は近いと思います。その判断をしたあかつきには、安全性、必要性、万全を期す体制を私の指揮下で作っていきたいと思っています。

コメント:地元(大飯町議会)の重い判断、というのは、原発震災前と同じく、国に安全性の保証をお任せしますよという丸投げだけだと思いますが、事故が起きた時には国が人々を守ってくれないというフクシマの実績をまず認識できてないのでは?
もし認識できていれば、「自分たち町議会が」町民の安全を守る防災計画を立てられるまで待ってくれ、と言うはずです。

N)
 これまで、判断をしたいということ、今までの政府の動きを見ますと、稼働をしたいということは、他の閣僚の方、仰ってます、総理の考えも基本的にはその方向にあるということですか?

首相)
 安全性をしっかりチェックして、そして、立地自治体含めて、一定のご理解を頂いていると判断をするなら、そういう意思決定を責任を持ってしたいと思います。

コメント:まずは再稼働ありきという姿勢だということを確認しました。必要性の理由として、電力会社の経営問題化するという論については、NHKも質問の中で全く触れませんし、野田首相の答弁にもありませんが、大事な要因だと思います。

N)
 今立地自治体のお話しありました。一方で周辺自治体、例えば、大阪であるとか京都であるとか、もし万が一のことがあれば自分たちにも累が及んでくる。これは、立地自治体だろうが、周辺自治体だろうが、危険性に対するその懸念というのは同じだと思います。対策を取らなければならないのも同じです。この人たちが今、なかなか厳しい意見をお持ちです。  今、VTR出ますでしょうか、橋下さん、それから。

橋下VTR)
 「安全性ギャップ、今の大飯の3号4号で、政府が発信している安全性と、それから国民が考えているところの安全性の、ここにギャップがあるんじゃないですか」

嘉田VTR)
 「政府は目先の、もう原発を動かすことにしか関心がないんじゃないかしら。私たちが大飯に対しては慎重姿勢は持ち続けておりますし、政府が見切り発車をするとしたら、ここは大変懸念を示し続なければならないと思います。」

N)
 橋下さん、嘉田さん、いずれも大きな自治体に責任を持つ政治家ですから、ここまで言うと、この人たちを説得するというと、相当な力業と、粘り強さが必要になると思います。どうされますか。

首相)
 関西広域連合、あるいは滋賀県知事、京都府知事から、様々なご提案ご意見を頂戴しています、そういうご意見ご提案はやっばり政府として慎重に受け止めて、可能な限り、それについての対応はしていきたい、その上で、改めてご説明をしていきたいと思います。

コメント:何も言っていないに等しいですね。

N)
 改めて確認ですが、当初仰った、まず安全性の確認が先であると、その考えは絶対に守っていただけるとお約束いただけますか。

首相)
 もちろんです。

N)
 分かりました、では次の焦点の消費税引き上げ法案…


  コメント:ストレステストの2次で何が評価されるのか、といった問題点については、NHKがきちんと説明すべきところを、政府の方針通り先送りしています。残念な姿勢。


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