先の10月県議会での、9月28日の阿部悦子議員一般質問を紹介しておきます。
1−1.災害時における要援護者、特に障害者の防災についてお尋ねします。
東日本大震災における犠牲者のうち、障害者手帳を持っている方の死亡率は、住民全体の2.5倍も高かったという調査があります。在宅で介護し2月に亡くなった夫のことを思いだしますと、夫は亡くなる3ヶ月前に重度身体障害者となりました。
大震災を想定すると、車椅子にも容易には乗れない彼を、私一人で避難させることは到底無理でしたので、もしもの時にはここで夫と運命を共にする他ないと覚悟しました。福島県南相馬市での実態調査でも、大震災当初避難できないでいた人たちの多くが高齢者や障害者を抱える家族であったことが分かっています。私たちの周りにもこのような不安を抱えている人は少なくありません。
そこでお尋ねします。県は災害時要援護者が何人居るのか把握していますか。災害時に支援が必要な障害者の人数を障害別でお答えください。
- 上甲県民環境部長 答弁) まず、災害時要援護者の人数についてお尋ねがありました。災害時要援護者の人数を把握するためには、本人の同意が必要であり、平成24年6月1日現在で同意しているのは、24313人となっておりますが、同意が得られていない方もおられることから、現時点で総数までは把握しておりません。また、障害種別の人数につきましては、平成23年度末現在で、精神障害者、知的障害者、身体障害者別の手帳交付者数は把握しておりますが、そのうち災害時に支援が必要な障害者がどれくらいおられるかは把握しておりません。
1−2.私は去る8月末に、福島県郡山市にある、被災地障害者交流サロンを尋ねてお話を聞きました。福島では障害者団体が結束して支援センターを昨年4月に立ち上げ、郡山市のみならず全県の障害者を尋ねて支援活動を始めました。そんな中福島県も6月に支援センターに相談員を配置し、障害者を職員として雇用するなどの施策を打ち出しました。今年度は更に総額1億円以上を予算化して福島県全域に支援員を配備、被災した障害者の確認や拠点作り、自立支援なども行っています。それでもまだ消息不明の方がおられるのだそうです。
お尋ねします。障害者のための防災で、県はどのような支援をするのかお答えください。
- 神野保健福祉部長 答弁)障害者の防災対策についての内、まず障害者の防災のための支援についてのお尋ねでございますが、県では今年度、障害者のニーズを反映した災害対応や平時の備え等を整理し、災害時障害者支援の手引きとして取りまとめ、市町等の参考にしていただくと共に、これを活用して関係者の啓発を行うほか、障害者団体が実施する聴覚障害者むけのバンダナの作成普及など、防災の取組に対し助成を行うこととしており、今後ともこうした事業を通して団体等の取組を支援し、自助・共助・公助が一体となった障害者の防災対策を進めていくこととしております。
1−3.障害者の避難には、平時からの充分な準備が必要です。特に発災時の緊急避難として福祉避難所を準備し、前もって当事者と支援者に周知することが必要です。福祉避難所は障害者の人数を引き受けるだけの容量があるのか、応援スタッフはどうするのかを聞かせてください。
- 保健福祉部長答弁) 次に福祉避難所の容量とスタッフについてです。県内の福祉避難所の指定は、現在11市町の106カ所にとどまっておりまして、各市町に指定の促進に積極的に取り組むよう要請しているところでございます。また福祉避難所の介助員等は、基本的には指定施設の職員や外部支援者等で対応することとなりますが、被災状況に応じて他の地域からの応援が必要となるため、市町や圏域を超えた広域的な支援態勢を検討しているところでございます。
1−4.また防災のためには誰もが平等に避難しうる態勢を整えることが求められますが、県や各自治体また自主防災組織などの避難訓練における障害者参加の現況をお尋ねします。
- 上甲県民環境部長 答弁) 次に、県や自治体の障害者参加の状況についておたずね 県の防災訓練においては、各機関の間の連絡に重点をおいておりまして、要援護者の搬送訓練においても安全などを考慮し、障害者の参加は求めておりません。各市町や自主防災組織が行う訓練におきましては、障害者が参加した訓練が実施されていると聞いております。
1−5.次に、福島県の被災障害者支援でもっとも困難だったことの一つが、個人情報の壁により、障害者の情報が支援団体にさえ開示されなかったことだと聞いています。県は本人や家族からの希望を聞き取りいざという時の情報開示について確認をしておく必要があると考えますがいかがですか。
- 保健福祉部長答弁) 次に、情報の開示希望の確認についてでございます。災害時に障害者のニーズに応じた的確な支援がなされるためには、あらかじめ本人や家族に対し、個人情報の提供の可否について確認するなどの取組が必要であると考えております。県としては直接支援に当たる市町に対し、このむね助言しているところでございます。
1−6.障害のある人に配慮した防災をきめこまかく行うことは、誰もが歳を重ねたり病気になったり事故にあうことで障害を持つ可能性があることからも、すべての人の問題です。県は去る8月に災害時障害者支援の手引き作成検討会を開催しましたが、その検討会に難病障害の中でも最も重い、最も困難を強いられるALSの当事者団体を入れて戴きたいと思いますがいかがですか。
- 保健福祉部長答弁) 次に手引き作成検討会にALSの当事者団体を入れるべきとのお尋ねででございますが。災害時障害者支援の手引き作成検討会には、障害の種別や特性に応じ、障害者関係団体を代表して県難病等患者団体連絡協議会などの17団体に参加をいただいており、検討会では人工呼吸器を装着されるなど常時医療管理が必要な方への災害等の支援のあり方等を検討することとしておりますから、ALSなど重い難病を持った方々のニーズへも反映できるものと考えております。
1−7.障害のある人が幼児期から一般社会と分離されて生活、学習するのは、地域から障害者を孤立させることになり災害時の障壁ともなります。健常児にとっても分離しない環境教育が必要です。県教委はどのようにインクルーシブな教育を実現するのか、お答えください。
- 仙波教育長 答弁)インクルーシブな教育の実現についてのお尋ねでございます。障害のある子どもに対しては一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場を提供いたしますとともに、同世代の子どもたちや地域社会から孤立することのないよう、障害のない子どもたちとの共同学習や合同発表会、地域住民との交流活動に積極的に取り組んでおりまして、国においては来年度からインクルーシブ教育システム構築に向けた調査研究等を行う方向で準備を進めておりますので、その成果を受けて、さらに障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り、共に学べる仕組み作りに努めて参りたい。
1−8.福島では障害者のみならず、多くの人から「原発さえなかったら」という強い言葉を聞きました。知事は、要援護者が安心できる防災体制を作るまでは、伊方原発を再稼働すべきではないと思いますがいかがですか。
- 上甲県民環境部長) 伊方原発3号機の再起動につきましては、従来から国の方針、四国電力の姿勢、地元の理解の3条件を総合的に判断していくとの方針を一貫して示してきたところであり、その考えに変わりはありませんが、災害要援護者対策についても重要な課題の一つとして考えており、原発自体の安全対策と並行して、個別支援プランや福祉避難所等への受け入れ計画の策定などを進めていきたいと考えております。
阿部さん再質問)
1-8.これは、原子力規制庁が、一昨日ですか、原子力災害の安全性を確認する前に、国や自治体の防災体制が整わないと再稼働はあり得ないといっていることなのです。これは要援護者が安心できる体制を整えるまでは、再稼働はしないと約束するべきだと思いますがいかがでしょうか。
- 上甲再答弁)原子力規制委員会の委員長が個人的意見としてそのような発言をしたことは承知しておりますけれども、原子力規制委員会が今後どのように再稼働の条件を整理していくかは注視して参りたいと考えております。いずれにしても今現在、再稼働については従来から3つの条件を総合的に判断していくとの方針を一貫して示してきておりましてその考えには変わりはございません。
2−1.次に伊方原発の再稼働問題です。
東日本大震災から1年半が過ぎましたが、原発事故による被害は今も拡大中です。16万人もの方々が避難、疎開をしている中、今なお昨年3月11日に発令された「原子力非常事態宣言」は解除されず、壊れた建屋から放射能は漏れ続け、さらに4号炉使用済み燃料プールの崩壊が世界から懸念される状況です。
知事は、野田総理が大飯原発の再稼働容認直後、6月の記者会見で、「条件を整えた上での伊方原発の再稼働は、今の日本経済の状況、エネルギー情勢からすれば必要だ。」と発言されましたが、この夏、原発なしで日本の電気は消えることなく、秋を迎えて総理が説明責任を問われ、原子力村とそれにつながる人たちは、ますます信用を失墜しています。
四国電力も関西電力でも、計画停電という対策さえ一度も行わなかったばかりか、関西電力自身が「仮に大飯原発3,4号機の再稼働をしなかったとしても3%ほど余裕があった」と公表しました。
この夏の日本国民は2660万kWを節電しましたが、これはなんと原発の25機分にあたります。その節電も、省エネ、生産合理化、生活習慣などの定着節電と言われています。その上、原発には定期検査がありますから、猛暑の2010年夏でさえ、原発20機が停止していました。つまり、節電分と定検時停止分をプラスすれば、原発45機はただちに不要になります。全原発54機中残りの約10機分の電力はこの夏も、原発のバックアップ用火力設備で充分賄えたのです。今後、原発なしでこの国はやっていけることを証明した夏でした。
四国域内においても、8,3パーセントの節電で需要が大幅に低下しました。四電は、「四国内の4割は原発の電気だ」と言い続けたにも関わらず、私たちは、不自由なく、安心して「原発ゼロ」の夏を過ごしました。電力の世界のウソを世論は見抜ぬき、四電と県のエネルギー政策にも疑問が生れています。
知事の言う伊方原発再稼働の根拠のひとつ、電力需要には、これからも問題はないと思いますが、いかがですか。
- 東倉経済労働部長) 電力需給についてでありますが、この夏は県民一人一人や、それぞれの企業に節電に勤めて戴いたことや長期停止中の火力発電所の再起動や、定期検査の繰り延べなど、あらゆる対策を総動員したことに加え、大きな電源トラブルもなく、天候にも恵まれたことから結果として乗り切れたのでありますが、電力需給につきましては、単に足りればよし、ということではなく、不測の事態にも備え、供給体制を取る必要があると考えております。
阿部さん再質問) 電力需給の問題です。この電力需給に関しましては今申し上げましたように、今ある日本の54機の原発のうち、省エネと定期検査で、あと10機あれば足りるということですので、もうそれはこの夏充分に火力発電所のバックアップで賄えた、しかも、不測の事態ということをこの間から仰っていますけれども、2月には九州電力の火力発電所が事故を起こしまして、西日本から240万kWを瞬時に融通したわけです。こういうことができるわけですから停電とかそういう不測とかありえないと私は思いますのでお答えください。
- 東倉再答弁)いま停電はあり得ないと言われましたが、さきほどお答えしましたとおりでありまして、これからも無理な節電をお願いし、計画停電も起こりうる電力需給環境を続けることは、県民生活や企業活動に心理面も含めて影響が大きく問題があると考えます。
2−2.知事は脱原発には、「3つの問題解決が必要だ」と言われます。しかし一つ目の安定供給の見通しはあります。二つ目の廃炉技術は、全原発に寿命があるのですから今後進むことは明らかで、浜岡1、2号炉はその先陣を切るものです。三つ目「使用済み燃料」の問題なら、稼働させることでその量が増えて深刻さも増すのですから、再稼働してはならないことになります。「三つの問題解決」という知事の問題の立て方こそが問題ではありませんか。
2−3.知事の重要課題とは、実は四電の保有する原発と言う不良債権問題ではないのか、お尋ねします。
- 中村県知事)阿部議員に伊方原発再起動についてお答えいたします。
- 脱原発を目指すためには、これまで議会でも再三申し上げてきたように、まず原発に代わりえる低コストで安定的な代替エネルギーを確保すること、そして大型の原子炉の廃炉経験が無い中で原発を安全に廃炉にする技術を確立すること、さらに使用済み核燃料の最終処分方法を明確にすること、これらの課題解決に向けた道筋が見えて、初めて脱原発に踏み出せるのではないかと考えており、筋の立て方が問題とは全く考えていません。
- また私は伊方原発がこれまで、四国4県の県民生活の安定や産業の振興に大きく貢献してきたと考えており、不良債権ととらえたことはございません。その他の答弁につきましては関係理事者の方から答弁させていただきますのでよろしくお願いいたします。
阿部さん再質問)
知事は、3つの問題解決をたて、不良債権を考えたことはないとおっしゃいました。不良債権問題を考えなければ、本気で脱原発を考えていないということになります。
脱原発というのは、これは仙谷由人元政調会長が言いましたけれども、「再稼働せず脱原発すれば、原発は資産から負債になる。企業会計上、原発は直ちに廃止できない。」とこう言っているわけです。それから四国電力も伊方訴訟の答弁書の中で、本県原子炉を運転しないとすれば原子力発電に関する資産は投資に見合う回収ができず、事業運営に大きな影響を及ぼすと言っています。つまり、今脱原発が出来ないのは、この負債問題だと思われます。そしてまた今朝の報道では、枝野経産大臣が、原発事業を国営化することで、この負債問題を乗り切ること、それから廃炉を前倒しすることの発表がありました。
このことを考えた時に知事は当然不良債権問題を考えるべきだと思いますがいかがでしょうか。
- 知事再答弁)
- 阿部議員のご質問は1行で、知事の重要課題とは、四電の保有する原発という不良債権問題ではないのですか、というお問いかけでございました。これに対して私は、原発がこれまで四国四県の県民生活の安定や産業の振興に大きく貢献してきたと考えており、不良債権として捉えたことはない、という風にお答えさせていただきましたので、答弁漏れではないと思います。以上です。
2−4.次に現政権の迷走についてです。
現民主党政権は、原発に関しては素人の4人の大臣がわずか3日間で「暫定安全基準」により大飯原発を再稼働させ、現在、供給に充分な余裕ができても、関西広域連合の停止要請を無視しています。さらに、「規制委員会」の人選にあたり、野田首相は原子力ムラ内部からの委員の採用にこだわり、与党の同意もないまま、独断で人事を決定しました。
この「迷走」の中でも知事は、今まで通り「国の方針を待つ」のですか。特に迷走首相が、独断で規制委員会の人選を行ったことで、国の「安全性のお墨付き」に信ぴょう性がなくなり、再稼働3条件のうち、最も重要な安全性という条件が失われたのではありませんか。
- 上甲県民環境部長)原発政策の迷走の中で国の方針を待つのかとのお尋ねでありますが、法律に基づき任命された委員からなります原子力規制委員会により、今後新しい指針等が作成されることになっており、伊方原発の再起動につきましては、国の方針を踏まえて総合的に判断することに変わりはありません。
2−5.シンクタンク「環境総合研究所」の試算によると、伊方原発の苛酷事故時に西南西の風が継続した場合には、松山も高濃度の汚染を受けると予測しています。修正中の「地域防災計画・原子力防災対策編」で、県庁自体が避難する場合を想定していますか。
- 上甲県民環境部長)地域防災計画で県庁自体が避難する場合を想定しているかとのお尋ねですが、地域防災計画・原子力災害編については現在修正作業中であり、避難等が想定される原子力防災対策地域につきましてはいろいろ議論がありますが、本年3月末に示された原子力防災指針の見直しの中間取りまとめでは、原発からおおむね半径30km圏内となっており、県庁は区域外となっております。原子力防災対策地域の範囲につきましては今後、原子力規制委員会から示される原子力災害対策指針を踏まえ、最終的に愛媛県防災会議で決定することになります。
2−6.元東大地震研究所の都司(つじ)喜宣氏によると、16世紀の慶長豊予地震の際に、中央構造線活断層帯の一部が豊予海峡の西側の断層と連動して地震を起こし、10~15メートル級の津波が伊方周辺を襲った可能性がある、としています。
伊方原発3号機のストレステスト一次評価では、津波への耐性は、南海地震での想定津波の4倍の裕度がありましたが、しかし慶長豊予地震での想定では、その裕度は全くなることを、県はどう思いますか。
- 上甲県民環境部長)次に伊方3号機の津波への耐性裕度についてのお尋ねですが、都司氏が主張する1596年の慶長豊後地震による伊方周辺への津波の影響につきましては、確たる根拠に基づく物ではなく、可能性をしめしたものであり、県が行っている地震に関する古文書の調査におきましては、これまでのところ当該地震によって当県が津波被害を受けたことを示す資料は確認されておりません。また、伊方原発前面海域にある中央構造線は横ずれ断層のため、津波の影響は小さく、四国電力では、伊方原発への津波の影響を約4mと評価しております。四国電力の評価につきましては、現在国においてその妥当性を確認しているところであり、県としては引き続き国の状況を注視してまいりたいと考えております。
2−7.昨年3月3日の本会議で、私は、国の「緑の分権改革」に呼応して、自然エネルギーを第一次産業として活用、エネルギーの自給自足を進めるよう質しました。これに答えて、県は、「県下全域のクリーンエネルギー導入可能性調査を行い、地域の実情にあったクリーンエネルギーの導入促進などにより緑の分権改革を促進したい」と答えました。
1年半たっての進捗をお尋ねします。
- 東倉経済労働部長) 国の緑の分権改革は、地域資源の活用により地域活性化を図り、地域主権型社会を実現しようとするものでございまして、本県では国の委託を受けまして平成22年度に実施した導入可能性調査の結果を踏まえまして地域の実情にあったクリーンエネルギーの活用促進を基本にしまして、これまでに公共施設や住宅への太陽光施設の整備を始め各種バイオマスエネルギーへの活用なども進めてきておりますが、更に今議会に小水力発電の導入経費を予算計上するなど、クリーンエネルギーを活用した地域活性化に取り組んでいくところであります。
2−8.知事は先日、「エネルギー政策に関して県は、今後国の対策を待つことなく、着実に推進していく」と言われました。これを機会に、エネルギー問題を「産業政策課」から切り離して、専門の部署を作るべきだと思いますがいかがですか。
東倉経済労働部長) エネルギー問題を取り扱う専門の部署についてのご質問でございますが、昨年3月の原発事故以降、エネルギーへの関心が高まる中で、資源・エネルギー対策の総合調整等が産業政策にとってより重要な課題となってきましたことから、本年4月の組織改正によりその事務を産業政策課に移管したところでありまして、現在のところ、新たな専門の部署を作る考えはありません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます