−1 ?IPCCはシミュレーションしかしていないじゃない?
よく、懐疑派の人はIPCCはシミュレーションばかりしていて,それが正しいかどうかわからないと批判することがあるでしょうが、現実の温室効果の現れを再現できてこそそのシミュレーションが信用できるわけで、その現実として参照できる古気候学のデータが実は潤沢にあるのです。いただきものの資料より。
次のページの図が「気候感度」。
過去の様々な時期の温室効果の現れを一つの時期の研究ごとに並べて比較したグラフです。
かなりなばらつきがありますが、濃い影で示した縦の帯がIPCCがシミュレーションで使っている気候感度で、このCO2の倍増時に2〜4.5℃という範囲が過去のそれぞれの歴史時期の気候感度の研究成果と大体整合しています。
過去の様々な時期の温室効果の現れを一つの時期の研究ごとに並べて比較したグラフです。
かなりなばらつきがありますが、濃い影で示した縦の帯がIPCCがシミュレーションで使っている気候感度で、このCO2の倍増時に2〜4.5℃という範囲が過去のそれぞれの歴史時期の気候感度の研究成果と大体整合しています。
このように、シミュレーションを現実に合わせて検証するという基本の作業は行われています。
(以下の10万年単位の氷期ー間氷期間の遷移は、4種類の過去の地質時代の検証のうちの1つとして、全部で11件の研究が上で紹介されています)
(以下の10万年単位の氷期ー間氷期間の遷移は、4種類の過去の地質時代の検証のうちの1つとして、全部で11件の研究が上で紹介されています)
−2 ?気温上昇が原因でCO2上昇は結果では?
元データは東北大の南極のアイスコアのデータ。古代の温室効果ガスの濃度と気温データを一本のアイスコアから一緒に取り出すことができます。過去35万年前から保たれていた気温と二酸化炭素濃度の相関関係が、最近200年間だけ崩れています。(気温は変わらずにCO2濃度だけが急上昇)
(少し前なので380ppmと書いていましたが、現在は実に一時的ですが420ppmまで上昇しています。)
このグラフでは、「最近200年のCO2濃度の上昇」は気温上昇が原因ではないことが明らかです。それ以外の過去には相関関係がありました。
懐疑派の人たちは最近の数十年だけのグラフを勝手に2つ取り出してきて、頭の中で自動的にスケール調整をして、一桁小さい規模の気温の変化が今の大きなCO2増加の原因となっているという解釈をしているのでしょう。でも古気候学上の温室効果の現れている一つ前のグラフのデータ、このグラフのスケールを使って今の時代も観る必要があるわけです。その時は↓こういうグラフの関係が描かれますから、懐疑派の人の主張が無理筋と感覚的にも感じるはずです。
短い期間に区切って、恣意的なフルスケール操作をしているのは懐疑派の人の方だ、というわけです。
ちなみに過去1000年間のCO2濃度はこのグラフの1番上の図。産業革命で地下から化石燃料を掘り出して使い始める前には極めて安定していたことが分かっています。このCO2が安定化している図を見るだけでも気温上昇の結果でCO2が増えているという懐疑論者の論が成り立たないことは明白です。
正統派の見解、は4象限のグラフのうち、左下の気温グラフが上の大気中CO2濃度と整合している、と見る考え方になります。
また懐疑論の一派、中世の現在よりも大分高温な時期がある、という事象がもし本当にあったのであれば、右上あるいは左上のような中世の高い気温を受けて、大気中CO2濃度も中世期にはコブが出来ていたはずですがCO2濃度のコブは現れていません。
−3 ?キーリングのグラフでは気温上昇が先でCO2変化が追従しているが?
さて、過去の10数万年単位で起こる氷期-間氷期の遷移についての正統派の説は、ミランコビッチサイクルが引き金になって起こるわずかな変動を、二酸化炭素の温室効果が増幅しているからだ、となっています。
この時、気温とCO2濃度の間には正のフィードバックループが成り立っていると言われます。
この正のフィードバックループのうちの片方の因果関係がCO2の温室効果であり、もう片方のフィードバックもある、両方が成立している、とするのが正統派の考え方です。
この反対向きの効果の説明はしていませんが、その影響が時系列として表れているのが、キーリングのグラフとして槌田氏ら、懐疑論者から指摘されている気温の先行変化現象です。
このグラフについての槌田敦説への批判については、10年以上前のhechikoさんのブログ記事にお任せしておきましょう。
このブログ記事の中では、槌田敦論は、
・キーリングのグラフの単位系を読み誤っている
・グラフは解析の都合上、定常的な増加成分(=人為的CO2排出)をキャンセルしたものであったため、定常的な増加成分が無視できないことを見落とした
・因果関係は両方向に働く場合に思い至っていない
といった問題点を指摘しています。
・キーリングのグラフの単位系を読み誤っている
・グラフは解析の都合上、定常的な増加成分(=人為的CO2排出)をキャンセルしたものであったため、定常的な増加成分が無視できないことを見落とした
・因果関係は両方向に働く場合に思い至っていない
といった問題点を指摘しています。
−4 ? 槌田敦論では、海洋はCO2の排出源だとしているぞ ?
Global Carbon Projectが発表している毎年の人為的なCO2の排出量と吸収量の推移のグラフ。自然の排出と吸収は桁違いに多いですが、正味ではバランスしていますのでここでは省略されています(3つ上のグラフでも18世紀までのCO2大気中濃度が安定していたことでバランスしていることがわかります)。
人為的な排出と吸収もバランスして描かれていますが、その吸収源の一つが大気となっており大気中濃度上昇に寄与している形で表現されています。
排出側の実測値は化石燃料統計と森林減少の実績から出てきます。
吸収側も大気への蓄積量は大気中濃度変化の実測値からトン数が計算できますが、残りの海の吸収と陸上生態系の吸収は他からの引き算の残りを2分割して求めています。
海洋への吸収は酸素濃度の変化と結びつかないことからベクトルの向きが陸上生態系による吸収とは異なる事を利用して2分割されています。下の図解を参照ください。
以上から分かることは、現在は確かに海はCO2を吸収している吸収源として活動していること。
槌田敦氏はヘンリーの法則によって海からCO2が放出されているのが現状だ、と主張していますが、事実は海は今のところ吸収源です。
これが逆に海が排出源に変わった場合には、最悪の暴走温室効果となることが懸念されます。(いつかはそうなるのかもしれませんが)
槌田敦氏はヘンリーの法則によって海からCO2が放出されているのが現状だ、と主張していますが、事実は海は今のところ吸収源です。
これが逆に海が排出源に変わった場合には、最悪の暴走温室効果となることが懸念されます。(いつかはそうなるのかもしれませんが)
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