伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

伊方原発の免震事務棟はお飾りで済むのか?

2016-01-14 23:11:10 | 原発震災関連

 これは佐賀新聞1月8日の記事。

 川内原発で建設予定の免震重要棟が、「ああ、あれなしね」といとも簡単に建設キャンセルされて、にわかに伊方原発のダメダメ審査が九電の対応を引き出したのではないか、という疑惑が巻き上がっています。

 

1月12日: @togura04

 伊方の現状は、元々建てていた免震事務棟が、上方修正された基準地震動650ガルには耐えられないことが分かって、急きょ、従来型の耐震構造の、川内原発の緊急時対策所と同じ寸法のものを建てて現在賄っています。 / キャス
とコメントしました、ふくろうFFTVチャンネルで話題にされていた問題について書いてみます、結構根が深そうです。
 
 フクシマの事故収束のために活躍した免震重要棟の教訓を受けて、新たな原子力規制委員会による新規制審査では、免震構造の緊急時対策所が本来求められていたものでした。
 
 そもそも東電福島第一原発の免震重要棟は、06年の中越沖地震のおりに東電の柏崎刈羽原発の緊急時室が地震でドアが開かず機能を果たさなかった問題を受けて、新潟県泉田知事が東電に申し入れ、柏崎刈羽にも作り、福島にも311の半年前だかに完成したばかりの建物でした。あれがなかったら地震による被害も大きかったですし、放射能の上昇を受けて、ただちに撤退しなければ、となっていたかもしれません。東電の総員撤退をさせないで済み、結果的に東日本を救った、と言っても過言ではないのが、この免震重要棟建設という「過酷事故のための対策所」建設対策だったわけです。
 
 これはIAEA提唱の5層の深層防護の第4層である「過酷事故の収束・緩和策」の範疇の対策だった、といえるでしょう。311前には電力会社の自主的対応に任されていたこの第4層対策の法制化は、新規制基準の中で拡張された目玉商品なわけですから、規制委員会に対して、免震事務棟を(そのうち)作りますから許可をしてください、と九州電力が言っておいて、手のひら返しでお金が掛かるから作りません、を許しておいては、原子力規制委員会が骨なしだ、ということになります。
(もう原子力規制委員会はお手盛り委員会だということはみんなの共通認識になってしまっていて、今さらそんなこと言うな、と言われるかもしれませんが・・・)
 
 それで、九州電力は明らかに他の電力会社の方針を横目で見つつ対応を決めた物なので、四電の状況はどうか、ということをきちんと検証する必要があります。
 
 この記事によれば、基礎のコンクリート杭のいくつかが重量に耐えかねて折れる割れるという問題が起こるため、となりますが、3階~屋上までの重量が重くて、基礎が壊れるという話でしょう、平屋建ての新たな緊急時対策所を、免震構造で作れなかったはずがありません。単に拙速に建設をしたため、免震構造にする時間がなかっただけのものでしょう。
(追記:そもそも、基準地震動が473ガルに過ぎなかった311前に作られた建物ですから、620ガル、650ガルに耐えられなくても設計ミスにはあたりません。想定が甘かった、という問題を、免震技術の責任におっかぶせるのは変です。)
 
 最初の新聞記事に出ていた九電の言い訳話は、免震技術をひどく過小評価したもの、と言わざるを得ません。
 
規制委での伊方原発の緊急時対策所関連資料を以下に紹介。 

 

http://www.nsr.go.jp/data/000034414.pdf 第12回 これは、昔の免震事務棟2階についての評価。旧は、EL14.6m

 

http://www.nsr.go.jp/data/000034415.pdf 第12回 

 資料2-3-2          伊方発電所3号炉

緊急時対策所の居住性に係る被ばく評価について

平成25年8月22日

 四国電力株式会社

で被ばく想定数値の詳細を書いています。

 

http://www.nsr.go.jp/data/000034466.pdf 第17回

   伊方発電所3号炉 緊急時対策所の改善について

平成25年9月10日

 四国電力株式会社

被ばく低減のための措置

 

http://www.nsr.go.jp/data/000035971.pdf 第140回

伊方発電所3号炉 緊急時対策所の追加設置について

資料1-2-1

   基準地震動及び基準津波に関する部分については、 基準地震動等確定後、本方針に従って設計・評価を行う。

平成26年9月25日

 四国電力株式会社

 ここで新規の代替、緊急時対策所が出てきます。

なぜ地表面への沈着が少なくなるのか、わけが分かりませんが、④が下がっているのが聞いて(効いて)いるようです。面積が小さくなった、近くなったから地面に落ちる沈着量が減ったから?

http://www.nsr.go.jp/data/000035972.pdf より

 

排気筒の高さは、EL4+50+23=約77mとなります。

新緊急時対策所の高さはEL32mです。原子炉の中でいうと、

http://www.nsr.go.jp/data/000034356.pdf より 第6回

 

この階のレベルです。加圧器がこの階に乗っかっていて、圧力容器のふたを開けて燃料交換をする高さということでしょう。

http://www.nsr.go.jp/data/000034411.pdf より

おまけです、使用済み燃料プールの高さはEL32.3mから、マイナス12m+α

 とはいえ、ここ ↓ にあるように、既設の免震総合事務所は活用していくことができるので、直下型地震の第一撃は受けて免震構造が壊れたとしてもそれで上の建物の機能が残っていれば活用できるという点は、全く免震棟がない九電とは事情は異なると言えるか、と思います。

それにしても、新緊急時対策所のなんと手狭な場所に設置されてること。余裕が全くありそうにありません。屋外に所狭しと並べられた各種水タンクの隙間に設置されており、水の放射線遮蔽効果を期待しているのか?でも水攻めにあって役立たずになりそうです。

そして、更にその高台の上には重油などの燃料タンク7日分が設置されています。こちらが地震で壊れ、どっと油が上の崖から落ちてきて引火すれば火攻め。

伊方3号機の後ろの細い平地部には法面に沿って、非常用電源車やらポンプなどがずらっと備蓄されています。ここに上の斜面から油が落ちてくればすごいすごい火攻め。

 一方、この屋外石油タンクと物資の集積所の高さはEL74mで、さきほどの伊方原発3号機のドームの上についている77mの排気筒からは同一の高さなので、放出された放射性プリュームをもろ被ることになります。スゴイスゴイ。

西側から敷地断面を観た図がこちら。右端の淡水タンクは絵には入れてますが実際にはそこにはなくて原子炉の手前西側に外れており、その代わりにわずかな平地のすぐ右は斜面が迫り、その斜面の上の平地にはドームの高さあたりに石油タンクが置いてあることになります。

 

 原子力規制委員会のお偉いさんたちって、想像力がゼロですね。これはテロの標的以外の何者でもありません。

2月11日に伊方原発の北東側道路からの写真 

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