昨日、奈良の文化会館会議室で「新建築家技術者集団 40周年記念講演会」(奈良支部企画)として様々な伝統木構法を手がけられてきた増田一眞(ますだかずま)さんの話をパワポの画面と共に味わった。
増田さんは1934年広島生まれ、76歳、東工大・建築卒、1964年増田建築構造事務所設立、現在にいたる。1975年頃から日本建築学会の木構造「軽視」を批判し、建築基準法等の法規が木構造の伝統工法を「軽視」しているのも批判してきているようだ。
(私注:昨今の日本建築学会ホームページでは、この7月に以下のような「反論」を出したが、1959年(昭和34年)に日本建築学会が、伊勢湾台風を契機に防災的に木造禁止を決議したのはまぎれもない事実である。当時、私は高校3年であった。
日本建築学会ホームページより:http://www.aij.or.jp/jpn/databox/2010/20100726-1.htm
今回、初めて知ったが、40年前の1970年(昭和45年)に新建築家技術者集団が発足した時に設立の趣旨を起草したのは増田さんとのことだ。(派手に表舞台で動かれなかったので、又構造家として「支え役」と考えられたのか今まで余り目立たなかった)
私も設立の頃から「新建」会員だが、今回初めてお目にかかった。増田さんの事務所がずっと東京にあったせいかも知れない。風貌は、小柄で、庶民的好々爺で、目は生き生きして少年のようである。
ただ体調もあって「お声」が小さくマイクを使っているが、ところどころ聞き取れなかった。休憩を挟んで2時間半たっぷりのお話は「講義」のようでもあり、疲れたこともあったが内容をよく理解しようとすれば半期「15時間」はいるのではないか。
印象に残ったことは:
(1)木構造を構造力学の理論を駆使して理解し、耐震的安全性を証明しようとする姿勢。又1/3、1/5模型で実際に「実験」してみせる態度。
(2)伝統工法より徹底的に学ぶ態度、昔の船大工技術からも学ぼうとしている。貫の見直し(水平材の耐震性)、合成部材は使うが(太い材木の割りずらしアーチ、ほぞで止めるなど)、糊でくっつけたような集成材は使わない。(シックハウス対策もあるが、部材にばらしての再利用も見通す)
(3)間伐材の利用促進(アーチとサスペンション、ダブルアーチ、ボウビーム(水平梁に弓形(ボウ)添えを加える)など)
(4)木構造だけでなく鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造にも独特の視点で目を向けている。例えば増田氏は、今の日本のコンクリートは水みたいに「しゃぶしゃぶ」だ、もっと固練りコンクリートにすれば千年はもつ、と言っている。(ローマ時代のコンクリートが今に残っている例、ここでも「伝統技術に学べ」である。)
(5)コンクリート構造に木構造を合理的に混ぜる混構造も追求している。
(6)コンクリート構造の耐震に対する既存不適格建築(3階建て幼稚園)を木材による補強で安くあげるような実績も持つ。
(7)プレキャスト(工場加工)にして型枠の節約を追求などなど。
聴衆は50人ほどだったが、設計事務所、大工さん、製材業者、学生、主婦、研究者、古民家をまもる会・・・、等木構造に関心のある層が広がっているのかな、と思った。知らない初めての人たちも結構いたのである。
私のあいさつ概要と「質問」(ブログ版)
講演の前の挨拶(新建奈良支部代表幹事として)
・本日は暑い中、新建40周年を記念する奈良支部の木構造に関する講演にお集まり下さり有難うございます。奈良は今「平城遷都1300年」を祝っていますが、それ以前の藤原京や明日香、斑鳩の辺りにも木造寺院をはじめとする木造建造物が建ち、正に奈良の地は、日本における「木造建築のふるさと」とも言えると思います。
そういう地で、本日講演される増田先生のご本をテキストに新建奈良支部の「木造研究会」では、1年にわたり、勉強をしてきたとのことです。本日は、理論だけではなく実際を写真で見せていただき先生に説明して頂く事は誠に時機に適したことと思います。どうぞ宜しくお願いします。
懇親会での発言と質問
・先ほど国会議員に伝統的木構造技術をまもり発展させることで「アンケート」をとったら、60数人から、そういう運動に協力したいとの返答があったとのことですが、実際、ここにも大学の建築学科を出られた方も多くおられると思いますが、大学のカリキュラムにはっきり「伝統的木構造技術」がなかった場合も多かったのでは、と思います。(そういう人が建設省(現・国交省)の役人になったり、又教える立場になったりするのです)わが国の建築技術が明治以降、西洋技術に大きく傾いたことも大きいかと思います。そういう意味で是非、(建築系の)大学教師にも現在、木構造技術の研究や普及についての「アンケート」をとってほしい、と思います。・・・
・木構造に庶民が不安を持つのは大きくは三つあるのではないか、と思います。一つは耐震性、二つに耐火性、そして三つにはシロアリ対策の不安ではないか、ということです。
(これに対して増田一眞さんから丁寧な解答があった。ここでは省略。三つとも充分対応できるようになっている、とのことだ。)
増田さんは1934年広島生まれ、76歳、東工大・建築卒、1964年増田建築構造事務所設立、現在にいたる。1975年頃から日本建築学会の木構造「軽視」を批判し、建築基準法等の法規が木構造の伝統工法を「軽視」しているのも批判してきているようだ。
(私注:昨今の日本建築学会ホームページでは、この7月に以下のような「反論」を出したが、1959年(昭和34年)に日本建築学会が、伊勢湾台風を契機に防災的に木造禁止を決議したのはまぎれもない事実である。当時、私は高校3年であった。
日本建築学会ホームページより:http://www.aij.or.jp/jpn/databox/2010/20100726-1.htm
今回、初めて知ったが、40年前の1970年(昭和45年)に新建築家技術者集団が発足した時に設立の趣旨を起草したのは増田さんとのことだ。(派手に表舞台で動かれなかったので、又構造家として「支え役」と考えられたのか今まで余り目立たなかった)
私も設立の頃から「新建」会員だが、今回初めてお目にかかった。増田さんの事務所がずっと東京にあったせいかも知れない。風貌は、小柄で、庶民的好々爺で、目は生き生きして少年のようである。
ただ体調もあって「お声」が小さくマイクを使っているが、ところどころ聞き取れなかった。休憩を挟んで2時間半たっぷりのお話は「講義」のようでもあり、疲れたこともあったが内容をよく理解しようとすれば半期「15時間」はいるのではないか。
印象に残ったことは:
(1)木構造を構造力学の理論を駆使して理解し、耐震的安全性を証明しようとする姿勢。又1/3、1/5模型で実際に「実験」してみせる態度。
(2)伝統工法より徹底的に学ぶ態度、昔の船大工技術からも学ぼうとしている。貫の見直し(水平材の耐震性)、合成部材は使うが(太い材木の割りずらしアーチ、ほぞで止めるなど)、糊でくっつけたような集成材は使わない。(シックハウス対策もあるが、部材にばらしての再利用も見通す)
(3)間伐材の利用促進(アーチとサスペンション、ダブルアーチ、ボウビーム(水平梁に弓形(ボウ)添えを加える)など)
(4)木構造だけでなく鉄筋コンクリート構造、鉄骨構造にも独特の視点で目を向けている。例えば増田氏は、今の日本のコンクリートは水みたいに「しゃぶしゃぶ」だ、もっと固練りコンクリートにすれば千年はもつ、と言っている。(ローマ時代のコンクリートが今に残っている例、ここでも「伝統技術に学べ」である。)
(5)コンクリート構造に木構造を合理的に混ぜる混構造も追求している。
(6)コンクリート構造の耐震に対する既存不適格建築(3階建て幼稚園)を木材による補強で安くあげるような実績も持つ。
(7)プレキャスト(工場加工)にして型枠の節約を追求などなど。
聴衆は50人ほどだったが、設計事務所、大工さん、製材業者、学生、主婦、研究者、古民家をまもる会・・・、等木構造に関心のある層が広がっているのかな、と思った。知らない初めての人たちも結構いたのである。
私のあいさつ概要と「質問」(ブログ版)
講演の前の挨拶(新建奈良支部代表幹事として)
・本日は暑い中、新建40周年を記念する奈良支部の木構造に関する講演にお集まり下さり有難うございます。奈良は今「平城遷都1300年」を祝っていますが、それ以前の藤原京や明日香、斑鳩の辺りにも木造寺院をはじめとする木造建造物が建ち、正に奈良の地は、日本における「木造建築のふるさと」とも言えると思います。
そういう地で、本日講演される増田先生のご本をテキストに新建奈良支部の「木造研究会」では、1年にわたり、勉強をしてきたとのことです。本日は、理論だけではなく実際を写真で見せていただき先生に説明して頂く事は誠に時機に適したことと思います。どうぞ宜しくお願いします。
懇親会での発言と質問
・先ほど国会議員に伝統的木構造技術をまもり発展させることで「アンケート」をとったら、60数人から、そういう運動に協力したいとの返答があったとのことですが、実際、ここにも大学の建築学科を出られた方も多くおられると思いますが、大学のカリキュラムにはっきり「伝統的木構造技術」がなかった場合も多かったのでは、と思います。(そういう人が建設省(現・国交省)の役人になったり、又教える立場になったりするのです)わが国の建築技術が明治以降、西洋技術に大きく傾いたことも大きいかと思います。そういう意味で是非、(建築系の)大学教師にも現在、木構造技術の研究や普及についての「アンケート」をとってほしい、と思います。・・・
・木構造に庶民が不安を持つのは大きくは三つあるのではないか、と思います。一つは耐震性、二つに耐火性、そして三つにはシロアリ対策の不安ではないか、ということです。
(これに対して増田一眞さんから丁寧な解答があった。ここでは省略。三つとも充分対応できるようになっている、とのことだ。)
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