安全神話崩壊のパラドックス 2012.2.11
パルテノン多摩で開催された「リスク社会の神話を問い直す」を聴講してきました。講師は法社会学の河合幹雄桐蔭横浜大学法学部教授。60人定員ですが受講者のほとんどは60歳以上の方々(写真は開催前30分)。
著書では30%程度を占める犯罪件数のデータについて、講義時間の大半を使って解説しました。統計データの背景を知らないと、状況把握を誤ってしまうというのが講義のポイントです。 たとえば刑法犯認知件数の増加は、認知件数とは警察が把握した件数だということ。警察が把握していない事件は対象外であること、交通事犯は含めない、麻薬犯罪は特別法なので刑法犯には含まない、という事情を説明しました。
データというものはトリックがあるのですね。桶川ストーカー殺人事件のあと、警察庁通達で事件数を明確に把握するよう指示があったとのことですが、その年以降は件数が増加している。上からの命令があると扱い件数が増加するなど・・裏話満載で、(笑)大うけでした。
日本は安全と水はタダ・・といったのはベンダサンだったと思いますが、今日の日本は安全ではないという認識が広まっています。河合教授は、マスコミが統計データを読み誤って報道したことからこうなってしまったが、実際はデータからは事件が少なくなっていると論証しました。このあたりについては、教授の著書『安全神話崩壊のパラドックス』を多くの方が書評しています。
河合教授は、犯罪者と一般人を分ける境界がなくなったことにより、一般人の身近で事件がおこることが安全神話崩壊につながったといいます。
13日に千葉県のファミレスで発砲事件がありました。教授は、この事件を予見したかのようにファミレスでのヤクザの抗争事件をとりあげました。昔の抗争事件は、その筋の人が多く出入りするキャバレーなどで起きていたそうです(ヤクザ映画ではそうでした)。このニュースをみて、納得してしまいました。
私の期待は著書の第二部以降(安全神話の構造、共同体など)ですが、講義の範囲ではありませんでした。ここはよく理解できていないので、しっかりと読んでみましょう。