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飼料品薄 畜産に打撃「餌を腹いっぱい食べさせたい

2011-04-08 09:43:08 | ■Weblog

飼料品薄 畜産に打撃「餌を腹いっぱい食べさせたい」

河北新報 4月7日(木)6時13分配信

 東日本大震災のダメージは、内陸部の畜産農家にも広がっている。石巻工業港に林立する飼料工場が津波で軒並み壊滅。東北で使われる飼料の3割超を生産していた一大供給地が崩壊したからだ。飼料不足に陥った肥育農家は肉質への影響、築いてきたブランド力の低下を懸念し、支援を訴える。

 宮城県栗原市若柳で、銘柄牛の「若柳牛」を肥育する菅原文男さん(56)が、約40頭に餌を与えていた。トウモロコシ、大麦、ぬか…。良質の肉をつくるため、若柳地区の肥育農家が研究を重ね、開発した特別な飼料だ。
 「この餌も残り少ない。再び手に入れるまでには、かなりの日数がかかるだろう」。菅原さんの表情はさえない。
 長年、石巻市の飼料工場に配合を依頼してきた。その飼料の入荷は震災後、途絶えた。飼料の入荷に関する情報も入らず「肥育農家は不安で仕方ない」と言う。
 震災直後は、わらを多めに交ぜ、残っていた飼料を少しずつ与えるほかなかった。1回の量も通常の6割に抑えた。牛は餌箱をなめ尽くすように食べた。
 3月下旬にようやく東北以外で生産された飼料が流通し始め、菅原さんの牛舎にも届いた。牛への給餌量自体は震災前の9割にまで回復。取りあえずは一安心だが、不安が完全に解消されたわけではない。
 配合比率が以前と異なる飼料でかさを増しているため「肉質にも影響が出るだろう」と菅原さんは懸念する。飼料の不足や違いによる家畜の品質低下は、簡単には回復できない。「肉質は牛の様子を見ても確かめられない。分かるのは枝肉になった時だ」
 菅原さんに届けられた飼料は全て、成長した肥育牛用だった。子牛用のストックが少ないため、やむを得ず子牛にも与えている。
 「子牛に肥育用を与えるとロースが小さくなったり、病気がちになったりする」と菅原さん。「まずは牛の命をつなぐことが大事。ぜいたくは言えない」と自らを納得させる。
 漢方草を食べさせて飼育した「新生漢方牛」を出荷している栗原市築館の関村畜産も、綱渡りのやり繰りを強いられた。
 出荷間近の肉牛に飼料を優先して与え、その分、繁殖用牛の餌を通常の2割まで減らした。
 牛舎には、やせ細って背骨の浮き出た牛が並ぶ。代表の関村清幸さん(58)は「早産した牛がいた。餌が少ないためのストレスだったのだろうか。腹いっぱい食べさせられないのは、畜産農家にとって苦痛だ」と悔やむ。
 4月に入り、必要量は確保されつつあるが、関村さんは「苦しんでいる畜産農家は多い。国は支援を考えてほしい」と訴える。
 宮城県は、家畜の死亡など震災による畜産被害を約22億円と試算する。飼料の供給停滞による間接的な影響は、含まれていない。
 東北農政局は「民民契約の問題で、国に補償義務は生じない」との立場を示す。県も「今後の国との交渉課題」と言葉少なだ。(田村賢心)


◎東北の一大供給地/石巻工業港、津波で壊滅/再開の見通し立たず

 飼料や肥料のメーカー13社が集積する石巻工業港北東部の食品飼料団地。襲った津波は高さ約10メートルを超えた。
 岸壁に貯蔵タンクが転がり、倉庫の外壁は、めくれ上がって鉄骨がむき出しになっている。がれきや大破した大型トラックが車道の半分を埋め、クレーンが横たわる。周囲には腐敗した泥と飼料の臭いが漂う。
 農協系の飼料会社「北日本くみあい飼料」(仙台市宮城野区)の石巻工場は、震災から3週間以上が経過しても電気、水道、通信が止まったままだ。
 震災前は1日約2000トンの飼料を東北6県に供給していた。今は手作業で100トンを出荷するのが精いっぱい。5月末をめどに、全国の農協系飼料会社からの供給で需要をカバーする計画だが、石巻工場は復旧の見通しも立たない。
 業務部長の瀬野則幸さん(57)は「一日でも早く工場を稼働させたいが、電気も水も来ないままでは、どうにもできない」と嘆く。
 港湾施設の被害も深刻だ。石巻工業港の岸壁は60~100センチ沈降し、高潮や大潮で海水が乗り上げる恐れもある。一般船舶の接岸は1日から可能になったが、大型船からの荷揚げは困難な状況が続く。
 岸壁は至る所に亀裂が走り、波打っているため大型車両の乗り入れが難しい。貯木場には船舶が座礁し、荷揚げ用の大型機材も横倒しになっている。
 石巻工業港で飼料の荷揚げや倉庫管理を手掛ける南光運輸も、重機や倉庫の大半が壊れた。業務課長の阿部直之さん(52)は言う。
 「(1978年の)宮城県沖地震でも港の復旧に5年以上かかった。今回の地震はその比ではない」(門田一徳)

最終更新:4月7日(木)6時13分

河北新報


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