“避難所では感染症対策を”
被災地の避難所の中には、水や食料が届かないところもあり、十分な食事をとれない人や体調を崩す人が出始めています。専門家は、避難所での生活で体力が落ちた人などは感染症を予防することが重要だとして対策を徹底するべきだと指摘しています。
16年前の阪神淡路大震災で多くの患者を診察した経験のある、国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「寝食をともにする避難所では、感染症の集団発生が起こりやすい。精神的なストレスに加え、十分な食事や睡眠がとれずに体力が低下しているなかで、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症にかかれば、重症化しやすい」と指摘しています。
そのうえで、断水などによって手を洗うことができない避難所での感染症予防には、「せきエチケット」の徹底が重要だと呼びかけています。ポイントは、せきやくしゃみをする際に、手の平で口を覆うと手から感染につながるため、必ずタオルなどで口を覆うこと、覆うものがなければ、自分のひじの内側で口元を抑えるようにすること、そして、せきやくしゃみをするときには人の方を向かないことが大切だと指摘しています。さらに、水がなくても予防ができるよう、避難所には、速乾性のアルコール消毒剤やマスク、ウェットティッシュなどを用意し、不足している場合はなるべく早く届けるべきだとしています。
また、今回の地震では、津波によって広い範囲で地面が盛り上がり、土の中の破傷風菌が外に出ているため、けがをすると傷口から感染するおそれがあります。破傷風菌は、感染すると全身がけいれんしたり呼吸困難になったりして、重症化すると死亡することもありますが、ワクチンを接種すれば予防できます。これについて、安井主任研究官は「破傷風ワクチンは、子どもの場合、ほとんどが接種しているが、接種していない高齢者や、接種から10年以上が経過している大人は、屋外での片づけや救助作業に当たる際には十分に注意する必要があるし、もしも感染したら早期に治療することが重要だ」と話しています。