【将棋】山田定跡をひたすら称賛するブログ

居飛車急戦党が、日々の対局記録を綴ります。
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あと、本の感想が少々。

後手四間飛車1二香型に対する山田定跡の仕掛けについて

2024-08-20 22:50:00 | 将棋

当ブログにて実名を公表するにあたって、「匿名表現の自由」というものを調べてみたところ、法学の観点だけでも様々な議論があるようです[1]。他にも哲学・文学・社会学など観点からも様々な意見があるでしょうし、正直言って私はこれらに追いつけていないです。

私が「顕名(匿名の対義語)」でブログを書くからといって、匿名ブロガーの方々を低く見ている訳ではありません。意見表明について「私自身がどうしたいか?」が関心のある問題であって、「他人がどうあるべきか?」は私の問題の範囲外です。

最近、ショウペンハウエルを読みましたが、当時(1850年頃)も、顕名の文学作品に対する匿名批評を集めた雑誌があったそうです。「匿名のペンで攻撃する者が、読者を欺き安全無事な位置から他人の名誉棄損を企てているという嫌疑を自らこうむるのも、当然である[2]。」はい、文学の世界ではそうでしょうね。私もAmazonで小説を買う際は、レビューや☆の数はあまり見ないです。

しかし、政治上の言論シェルターとして匿名表現の自由は必要でしょうし、世間の目が厳しいなら一種の逃避所も設けるべきでしょう。

 

さて今回は、5七銀左急戦vs後手四間飛車について考えたいことがあります。下図における振飛車の候補手としては、①6四歩、②5四歩、③1二香、④4三銀の4つがあります(あとは1四歩もあるかな)。私の将棋の先生は、初級者には②5四歩を薦めています。①③は山田定跡(斜め棒銀)への対処が難しいから。④は玉頭銀を指すのが難しいから。

あれ、③1二香に対して山田定跡(下図)って成立するっけ?確認のために青野九段の棋書[3]を読んだところ、確かにこれは、振飛車の方に予備知識が求められる変化が多いです。

以下は青野九段の手順をなぞるだけなので、重要局面の紹介だけに留めます。振飛車の常套手段である△3三角~△2二飛のぶつけには、▲6六桂と受ける手があります。角筋を受けただけのようですが、もう一つ、恐ろしい狙いがあります。普通は振飛車にはバレないでしょうね。

なので、手順中の▲2四同銀に対しては△3四銀とかわすのが本手とされています。1二香型のため、▲8八角などは厳しくないんですね。▲2三銀不成で振飛車がピンチに見えますが、振飛車が上手く切り返してさばく順があります。しかし、この順も普通は思い付かないでしょう。

冒頭にお示しした振飛車24手目の候補手は、歴史的に古い順から、①6四歩=②5四歩<③1二香<④4三銀となります。①6四歩は当時の模様重視の将棋観に基づくので、今の将棋には馴染みにくく除外しても良さそうです。敢えて古い②5四歩を指して端角定跡を受けて立つという先生の指導方針は、金子金五郎先生の名言「定跡とは歴史です」を地で行くものだと思います。古い指手の意味が分かって初めて、新しい指手の意味が理解できるというものです。

 

【参考文献など】

[1] 海野敦史、「匿名表現の自由の保障の程度 米国法上の議論を手がかりとして」、情報通信学会誌、vol. 37、No. 1、pp. 1-12、2019年

[2] ショウペンハウエル著、斎藤忍随訳、「著作と文体」(岩波文庫「読書について 他二篇」より)、pp. 50、1960年

[3] 青野照市、「鷺宮定跡 歴史と最先端」、MYCOM、2005年