【将棋】山田定跡をひたすら称賛するブログ

居飛車急戦党が、日々の対局記録を綴ります。
活動場所はリアル(将棋道場)がメインです。
あと、本の感想が少々。

【局後反省】相居飛車の力戦型(その2)

2024-05-29 18:12:24 | 将棋

本日2回目の投稿。相居飛車の将棋の局後反省を行います。

下図は、駒組が互いに煮詰まって、私が▲4五歩と仕掛けた局面です。囲いは両者とも同じ矢倉囲いですが、お相手の攻めの陣立が見慣れない格好です。多分これだと仕掛けられず、一方で私には仕掛けがあるので先手有利だと思っていましたが、水匠5[1]の評価値はたった+77です。マジっすか。

本譜は、△6四角、▲4六角、△同角、▲同銀、△4七角、▲2六飛、△3八角成と進みました。

お相手には恐れ多いのですが、この馬作りはどうだったのでしょう。後手の攻めに寄与していなければ、先手の攻め駒も取れないですし(△4七馬の銀取りは、▲5三金があるので無効)。しかしながら、先手の4六銀が離れると、後手の馬によって桂馬や飛車がパクパク食べられてしまうので(本譜もそうなりました)、先手は正確な攻めが求められます。

本譜はその後、▲4四歩、△同銀、▲4五歩、△3三銀、▲3五歩、△同歩、▲7一角、△8四飛、▲3五角成と私も馬を作りましたが、これは逸機でした。水匠5は上図で▲3五歩で攻めになると言っています。

後手は△3五同歩なら、先手は▲4四歩、△同銀、▲2四歩、△同歩、▲7一角、△8四飛、▲2四飛からの十字飛車が狙いです。実戦では変化すると思いますが。

後手が▲3五歩を放置するなら(例えば△9五歩)、当然▲3四歩と取り込みます。△同銀は▲4四歩、△同金、▲5三角からの馬作りが厳しいので△同金とします。

そしたら今度は▲7一角、▲5三角成として急所に馬を作って、後手に手を渡せばいい。▲3五歩による金桂交換の駒得は急いではいけないのがポイントです。先手の右桂がいなくなると、飛車が馬でいじめられますから。相居飛車はこの辺りの押し引きが難しい・・・。

 

【参考文献】

[1] たたやん氏webページ、https://drive.google.com/file/d/1T-Go2KImMfKD_4m_j4fQFXrEfaGgAcS_/view、閲覧日2023年12月18日


【局後反省】相居飛車の力戦型

2024-05-29 11:27:11 | 将棋

81道場(オンライン)では、戦型別の勝率を表示できます。元から認識していたものの、相居飛車(矢倉など)の勝率が低いのを見るとやっぱり落胆します(下の円グラフ)。

上記の原因は、対抗系(急戦)と相居飛車との性質の違いだと思っています。

①序盤の駒組

・対抗系(急戦):お互いにまずは玉を深く囲って、その後に居飛車から見て右辺で有利を得ようとする。⇒仕掛けの際は右辺に集中すれば良い(楽)

・相居飛車:相手の駒組を見ながら、一手一手について、右辺で攻めの手を指すか、左辺で守りの手を指すかを決めなければならない。⇒常に盤面全体を見る必要がある(疲れる)

⓶仕掛け方とそのタイミング

・対抗系(急戦):定跡により居飛車側の仕掛けはパターン化されているので、仕掛けやすい。

・相居飛車:確かに定跡はあるが複雑な変化が多く、自分の棋力では対処しきれない。その上、仕掛けを保留して自陣に手を入れる方が得な場合も多い。

 

そういう訳で、米長流急戦矢倉の検討は後回しにして、今回は相居飛車の局後反省を行います。

序盤は下図のような感じでした。お相手は4手目△4二銀だったので、嬉野流を警戒していたら左銀は4四へ行きました。次に、お相手は右銀を繰り出してきたので、棒銀を警戒していたら右銀は7四へ行きました。結局、△6四角により私の攻めをけん制する方針を選ばれたようです。

本譜は角の当たりを避けて▲2六飛と引きましたが、替えて▲2九飛の方が良かったです。香車に紐が付きますからね。

その後は▲4八金として、お相手の角の成る場所を無くせば良かったのですね(下図は参考図)。

本譜はその後下図の局面になりました。秒読みに追われて▲4五歩と決戦しましたが、これはやっぱり悪かったですね。

かといって、局後に検討しても有力手が分からないので、水匠5[1]に聞いてみました。私の脳内擬人化は以下の通りです。

「お相手に攻めは無いから、▲9六歩~▲8八玉で囲っておきなさい。」

「先手の攻めとしては、まずは▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲3四飛(下図)と転回しなさい。この飛車は狭いようでも取られないから。」

「そして、▲3五歩を入れてから、お相手の左銀が動いたタイミングで飛車で角を取って、▲3四歩の桂頭攻めをしなさい。」

「それでもお相手が仕掛けを保留するなら、飛車を2筋に戻せば先手の桂頭攻めだけ残る形になります(下図)。」

私はこんな先の展開を30秒将棋で読むことはできません。この検討は本当に役立っているのかな?

 

【参考文献】

[1] たたやん氏webページ、https://drive.google.com/file/d/1T-Go2KImMfKD_4m_j4fQFXrEfaGgAcS_/view、閲覧日2023年12月18日


【局後反省】米長流急戦矢倉(その1)

2024-05-26 10:02:01 | 将棋

私の行きつけの将棋道場では子供教室も開いており、一般の自由対局の所にも賑やかな声が聞こえます。雰囲気が明るくなって、盤面にむしろ集中できますね。

もちろん、子供たちにも色々な悩みがあって、その典型の一つが中学受験・高校受験です。

この地域では、公立より私立の方が(色んな意味で)優れるとか。私自身は田舎出身なので、私立という選択肢はありませんでした。

「そんなに言う程か?」と、自身の経験から訝しく思ってしまい、一つの観点としていじめの統計データを参照しました。

 

文部科学省[1]の資料によれば、令和4年度(2022年度)のいじめ件数は、小学校~高校で約68万件。平成26年度(2014年度)は約19万件であり、現在まで増加傾向。

統計上のこの増加は、いじめ対策が進んで認知数が増えた要因もあるので、学校関係者は忙しい中でも努力されていると思います。

生徒数1,000人当たりのいじめ件数は53.3件。計算上は、1クラス40人に約2件あるのですね。

確かに、私が子供の時を振り返ってみると、いじめは身近にありました。自分が被害に遭わずに済んだのは、多分、学業成績が良かったためでしょう。

だったら子供たちが私立の中学校・高校を志望するのは当然のことです。どうも、自分は浅薄なのがいけない。

 

さて、今回は相矢倉の将棋を検討します。

米長流急戦矢倉[2]は破壊力のある急戦策なので私はよく使いますが、その代償である反動の強さに対応できず、失敗することが多いです。

かといって、相手がこれを仕掛けてくるのも、一旦は受け身になるので嫌なものです。なので、今回は先手側の急戦矢倉対策を考えます。

 

まずは、私のネット対局より。下図の局面は後手が両側の端歩を突いている分、攻めの陣立が立ち遅れています。

現局面の△1四歩は、後手が△4四銀と出たときに▲2四歩、△同歩、▲同角、△2三歩、▲1五角として、先手が角のにらみで後手陣をけん制するのを予め防いだ手と考えられます。

では、これを咎められるのか…。本譜では私は▲3五歩としました。以下、△同歩、▲同角、△4四銀、▲6八角、△5五歩、▲同歩、△4五歩、▲2四歩、△同歩、▲2五歩、△同歩、▲2四歩、△5五銀、▲2五飛、△6六歩、▲2三歩成、△6七歩成。

長手順を進めてしまいましたが、要は継ぎ歩攻めによる攻め合いを狙いました。それは実現はしたものの、結果図(上図)は後手のと金の方が価値が高くて、先手失敗です。(私の脳内では、こんな先まで読めません)

 

局後反省で、▲3五歩に替えて▲4六銀を検討してみました。

後手が初志貫徹で△4四銀と出るなら、▲3五歩、△同歩、▲同銀、△同銀、▲同角、△4四角、▲同角、△同歩、▲2四歩、△同歩、▲7五歩でどうでしょうか。

水匠5[3]は互角(評価値+244)と言っていますけど、後手の言いなりになるのを防いだ訳でして、私が指したい将棋になってますね。

次回は、後手側の攻め方を検討します。

 

【参考文献】

[1] 文部科学省、「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(いじめ関連部分抜粋版)」、https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5aa667da-fe7f-4ea9-9ee2-7510121e6751/2d6548bb/20231016_councils_ijime-kaigi_dai2_01.pdf、閲覧日2024年5月25日

[2] 藤森哲也、「藤森流急戦矢倉」、マイナビ将棋BOOKS、2014年

[3] たたやん氏webページ、https://drive.google.com/file/d/1T-Go2KImMfKD_4m_j4fQFXrEfaGgAcS_/view、閲覧日2023年12月18日


私が5七銀左急戦を採用する理由

2024-05-23 22:43:51 | 将棋

ここ1ヵ月の間、普及指導員[1]の3名の方々から各々指導を賜りましたが、どうもなぜか、私が指す5七銀左急戦に対して批判を頂きます。

「古い」とか、「型にはまっている」とか、「研究嵌めを企てている」とかとか。

確かに、村山(慈)八段も、文献[2]で4五歩早仕掛けと4六銀左急戦を取り上げ、前者は「(四間飛車に)強気にさばかれて苦しいのが現状」であり、後者も「斜め棒銀はうまくいかないのが現状」との見解を示されています。

しかし私は、5七銀左急戦は成立が古いだけで廃れていないし[3]、型破りな事は既存の型を理解して初めて成し得るものだし[4]、急戦が研究されたのは当時の四間飛車(1959年)の勝率が高かったため[5]、と認識しております。

指導とはいえ、客(私)に対して批判を一方的に展開するのには事情がありまして、とある筋からそれを教えて頂きました。

なるほど、その事情から生じる心理メカニズムは理解しましたが、将棋指導はビジネスですから、長期的視座に立った合理的戦略に基づく商売を構築すべきです。

とはいえ、私は懲りずに別の普及指導員に教えを請いにいくでしょう。事実を一般化するには早すぎますから。

 

上記をきっかけとして、今回は私が5七銀左急戦を採用する理由を紹介します。

要点を箇条書きにすると以下の通りです。決して懐古趣味では無くて、自分なりに合理的に考えているつもりです。

①学問や仕事などにおいて、個々の事項を身につける順序は、その歴史的順序に合わせるべきだから[6]。

⓶私程度の棋力で持久戦(特に穴熊)を指すと、相手のミスを待つ将棋になってしまうから(位取り戦法は例外)。

 

各々について、若干のコメントをします。

まずは①について。数学者の小平邦彦先生は、1960年代に特にアメリカで流行った新数学(new math)教育を批判しています[6]。現代では集合論が数学の基礎とされるからといって、中学生にそんな極めて抽象的な知識を教えても、集合の概念を正しく理解できる訳が無い。数学は集合論(19世紀終わり頃)が創られるより2000年前からあって、特に高校数学は集合論以前に完成されていた。数学教育は生物の進化と同様に、その歴史的発展の順序に従って行われるべきだろうと。

私は、将棋の戦法の発展というのは学問と同様に、先行する戦法を乗り越えるために新しいのが編み出され続ける過程と認識しています。対抗系を例に挙げると、戦後の振飛車ブーム⇒居飛車の急戦研究⇒振飛車の急戦対策研究⇒居飛車の持久戦研究⇒振飛車の持久戦対策研究⇒居飛車の急戦の再評価・・・といった具合です。

将棋戦法も学問も単にその知識を詰め込むだけではダメで(※)、それらが成立した歴史的背景を理解して、初めてその知識の本質に近づけると信じています。

(※:詰め込み自体を悪く言っているのではありません。それは、一つの要素として必要です)

そういう訳で私が持久戦を理解するには、先行して創られた急戦をマスターする必要があるので、その代表格である5七銀左急戦を採用しております。

 

次に⓶について。私は将棋というものを、チャレンジ(挑戦)する技術を身に付けるための練習素材と見ています。

定跡などを研究して自ら攻めを仕掛けて、相手からの反動を受け流し、ギリギリの1手差で勝つ。仕事やビジネスだって、本来はそういうものでしょう。

これが居飛車穴熊だと攻めの陣立ちが遅れますから、なおも仕掛けるには相当な技術が必要なはずで、私程度の棋力では不可能です(四段になったら採用します)。

なので、相手の攻め間違いを待つ将棋となってしまいます。私はこういうのを、日本企業衰退の根底にあるメンタリティと重ねてみてしまいます。

 

以上が急戦についての私の見解でして、一部の読者には不本意な内容も含まれているかもしれませんが、ぜひ読者からもご自身の戦法の採用理由をご教示下さいますと幸いです。

各々で考え方や価値観が異なるのは当然であって、それらを互いに知るために将棋道場がありますから(この話題は別で取り上げます)。

結論を出す必要は無いと思います。

 

 

【参考文献】

[1] 日本将棋連盟webページ、「公益社団法人日本将棋連盟公認将棋普及指導員のご案内」、https://www.shogi.or.jp/branch/、閲覧日2024年5月23日

[2] 村山慈明、「村山慈明の居飛車対振り飛車 知って得する序盤術」、NHK将棋シリーズ、電子書籍版、2017年

[3] 加藤桃子、「桃子とGoTo! ▲5七銀左急戦の旅へ」、将棋世界2020年12月号付録

[4] Wikipedia、「守破離」、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%88%E7%A0%B4%E9%9B%A2、閲覧日2024年5月23日

[5] 山田道美将棋著作集、大修館書店、第一巻、pp. 123、1980年

[6] 小平邦彦、「怠け数学者の記」、岩波現代文庫、pp. 110~114、2000年


四間飛車4五歩ポンへの対策(その2)

2024-05-18 22:09:52 | 将棋

前回の投稿で、パンクロック如きに「感銘を受けた」なんて仰々しい言葉遣いをしたことが、恥ずかしくなりました。

そこで、ちゃんとした英詩を読もうと思い、古書店で「ワーズワス詩集」[1]を調達しました。

ついでに向かいの大型本屋で、役に立つか分かりませんが、「オックスフォード現代英英辞典」[2]も購入しました(パンクロックの理解にも役立ちますし)。

 

家に帰って早速、"The Thorn"(茨)を読みました。全然理解できませんでしたが、とても恐ろしい気持ちになりました。

"an infant's grave"とか、"Oh misery!"とか、"that cruel father!"とか。この詩に救いは無いのですね。

パンクロックではありませんが、The Policeの"Can't stand losing you"程度で恐ろしく感じてしまう自分は、ヌルかったようです。

 

 

さて、前回に引き続き、四間飛車4五歩ポンへの対策を取り上げます。

前回の基本図から▲3七銀、△6四歩の交換を入れてから、▲8八角と打ってみます。

振飛車からの反撃の手順中、△4六歩に対して▲同銀右と取れるのがミソ。

でもこれは△1四歩という受けがあるんですよね・・・[3]。

▲3五歩、△同歩、▲2四歩、△同歩、▲3三角成、△同桂、▲2四飛に対して、△1三角の反撃があって・・・

▲2一飛成、△2二飛、▲1一竜、△2九飛成、▲1三竜、△2五桂となって・・・

銀取りなので▲4八銀とせざるを得ず、次に△3六歩で反撃が続く形となり(場合によっては△8六桂~△8七角の強襲もある)、銀損ながらも振飛車ペースでしょう。

これがあるので、前回は居飛車4八銀型を取り上げたのですが(△2五桂が銀取りにならない)、こちらは△4六歩の反撃への対応が難しい。

うーん、角打ちで一気に飛車先突破するのは諦めて、いつも通りに▲6六歩から駒組を継続しようと思います。

まぁでも、振飛車の△1四歩はぼんやりしているようでも反撃筋を秘めている訳で、こんな風に駒を捌けたら振飛車も楽しそうですね。

しかし、私が飛車を振ると、急戦長の将棋にもかかわらず居飛車が仕掛けを保留する場合に上手く対応できなくて・・・、私の四間飛車はファームに居ります。

 

【参考文献】

[1] 山内久明編、「対訳 ワーズワス詩集」、岩波文庫、赤218-2、1998年

[2]「オックスフォード現代英英辞典」、第10版、旺文社、2020年

[3] 山田道美将棋著作集、大修館書店、第一巻、pp.243、1980年