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ミケマル的 本の虫な日々

『ノルウェイの森』再読


 出版当時とても話題になったので、『ノルウェイの森』買って読んだのですが、その時はなんか好きになれなかった。
『羊をめぐる冒険』はいいなと思ったけど、『ノルウェイの森』以来村上さんの長編は読まなくなってしまいました。
エッセイや短編小説は好きで読んでたけど。

 その後、また長編小説も読むようになって、やっぱり村上さんの小説は不思議だし、よくわからないことも多いけれど、惹かれるなと。
そして、ついつい全部読んでしまった(笑)
 
 そんな中、私としては『ノルウェイの森』は村上さんの作品の中で一種のトラウマ的なものだったように思います。
でも、考えてみたら、ちゃんと再読してない。
今だったら受け取り方が変わってるかもと。

 さて、『ノルウェイの森』


  

何しろ、やっぱりこの装丁が凄い!
赤と緑のクリスマスカラーのインパクト。
そして、ノルウェイの森ってビートルズの曲だから最初に聞いて歌詞を見たら、ううむという内容だった(笑)

 読み返してみて、この本に関する私の記憶の断片と一致するところもあり、こうだったのかというところもありましたが、以前よりもこの話に対する抵抗感が無くなっていました。
それは私が年齢を重ねて達観できるようになったからかもしれないけど、何故かはわかりません。

 とにかくこの話の中には死がすごく多い。
それも自死が多い。
最後の方になると、この人も死んじゃうのかな、大丈夫かしら?って思うほど。
確かに若い時に死ぬ人の中で自死の割合は結構多いのは事実です。
私も高校の同級生、大学の同級生でもありました。
でも、こんなに多くの知り合いが死んでしまうって。。。

 そして、性描写も結構多い。
村上さんの小説には普通にセックスが出てくるのだけど、なんか乾いてる感じがする。
食欲と一緒に性欲も普通にあるよねって感じ。
そうか、ここでこうなるのかという意外性や、ここではしないのかという意外性も。

 若い頃に読んだときは、この2つが受け入れがたかったのかもしれないな。
死と性は人を描こうとしたら避けられないものだし、若い人の話や時代性もあると今になると思います。
自分も若い頃にはそのインパクトが消化できなかったのかな。
何かを失ってしまった人がどのように生きるか、あるいは生きられないかという根源的なものを描こうとしたのかしら、と今回は感じました。

 私がこの本の中で、以前に読んだ時も今回も一番怖かったのは、レイコさんという登場人物のお話。
ピアノを教えて欲しいという少女がすご〜く怖いの。
世の中にはこんな邪悪な落とし穴があるんだな〜っていう象徴のようなお話で、この本のこの部分だけすごく鮮明に覚えてた。
あまりに怖くて再読したくないくらい(笑)
誰も死なない部分が一番怖いってすごいわ!

 今回読んでみて、村上さんの長編の中で『ノルウェイの森』が一番読まれた訳が分かった気がしました。
独特の不思議なシチュエーションが無くて普通に読みやすいし、登場人物のそれぞれが独特の個性を持っている。
むしろ主役のワタナベ・トオル君が一番個性がないくらい。
終わり方も賛否両論あるようだけど、この終わり方はなかなかいいなと思いました。

 結論として、『ノルウェイの森』は今回読んだら結構好きになりました。
それにしても、みんなどこでもタバコを吸うのだった。
どこにでも灰皿がある昭和の時代を思い出しました。


 

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コメント一覧

iwa-mikemaru
紫苑さま、ありがとうございます!
ピアノのところは本当に怖かったのですが、若い頃にあそこを読んだおかげで、人生には思いがけず良いこともあるけど、思いもしない悪いことも起こるかもしれないんだなと知ることができて良かったと思います。
 私の感じた事を書いたの書評を褒めていただいて、とっても嬉しいです。
今回の『ノルウェイの森』再読で以前はわからなかったり受け入れ難かったところがあったんだなと思ったので、これから再読する他の本も以前と違う感想を持てるかもと楽しみにしているところです。
紫苑
おはようございます。
すごい読解力!私もピアノの箇所が怖かった。読んでいる最中は、流れがあるのでスムーズに読めたけど、再読したいと思えない小説です。羊とか初期の短編が好きです。昭和、確かに周りの人が今では考えられない理由で死んでいきました。村上氏はそんな人たちの代わりに「同じように繊細で死に近いところにいるけど、どうにか生き延びた、生き延びることもできるんだよ」といろんな小説を通して言っているように思います。
ありがとうございます。これだけの短い文章でこれだけ深い感想、ありがとうございます。
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