ただ、それだけでよかったんです (電撃文庫) | |
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「僕の望みは、ただ、それだけでよかったのに…」
電撃小説大賞をとった作品ということで、どういう?作品なのかな?と思い読みました…すいません、嘘です。
竹岡美穂さんのイラストを見て、「野村美月先生の新作なのかな?」と思って、手を取ったら、たまたま、電撃文庫大賞だったという…
ちなみに、ジャケ買いです、はい…
ただ、こういうジャケ買いは本との良い出会いになることが多いので、電撃小説大賞作品ということもあり期待しながら読みました。
結果を先にお伝えしておくと、大変良い出会いだったなと思います。
そんなわけで、予定していた本のレビューを後回しにして、感想を書いてみたいと思います。
①ストーリーの導入みたいなもの
スポーツ万能、秀才、クラスで人気者でもありリーダ的な存在である少年Kが自殺した。彼の自殺の理由はいじめによるものと言われ、遺書には「菅原拓は悪まです。誰も彼の言葉を信じてはいけない」と書かれていた。クラスの目立たない存在であるはずの菅原拓がクラスの人気者の4人を支配して、壮絶ないじめをしていたといわれているのだが…少年Kの姉の香苗は弟の自殺の真実を知るべく調査に乗り出す。
果たして少年Kの自殺の理由は?調査の中で浮き彫りになった人間テストとは?菅原拓が主張する革命とは?そもそも、菅原拓は悪魔なのか?
②感想みたいなもの
・「中学校のいじめ」を舞台としたライトノベル
ライトノベルというと、私の読んだものだと、異世界に転生したり、剣やファンタジー、非日常、ギャグ要素などなどかっこよかったり、ほのぼのとしていたり、明るかったり、恋愛要素がかわいらしくきゅんきゅんしたりというようなイメージがあったのですが、本作は違います。
まず、特殊な環境とはいえ舞台は「中学校の教室の中で行われるいじめ」です。
しかも、実際のいじめ現場のような「証拠のないいじめ」が描かれているので、いじめの当事者や第三者が好き放題言えるので、誰が本当のことを言っているのかは全く分かりません。
ただ、公式に認定されているのは主人公である菅原拓が4人の人間をいじめていたということだけです。
そこから、少年Kの自殺の真実を調査すると、たかが中学の一クラスの中で起きたという狭い世界なのですが、その世界を掘り起こすことにより世界を広げているように感じました。
また、基本的には登場人物の背景は基本的に相当暗いので、明るくて楽しいものが読みたいという方にはあまりオススメできないなと思いました。
・粗は目立つものの、物語に引き込まれる面白さ
読後感は、面白い、読んで良かったなと思わされるような作品でした。
いじめは確かに昨日まで親友だと思っていた奴がいきなりいじめている側の仲間になっていじめてくることがある(私の体験も含め、いじめられてた時に確かにこういうことがあったなと…)ので、昨日いじめてなかった奴がいじめてくるなど、こういうところは妙にリアリティがあるなと思いました。
しかし、いくら事情があるにしても、主人公である菅原拓の性格は豹変しすぎではないかと思う点もありました。
また、同じく都合上少年Kと書いた人物とのやり取りも、菅原拓の回想ではほとんど触れられていないので、本当にそんな関係があったのか?と思いました。
また、少年Kがなぜ自殺するほど発狂することになったのかは、そこまで発狂するか?と思うような答えは提示されていません。もしかすると、次巻があるのかな?と思いもするのですが、いじめを舞台にした作品で、一応、革命の答えが出てしまっているので、次なる革命が描かれるのか?という疑問すらあるので、単巻を前提として読むと、謎の解決としては納得のいく答えが提示できているとは思えません。
ただ、これは私がそう思うだけで、ただ、実際、自殺と現実に聞いてもその理由は納得のいくものではないはずなので、納得のいく答えを提示しろというほうが難しいのかもしれません。
個人的には登場人物の豹変ぶりが急すぎるのと、少年Kの発狂までの道筋がよくわからないという点、(ここは狙っているのではないかと思いましたが)いじめのシーンの描写が薄いので粗いなと思いましたが、少年Kの自殺、いじめを軸に真実に迫っていく過程は引き込まれ、面白いなと思いました。
・少年Kの自殺の意図は最後までわかりません
一応、真実らしいものが提示されますが、少年Kの自殺の理由は最後まで謎のままというのがこの作品の面白いところだと思います(もしかすると、作者は答えを提示しているのかもしれませんが…私は答えは提示されていないと思います)。
最後に、主人公である菅原拓が語る部分が真実?を語るパートとなると思いますが、私個人の感想では、主人公が語る部分の前に、とある理由から意識を失っていたヒロインである石川琴海がこの一連の事件について語る部分があるのですが、それはそれで真実を語っているように思えます。むしろ、主人公が語ったものよりも、整合性がとれているように思える部分もあって、どれが正解なのか正直わかりません。
しかも、主人公の菅原拓が最後に語る部分を読んでみると、少年K自体が天才であるという特性から、いじめから自殺までの流れを少年K自体がコントロールしたのではないかと思える点もあります。
真相らしいものは提示されてはいるものの、ヒロインのためににいじめを通じて教室に革命を起こそうとした主人公菅原拓の計画により少年Aが自殺したのか、いじめる側といじめられる側の協力により革命を起こそうとしたのか、いろいろな答えを想像してしまいます。
結局、答えは(作者の意図するところかどうかは別にして)私の中で謎のままですが、それはそれでいろいろな解釈ができて読後も楽しい空想にふけいることができます。
③まとめみたいなもの
と、感想は以上です。
正直、私の中ではかなりツボになった作品で、あっという間に読み切ってしまいました。
次巻があるのか、作者が別の作品を書かれるのかはわかりませんが、作者の次回作も追いかけてみたいなと思います。
萌え要素、最後はすっきり爽快というような内容ではなく、どちらかというとバッドエンドみたいな終わり方なので、ライトノベルにそういうのを求めていないという方にはちょっと向かない感じはしますが…
ただ、切ない中にも救いのある作品だと思いますので、興味があるようでしたら、読んでもらいたい作品だなと思いました。
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