スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) | |
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宝島社 |
「この子にしてあげたいことがあるんです」
「なに?」
「僕の作ったスープを毎朝食べてほしい。最愛の人にもらった温かなスープと、家族一緒に食べる朝ごはん。この二つをこの子に与えたいんです」
さてさて、書きたくなった時がなんとやら。読みたくなった時がなんとやら。
といわけで?、書店で平積みされていた『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』を読んでしまったので、感想を書きたいと思います。
食べ物系の小説というといろいろと読んできましたが、ミステリーというと、『禁断のパンダ』(著:拓未司)以来というとうと、何年ぶりだ?という感じですが、おいしそうな謎解きがしたくなってので手を出してきました。
果たして、おいしそうなスープとミステリーは見事に融合するのか?以下、私の感想になります。
①ストーリの概要みたいなもの
店主の手作りスープが自慢の人気店、スープ屋「しずく」には秘密がある。それは、広告も告知もすることなくひっそりと早朝に営業していることである。
そのことを知らず、偶然、通りかかったOLの理恵は店に入り、スープを飲み虜になる。
対人関係でぎくしゃくし、体調を崩していた理恵の悩みを店主である朝野が見抜き、スープと持ち前の洞察力で真相を明かし、悩みを解決していく。
悩みを持った来店客の真相を明らかにし、スープで悩み(主に恋愛絡み?)を解決させる店主麻野が経営するスープ屋「しずく」は今日も平常運転です。
②感想みたいなもの
・人は死なない、日常の悩みを解決するミステリー?
『このミス大賞シリーズ』と帯にあったので、殺人事件が起きるようなミステリーか?と聞かれたら、違います。
本作品は、登場人物の悩みをもとに、その悩みを解決することに重きを置いており、真相解明は客の悩み解決の手段として行われています。
そうした悩みに対する一つの回答として、登場人物に合ったスープが提供されるというものに感じました。
ただ、手法は叙述であったり様々な仕掛けはされていますが、謎解きものの謎としてはそんなに難しいものではなく、非常に読みやすい作品になっていると思いました。
・おいしそうなスープの描写については個人差あり?
スープ屋『しずく』という題名にもあるように、メインがスープのお店なので、本作品にも短編の数だけスープが出てきます。
中には、私が聞き慣れない「ボン・ファム」というようなスープも出てきます。
こういう、料理が出てくる小説に描かれる料理は「おいしそう!!、食べたい」となるのかなと思っていたのですが…。
私自身がスープ自体に特に愛着がないのか、味が想像できてしまうからなのか、作者の表現が合わない(もしくは私に知識がないのか)からわからないのですが、このスープおいしそうだなぁ。飲みたいなぁと思うことはほとんどなかったなと思います。
例えば一発目に出てくる「じゃがいもとクレソンのポタージュ」はクレソンの味が私自身にどういう味なのか表現できないもしくは知らないからか、クレソンの苦みなどの描写を読んでも「ふ~ん…」となるくらいで…。
なんとなくではあるのですが、スープやその他の料理の描写が上品な描写なので、その上品さが私には合わなかったのかもしれません。
ただ、読書メーターで反響が多数ということなので、読む人が読めばおいしそうなスープなんだろうなと思います。
③まとめみたいなもの
というわけで?、本作品の印象としては
①主に恋愛を軸に謎解きしているもので、本格ミステリというわけではない
②個人差はあるもののスープにこだわりがある描写が多い
③こんな親子いいな…
④露ちゃん可愛い
という印象があり、スープという上品な料理?の描写においしそうという感想は抱けなかったものの、登場人物の人間臭さが魅力的で、良い店主に良い客がついてくるものなんだなと思った作品です。
面白かったかと問われれば、面白かったとは言えないですが、面白くなかったかと問われれば面白くもないとは言えない作品で、個人的には感想、評価が難しい作品だなと思います。
本格ミステリで謎解きを楽しみたいという方には向かないかもしれませんが、肩を張らずに気楽に謎解きをしたいという方向けの作品だと感じました。