広島から東京へ家出をしてきた訳アリ主人公、光希は、コンビニをたむろしていたところ、足場工事の組み立て会社の社長に拾われる。
彼の能力は幽霊をみることができて話ができること。
そして、同僚には幽霊は見れないし話せないけども、幽霊に触れる、いや幽霊をシバくことができる先輩、頭島さんと、見た目ヤンキーでもコミュ力抜群の奥さんがいた。
仕事仲間の3人が、いろんな人から幽霊がらみの依頼を受けて解決していく、令和のゴーストストーリーです。
読んでいて、幽霊が怖いなと思うところはなく、主要登場人物の3人の掛け合いが爽やかな感じがするし、登場人物も基本的には世にいたら好印象の人が多いんじゃないか?と思うくらいに、良い人ばかりで、読みやすいなぁと思いました。
途中、私がミスリードなところもあり頭島さんのキャラがわかりにくいなぁとは思ったものの、読んでいて楽しいな、次どんな事件なんだろうと思いながら楽しく読みました。
そして、最後はあたたかな涙で終われて個人的には大満足という作品です。
なによりも、タイトルの『ヒマかっ!?Get a Life』が秀逸で、当たり前といえば当たり前ですが、物事は1つの側面しかないわけじゃない、物事のとらえ方はひとそれぞれというのがよくわかる作品だったなと思いました。
たとえば、今回出てくる「幽霊」、これは怪奇現象を起こしている要因になっているのですが、幽霊といえば、怖いとか、悪さをするとか、悪いイメージをする人もいるし、守護霊とか守ってくれるというようなよいイメージをもつ人もいます。
すべてはその人のとらえようということです。
当たり前といえば当たり前ですよね。
でも、私も含め、その当たり前ができないことの方が多いなと思います。
見た目や言動が怖ければ、その人は悪い人や怖い人だと思ってしまうこともあるし、〇〇人だからと聞くとバカにしたり、敵意を向けてしまったりします。
でも、よく考えれば、見た目や言動が怖いから悪い人と思うことや、〇〇人だから嫌いというのは、もう見えない幽霊を怖がっているのとそんなに変わらないなと思いました。
そして、本作で描かれているのは、実は幽霊の仕業かもしれないと思われる人間の怖さです。
主人公たちが問題を解決していく過程で、見えてくるのが実は見えない人間が一番怖いということだろうなと思いました。
たとえば、炎上や事件で報道されると湧いてくる誹謗中傷するSNSのアカウント。掲示板とかみてても思いますが、誹謗中傷を書いているのは実は生きている人間だという事実があります。
内容なんか見てると、生きている人間がやっているのか?やってることが悪い幽霊と変わらんやんって思うこともあります。
結局、相手が見えないところから何かをやってくるというのは、結局幽霊から攻撃されているのと変わりませんよね?と思いました。
そんな生きている人間の怖さも描かれつつ、見えている人間の温かさに気づく構成も私は好きです。
その温かさは、肌が触れ合う温かさであったり、心が触れ合う温かさであったり、様々な温かさを感じることのできる作品だなと思いました。
生きていればいろいろなことは起きるし、毎日苦しいだけかもしれない。
でも、温もりを感じられる何かがあれば、生きていけるような気がする。
そんな作品だなと思いました。
Get a Life!
※ブクログに掲載した感想を転載しております。
物事にはいろいろな側面があるし、人間は自分の思うような善意では生きてはいない、全て当たり前のことなんですが、ゴーストストーリーでこういう当たり前のことを気づかせていただいた作品でした。