定年って生前葬だな
どうしても仕事を辞めたかった。
ギャンブルの種銭稼ぎ、ギャンブルで作った借金返済のため、今仕事を辞められないと思いながら仕事をしていた。
土日の休みは突然の電話で出勤になり、午前様になるのはざら。25日連続勤務なんですよなんて笑いながらやってはいたが、全て残業代や休日手当が欲しかったというのもある。
しかし、ギャンブルを辞めると決意したときは、そんな仕事をで体を壊したくないという思いと、面白くもないのに無理にやっていきたくないと思うにつれて、1日でも、1時間でも早く仕事を辞めたかった。
そして、無事にやめることができた。
仕事を辞めた時には決めたことがあった。それは1ヶ月は次の仕事のことは考えないということだ。
借金はあるものの、なんとか利息だけは返済できるだけの退職金や手当もあったことから、一度休んでゆっくりと仕事をみつけようと思ったのだ。
仕事を辞める前までは1年間で気を抜けた休日は30日くらいしかなかったのではないか。
今思うと、五体満足でよく仕事を辞めることができたものだなと思う。
1ヶ月、何も考えずに仕事をやりたくなるまでのんびりできる。仕事を辞める前まではどれだけ待ち望んだことだっただろうか。
そんな休日に対する憧れや希望を抱きながら、仕事を辞めた私の楽しみにしていた生活は…たったの1週間で飽きてしまうという結果に終わった。
1週間くらいのんびりすると思うのだが、ブラック企業内でギャンブルの種銭稼ぎ程度にしか思っていなかった仕事でも、真面目に一生懸命やっていた証なのだろうか、仕事をしない生活というのは退屈だなと思ってしまった。
仕事はしんどいし、時にサボりたくなるもの。でも、仕事は私にとっては生活そのものだったのだなと思い知らされた。
今回読んだのは、内館牧子著の『終わった人』です。
作者の作品を読むのは初めてです。店頭でタイトルが気になったので読んでみたいなと思いました。
以下、感想となります。
1.定年は生前葬だな
「定年は生前葬だな」で始まる本小説。
主人公は東大卒、メガバンク勤めでバリバリの仕事人間です。会社の良いところまで出世争いに勝ち続けてきたのですが、最終的には敗れ、会社の子会社に出向させられ、出向先でも頑張るも会社に引っ張りあげてもらえず、最後は転籍を言い渡され、定年を迎えます。
そして、主人公の出勤最後の日から物語は始まります。
明日から出勤しなくても良い反面、仕事人間のエリートだった主人公はやりたいこともなくいのですが、日々仕事以外のいろいろなことにチャレンジしようとして、心の隙間を埋めようとします。
しかし、仕事人間として成仏しきれなかった主人公は仕事以外のことをやろうと思いながらも、プライドが高い主人公はどの趣味にも老人くささを感じ満足できません。
何をやっても物足りない日々を送る主人公が生活する様はまさに生きている実感のない日々なのですが、そんな物足りない日々を過ごしている中、ひょんな縁から仕事が決まります。
果たして、主人公は無事に仕事で日々を過ごし、成仏ができるのかというのがこのお話です。
まず、本書を読んで思ったのは、約30年後には私も主人公のように仕事を辞めることが生前葬だと思うようになるのかもしれないなということです。
私も仕事を辞める前に思っていたのですが、「この会社で働いて、定年まで働いて、自分は良い仕事をしたなと満足して辞めることができるだろうか」と思いました。
法律の世界で生きることに自信をなくして、なんとか自分の長所や短所を考えながら仕事を探して、本当にやりたいことから目を背けて、なんとなく仕事をして、なんとなく身につけたスキルを生かそう、前の会社よりも条件が良いだけの会社に転職して、興味すらない仕事を頑張って興味を持てるように仕事をする。
そして、気がついたらなんとなく退職して老後を過ごしている。
本作品の主人公はエリートで途中までは出世街道を走り抜けていた人でバリバリの仕事人間なので、今の私とは似ても似つかない人なんですが、プライドの高さや自分の体裁のために見栄をはる姿はわたしにも重なり、定年が生前葬だという始まり方は物凄く心に響くものがありました。
2.定年後も何をしたいのかを考えさせられました
「生涯現役」なんていう言葉があります。
しかし、私も遅かれ早かれ、主人公と同じように「終わった人」になる日が来ます。
それを定年というのかもしれませんし、健康の問題かもしれませんが社会的には必要とされない日々が必ず来ます。
私はまだまだ年齢的には現役でこれからという人間(だと信じています)ですが、仕事を2回辞めています。
2回とも仕事を辞める日には、「ああ、これで明日からこの会社に来なくて良いんだな。明日からはしばらくゆっくりしよう」なんて思いました。
次の仕事はとりあえず1ヶ月休んで、失業保険も3ヶ月後からは出るんだから貯金なども合わせてはんとしは余裕で生活できるだろうしなどと考えるわけです。
しかし、ゆっくりしようと思うのもつかの間、1週間もすれば仕事もしていない社会につながっていない日々が退屈だと思うようになりました。
数年あるいは数ヶ月働いて、しかも辞めたくて仕方がない会社を辞めた後ですらそんなことを考えてしまうわけです。
まして、働いている期間が何十年ともなれば、いくら老後はゆっくりしたいなんて思うことがあっても、ゆっくりとできる時間はすぐに終わり、仕事にいきたいなと思うものなのかもしれません。
しかし、定年後は余程、なんらかのスキルがないかぎり、自分のやりたい仕事のできる会社へ再就職なんていうのは難しいと思います。
だからといって、老後に新しい趣味を持つというのもなかなか難しいと思います。
老後といえばお金をどうするかという所ばかりを考えがちですが、退職後の過ごし方というのをどうするのかを考えることも非常に大切だなと感じることができました。
私も、今、士業を目指しているのも、やりたい仕事だというのもあるのですが、一生できる仕事だと思ったからです。
会社の組織にいてはどんなに自分が現役だと思っていても、年齢がくれば「終わった人」として遅かれ早かれつまはじきにされる日が来ます。
私の2回の退職後の感じだと、真っ当に次の会社で働き続けて定年までいたとしても、定年後だからといってゆっくりしたいとは思わないなと感じています。
おそらく主人公と同じように仕事に生きたいなと思うのではないかなと思います。
そして、一生懸命、最後まで仕事をしながら生きていくためにも、これから歩む道で頑張っていかないといけないなと、改めて思いながら本作品を読ませていただきました。
と、本作品を読んでの感想は以上となります。
本作品の主人公は物凄く実力のあるエリートさんなわけですが、ご都合主義なんではないか?と思うくらいに不運に見舞われます。
主人公にとっては退職後の成仏の過程が悲惨だなと思いましたが、その過酷さの最後に主人公がたどり着いた答えは、私もなんとなくわかるような気がしました。
どんな人生を歩んで来ても、死という着地点は誰も変わりません。
ただ、今の時代、平均年齢が100歳に突入する時代が来るかもしれないと言われる時代となってきており、退職後の時間は下手をすると現役時代と同じくらいの時間があるという時代がくるかもしれません。
その長い時間を過ごしていくために、退職後のことは今から考えていても遅くはないなと思います。
その自分が60代になったときのことを考えながら、あるいは主人公に自分自身を重ねながら読むと、私自身もどうしたいのか、あるいは今はどんなことをするべきなのかを考えさせられた小説だと思います。
どうしても仕事を辞めたかった。
ギャンブルの種銭稼ぎ、ギャンブルで作った借金返済のため、今仕事を辞められないと思いながら仕事をしていた。
土日の休みは突然の電話で出勤になり、午前様になるのはざら。25日連続勤務なんですよなんて笑いながらやってはいたが、全て残業代や休日手当が欲しかったというのもある。
しかし、ギャンブルを辞めると決意したときは、そんな仕事をで体を壊したくないという思いと、面白くもないのに無理にやっていきたくないと思うにつれて、1日でも、1時間でも早く仕事を辞めたかった。
そして、無事にやめることができた。
仕事を辞めた時には決めたことがあった。それは1ヶ月は次の仕事のことは考えないということだ。
借金はあるものの、なんとか利息だけは返済できるだけの退職金や手当もあったことから、一度休んでゆっくりと仕事をみつけようと思ったのだ。
仕事を辞める前までは1年間で気を抜けた休日は30日くらいしかなかったのではないか。
今思うと、五体満足でよく仕事を辞めることができたものだなと思う。
1ヶ月、何も考えずに仕事をやりたくなるまでのんびりできる。仕事を辞める前まではどれだけ待ち望んだことだっただろうか。
そんな休日に対する憧れや希望を抱きながら、仕事を辞めた私の楽しみにしていた生活は…たったの1週間で飽きてしまうという結果に終わった。
1週間くらいのんびりすると思うのだが、ブラック企業内でギャンブルの種銭稼ぎ程度にしか思っていなかった仕事でも、真面目に一生懸命やっていた証なのだろうか、仕事をしない生活というのは退屈だなと思ってしまった。
仕事はしんどいし、時にサボりたくなるもの。でも、仕事は私にとっては生活そのものだったのだなと思い知らされた。
終わった人 (講談社文庫) | |
内館 牧子 | |
講談社 |
今回読んだのは、内館牧子著の『終わった人』です。
作者の作品を読むのは初めてです。店頭でタイトルが気になったので読んでみたいなと思いました。
以下、感想となります。
1.定年は生前葬だな
「定年は生前葬だな」で始まる本小説。
主人公は東大卒、メガバンク勤めでバリバリの仕事人間です。会社の良いところまで出世争いに勝ち続けてきたのですが、最終的には敗れ、会社の子会社に出向させられ、出向先でも頑張るも会社に引っ張りあげてもらえず、最後は転籍を言い渡され、定年を迎えます。
そして、主人公の出勤最後の日から物語は始まります。
明日から出勤しなくても良い反面、仕事人間のエリートだった主人公はやりたいこともなくいのですが、日々仕事以外のいろいろなことにチャレンジしようとして、心の隙間を埋めようとします。
しかし、仕事人間として成仏しきれなかった主人公は仕事以外のことをやろうと思いながらも、プライドが高い主人公はどの趣味にも老人くささを感じ満足できません。
何をやっても物足りない日々を送る主人公が生活する様はまさに生きている実感のない日々なのですが、そんな物足りない日々を過ごしている中、ひょんな縁から仕事が決まります。
果たして、主人公は無事に仕事で日々を過ごし、成仏ができるのかというのがこのお話です。
まず、本書を読んで思ったのは、約30年後には私も主人公のように仕事を辞めることが生前葬だと思うようになるのかもしれないなということです。
私も仕事を辞める前に思っていたのですが、「この会社で働いて、定年まで働いて、自分は良い仕事をしたなと満足して辞めることができるだろうか」と思いました。
法律の世界で生きることに自信をなくして、なんとか自分の長所や短所を考えながら仕事を探して、本当にやりたいことから目を背けて、なんとなく仕事をして、なんとなく身につけたスキルを生かそう、前の会社よりも条件が良いだけの会社に転職して、興味すらない仕事を頑張って興味を持てるように仕事をする。
そして、気がついたらなんとなく退職して老後を過ごしている。
本作品の主人公はエリートで途中までは出世街道を走り抜けていた人でバリバリの仕事人間なので、今の私とは似ても似つかない人なんですが、プライドの高さや自分の体裁のために見栄をはる姿はわたしにも重なり、定年が生前葬だという始まり方は物凄く心に響くものがありました。
2.定年後も何をしたいのかを考えさせられました
「生涯現役」なんていう言葉があります。
しかし、私も遅かれ早かれ、主人公と同じように「終わった人」になる日が来ます。
それを定年というのかもしれませんし、健康の問題かもしれませんが社会的には必要とされない日々が必ず来ます。
私はまだまだ年齢的には現役でこれからという人間(だと信じています)ですが、仕事を2回辞めています。
2回とも仕事を辞める日には、「ああ、これで明日からこの会社に来なくて良いんだな。明日からはしばらくゆっくりしよう」なんて思いました。
次の仕事はとりあえず1ヶ月休んで、失業保険も3ヶ月後からは出るんだから貯金なども合わせてはんとしは余裕で生活できるだろうしなどと考えるわけです。
しかし、ゆっくりしようと思うのもつかの間、1週間もすれば仕事もしていない社会につながっていない日々が退屈だと思うようになりました。
数年あるいは数ヶ月働いて、しかも辞めたくて仕方がない会社を辞めた後ですらそんなことを考えてしまうわけです。
まして、働いている期間が何十年ともなれば、いくら老後はゆっくりしたいなんて思うことがあっても、ゆっくりとできる時間はすぐに終わり、仕事にいきたいなと思うものなのかもしれません。
しかし、定年後は余程、なんらかのスキルがないかぎり、自分のやりたい仕事のできる会社へ再就職なんていうのは難しいと思います。
だからといって、老後に新しい趣味を持つというのもなかなか難しいと思います。
老後といえばお金をどうするかという所ばかりを考えがちですが、退職後の過ごし方というのをどうするのかを考えることも非常に大切だなと感じることができました。
私も、今、士業を目指しているのも、やりたい仕事だというのもあるのですが、一生できる仕事だと思ったからです。
会社の組織にいてはどんなに自分が現役だと思っていても、年齢がくれば「終わった人」として遅かれ早かれつまはじきにされる日が来ます。
私の2回の退職後の感じだと、真っ当に次の会社で働き続けて定年までいたとしても、定年後だからといってゆっくりしたいとは思わないなと感じています。
おそらく主人公と同じように仕事に生きたいなと思うのではないかなと思います。
そして、一生懸命、最後まで仕事をしながら生きていくためにも、これから歩む道で頑張っていかないといけないなと、改めて思いながら本作品を読ませていただきました。
と、本作品を読んでの感想は以上となります。
本作品の主人公は物凄く実力のあるエリートさんなわけですが、ご都合主義なんではないか?と思うくらいに不運に見舞われます。
主人公にとっては退職後の成仏の過程が悲惨だなと思いましたが、その過酷さの最後に主人公がたどり着いた答えは、私もなんとなくわかるような気がしました。
どんな人生を歩んで来ても、死という着地点は誰も変わりません。
ただ、今の時代、平均年齢が100歳に突入する時代が来るかもしれないと言われる時代となってきており、退職後の時間は下手をすると現役時代と同じくらいの時間があるという時代がくるかもしれません。
その長い時間を過ごしていくために、退職後のことは今から考えていても遅くはないなと思います。
その自分が60代になったときのことを考えながら、あるいは主人公に自分自身を重ねながら読むと、私自身もどうしたいのか、あるいは今はどんなことをするべきなのかを考えさせられた小説だと思います。
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