徒然なるまま読書感想ブログ

日々読んだ本の感想ブログです。小説、ビジネス書、ライトノベルなど通勤中、休日に読んだ本の感想を自由に書いていきます。

『晴追町には、ひまりさんがいる。はじまりの春は犬を連れた人妻と』 感想

2015-11-07 12:21:49 | 一般文芸
晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と (講談社タイガ)
クリエーター情報なし
講談社



「ちゃんと、わかっとるけん……ありがとぉね」



 今回の感想は講談社タイガ創刊の第一弾タイトルたちの1冊、野村美月先生の『晴追町には、ひまりさんがいる。はじまりの春は犬を連れた人妻と』です。


 ちなみに、野村美月先生の本はライトノベルでしか読んだことはなく、一般レーベルでは初めてだなと思っていたら、初の一般レーベルだそうです。それを読んで、野村美月先生ファンの私は安心しましたとも(笑)


 今回、一番印象に残ったシーンを思い返してみても、冒頭の一発目のセリフはこれだなと思いましたので、こちらで。


 今作のヒロインのセリフと言えば、これだというのがあるのですが、ひまりさんのこのセリフが個人的には一番可愛らしかったなと…


 というわけで、読者の一思考はこのくらいにして本題に入りたいと思います。



①ストーリーの概要みたいなもの


 主人公は大学2回生の木村春近くん。彼はある理由から一人暮らしを決意する。しかし、一人暮らしを始めたものの、ホームシックにかかり、眠れない夜が続いていく。あまりにも眠れないため、ある日、真夜中に近所の公園に散歩に出かけた春近は、公園で白い犬を連れた人妻であるヒロインひまりと出会う。ひまりは春近に恵方巻を差し出したり、鬼ごっこを提案したりと不思議な性格の人妻だが、春近はその不思議な人妻に心を惹かれていく。
 春近はこの出会いをきっかけに大学や晴追町で出会った人々と関わりをもち、毎日を「特別な日」として過ごしていくストーリーです。


②感想みたいなもの


・一瞬、某めぞ〇一刻みたな導入で、これはまさか?と思います。


 ヒロイン、ひまりさんがいつも連れている白い犬は「某め〇ん一刻」の惣一郎さみたいにひまりさんの主人の名前が付けられています。その名も「
有海さん」。


 ということは、当然ストーリー上、未亡人なのかと思いきや、実はそうではないというオチまでついてます。旦那の有海さんについてはところどころで出てくるのですが、実際何者なのよ?という感じのご主人だという点は最後まで明かされておりません。ご本人登場は本当に1回きり?なので。

 

 ただ、終わり方からみてある程度売れれば続きが出そうな雰囲気で終わっておりますので、その辺のくだりもありそうな予感はあります。なんというか、ひまりさんが飼っている犬には本当にいろいろな推理ができるので、ひまりさん含め謎が多いお話だったなと思います。



・野村先生らしい独特な登場人物たち


 主人公は好きになる人はなぜか人妻(結果的に人妻になる人も含む)というくらいに人妻好き、ヒロインは謎の多いクリーニング屋のパートタイマー、○○好きの同回生に、一歩間違えればストーカーな先輩、こわもてでツンデレの幼稚園の園長先生などなどなかなかに独特な方々が勢ぞろいな感じです。この辺はいつもの野村先生の作品だなと…


 ただ、短編集みたいなお話というのもあるからか、野村先生らしいパンチがきいたとがった登場人物はいなかったなと思います。晴追町は今日もいい人たちであふれかえっています。



・毎日が特別な日


 2月3日は何の日?と聞かれれば、節分と返ってきますが、同時に「不眠の日」でもあるそうです。これは語呂合わせで2と3が付く日は「ふ(2)み(3)ん」の日だそうです。


 主人公春近とヒロインのひなみさんが出会ったのも、主人公がまさにその眠れない夜に公園に散歩に出かけた日になっています。そして、2月4日は立春と、季節の変わり目でもあるため、まさに「春」が「近」づく特別な日でもあるわけです。


 ヒロインのひなみさんはそういう毎日の○○の日に詳しく、「毎日が特別な日」ということで幸せを振りまいています。そして、その「特別な日」こそが、各短編の重要なキーワードになっており、読んでいてほっこりとしました。



・ヒロインは汚れたものを綺麗にするプロ


 前述したように、ヒロインはクリーニング屋でパートの仕事をしています。

 
 そして、各章で主人公が服を汚してくるたびにヒロインへクリーニングを依頼します。この主人公のクリーニングの依頼が話の転換点となっており、主人公のひまりさんへの


 「汚れは落ちますか?」


の問いかけに対して


 「やってみましょう」


 と返すことにより、今まで曇っていた話がすっきりし綺麗になっていくという仕掛けになっているように感じました。本当はこのやり取りがこの物語を象徴するセリフなんだろうなと思うのですが…。ただ、ヒロインがクリーニング屋でバイトしているという設定は本当に転換点で生きているだけで、それ以外は特に生きてこないんでもうちょいどうにかならなかったかな?なんて思ったりします。


 
③まとめみたいなもの


 と、感想らしいものは書いたような気がするのですが、読んで思ったのは①なぜだかわからないですが読んでいてほっこりする、②巴崎さん可愛い、③ヒロインの方言が可愛いと野村美月先生らしい可愛らしいキャラクターが出ていたり、読んでいて温かな気持ちになれる作品ではあると思います。


 ただ、ヒロインの役割が①謎、②転換点、③問題解決の提示というもので、それぞれがバラバラの要素のため、ヒロインにいろいろと詰め込み過ぎている感じがしました(①については、連れている犬の有海さんが印象的。②についてはクリーニング屋のバイト。③については○○という特別な日)。この点はもやっとしたような気が個人的にはしています。


 ただ、何とも思っていない平凡な平日に、○○の日といういろいろな記念日などを持ち出して特別な日に変えてしまう、いや、毎日を特別な日として過ごしている晴追町のひまりさんは本当に奥さんにしたら楽しい人なんだろうなぁと思えるくらいには気に入っています。


 ほぼ山もなく谷もないお話ですが、ちょっと一息、という感じの読書を楽しめたなと思っています。
 
コメント
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