Ｒｅ．１９９８．８．２１

横浜１７回　一丸の底力

３時間３７分、一振りが決めた

もう、ガッツポーズをする気力さえ、残っていなかった。
延長１７回、田中雅をカーブで三振に仕留めた横浜の松坂は、
両腕をだらりと、下げて下を向いた。

「野球人生で一番苦しい試合でした。」
その言葉に、わずかな誇張も含まれていない。

ＰＬ学園のすさまじい粘りだった。１１回
１点を勝ち越したら、追いつかれる。
１４,１５回は得点圏に走者を送りながら、上重にかわされた。

１６回には、再び１点を勝ち越したが、また振り出しにもどされてしまう。


「いい加減」にしてくれ。
松坂の心の叫びだ。

なえそうになる気持ちを奮い立てることができたのは、
仲間たちがかけてくれる言葉だった。
「いつか、必ず点をとってやる。抑えることに集中しろ。」
捕手の小山が言い続けた。

試合を終えた、松坂が振り返る
「ＰＬ学園の強さは特別です。自分たちでなければ、
　勝つことはできなかったでしょう。」

松坂は「自分たち」の
「たち」に力を込めて話した。

（朝日新聞　１９９８年８月２１日付　スポーツ欄より）

１０年前、甲子園で激闘のあった日
北京でオリンピックの公式競技から外れる
ソフトボールの決勝が行われた。

昨日のアメリカ、オーストラリア戦で３１０球
そして、再びアメリカ戦で９１球

ソフトボール、日本のエース上野選手にとって
歴史に残る大熱戦を演じてくれた。

甲子園、多くの球児にとって高校野球の最後の舞台
負ければ、高校野球が終わる

オリンピック、4年に1度　日本代表として
闘うことのできる最後の舞台
負ければ、2度同じ舞台に立つことができない。

アテネから背負ってきた日本のエースの立場

野球やソフトボールでは、
ピッチャーが頑張れば、キャッチャーを除く
残りの守備7人は、ボールが飛んでこないかもしれない。

外野、内野手から見れば、ピッチャーと打者だけの対決にも見える。

これを１８０度、回転させてキャッチャーから見ると
視界には、ピッチャーを含めた守備陣８人が見える

一人ぼっちのマウンド
でも、後ろにみんながいるという安心感

自分１人で勝つのではない
自分たちで勝ちに行くということ

上野選手は金メダルを勝ち取っていった。

「日本のみんなで勝ち取った勝利です。」

エースは、最高の笑顔で最後の舞台を演じきった。