先日、仕事館へミーティングに向かう途中の新大駅の中で一組のカップルに出会いました。
駅に入ってすぐ、彼らは僕の目に飛び込んできました。五月の初め、暖かくなってきたとはいえ、朝夕はまだ冷えるかな、って時に彼女のほうが思いっきり足を露出していたからです。
彼らは別れ話をしていました。
しかし、二人の間には明らかに異質の空気が流れているように感じました。彼はいすに座りながら今日の晩飯どうしようって感じで頭を抱え、彼女のほうはこっちが恐くて泣き出してしまいそうなくらいの負のオーラを彼に向かって出していたのです。
失礼ながら僕は彼らから目が離せなくなってしまいました。彼女は今にも彼にくってかかり、アントニオ猪木並みのビンタを彼にぶちかますのでは、と僕が勝手に思ってしまうほどに顔が怒りで引きつっていたのです。
しばらく、彼らの間には重い沈黙が流れました。
先に沈黙を破ったのは男のほうでした。彼女に向かって一言二言話しかけ、その顔に若干の変化を見た彼は目を背け、再び黙ってしまいました。彼の言葉を聞いた女は、最初こそ怒りの色を強めましたが、すぐに、いままで自分が発した負のオーラを全て自分が吸い集めたかのように、小さくしぼんでいきました。
多少の間をおいて、電車が来ました。
男が立ち上がり、電車に乗り込んだ瞬間、バックに女の手が伸びてきました。
「マジ無理だって」
「…」
この瞬間、僕は全てを悟りました。そっか、こいつら遠距離なのか、と。
GWを利用して男は新潟に帰省、もしくは遊びに来ていたのでしょう。そこでどちらかから、おそらく男の方から別れ話を切り出したんです。
きっと男には今住んでいるところに別の彼女がいて、今の彼女との関係を続けるのが面倒になってしまい、この連休はちょうどいい機会だ、ってことで話を持ち出したんでしょう。
もちろん彼女はそんなの認めたくないし、別れたくなかったのだと思います。しかし、男にはもう愛がなかった。そんな、どうしようもない気持ちを引きずったまま今に至り、結局駅まで見送りに来てしまった、ってとこでしょうか。
当然ながら電車はそんな二人を暖かく待ってることなんかできません。彼らを引き裂くかのような車掌の汽笛が鳴ったとき、男は電車の外にいました。
そんな彼らを横目に、僕は村上龍の69を読みながら、一人新潟へ向かったわけです。
以上、人間観察が趣味の金曜担当、妻夫木聡でした。
一人でいるときより二人でいるとき、
喜びは増える一方で、悲しみは辛い一方ですね。
他人事では、あるけれど目が離せない場面だったんだね。
でも気をつけてくださいね。
「何、見てんだよ。」
とJOYJOBのメンバーも言われたことがあるらしいので・・・