空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

音楽劇「魔都夜曲」(サンケイホールブリーゼ)

2017-08-10 23:37:24 | 観劇(タカラヅカ以外)
贅沢な空間でした!!

恐らく、森川久美の影響だとは思うんだけど、「魔都・上海」というのは、
私にとってのキラーワードである。
上海に限らず、中国近代史全般(阿片戦争~日本の敗戦あたりまで)が、なぜか
大好きで(もはや前世で何かあった、としか思えないほど・笑)、
学生時代には自分でも上海に旅行したし、映画とか小説とかマンガとか、見つけると見てしまう。
で、この公演も、「あ、チケット取れる!」で即決してしまいました。

【魔都夜曲】

同じ日の別の予定から間に合わないんじゃないかとヒヤヒヤしましたが、ギリギリセーフ。
開演前から生バンドでコンサートが始まる、贅沢な構成です。
歌っているのはクラブの歌手役の秋夢乃さん。劇団四季におられた方ですね。
さすがの歌唱力、そして(当たり前なんですが)北京語と日本語のバイリンガルで役柄にぴったり!
コング桑田さん、橋本さとしさんの素敵な歌も加わり、開演します。

主演・藤木直人さんの役「白河清隆」は、近衛文隆をモデルとした役。
……と言うと、どうしても、同じ人物を主人公に据えた、劇団四季のミュージカル『異国の丘』を
思い出してしまいますね。(あちらでは「九重秀隆」でしたが)
近衛文麿の嫡男として、日中戦争の和平工作に奔走し、失敗して前線に送られ、
抑留先のシベリアで没した悲劇のプリンス。

ちょっと気になったのは、李香蘭とか川島芳子とか甘粕正彦とかは実名OKだけど、
近衛文隆はいろんなフィクションで実名で登場させるのNGなのかな~というのが。
遺族が、というような配慮もあると思いますが、
李香蘭に至ってはつい最近まで御本人が健在だったわけで。
(朝ドラとかでも同じ難しさはありますよね。
「広岡浅子」は「白岡あさ」になるけれど、五代様(五代友厚)は実名登場だったし。)
まあこの作品においては、他にも、服部良一が「鹿取良治」として登場してるし、
(服部良一が当時上海のクラブで弾いていて、李香蘭とセッションしたのは史実らしい)
ヒロインの「周紅花」も鄭蘋茹(テン・ピンルー)がモデルだろうし、
別に批判というわけではなく、線引きはどこにあるのかな~というのが気になったのです。

……と思ったのは、結構予備知識いるんじゃ?っていう小ネタが色々あって、
それがいちいちツボだったから。
例えば何故、清隆が「プリンス」なのか。前総理の息子、っていうだけでは弱くて、
近衛家(今回だと「白河家」)が摂関家の家柄で、って背景が無いとわからないよね、とか、
ジャズクラブ「ル・パシフィーク」設立の話の中に「サッスーン」の名前が出てきて、
ってことは、このクラブは和平飯店(元「サッスーン・ハウス」)の地下に(今も)あるあそこか!とか、
川島芳子が李香蘭のことを「ヨコちゃん」呼びしてたりとか(本名「山口淑子」を踏まえたあだ名)、
甘粕が自己紹介で「大杉殺しの甘粕ですよ」と名乗ってたりとか(関東大震災での大杉事件)、
まあ熱心な人ならググったら済むし、知ってたら知ってたで楽しいし、
こういう史実の隙を突く「ウソ」は大好物です。

もっとも、最後まで見れば、この物語が「近衛文隆」ではなく「白河清隆」でなければならなかった
というのはわかるし(ヒロインも然り)、
史実は史実として、清隆と紅花の2人にはもっとマシな未来が待っていたと信じたい。
川島芳子や甘粕にも、この程度の意趣返しは許されてほしい。
小説「ジョーカー・ゲーム」シリーズとか、織田裕二の映画「T.R.Y.」とか(古い)
好きな人には楽しめるオチだと思います。(つまり私は好き。)痛快。

キャスト感想。
藤木直人さん、この人は永遠の「青年」なんだなあ、と思いました。
いい年のはずなのに(禁句)「プリンス」に違和感が無い。
霞を食って生きていそうな浮世離れ感と、苦労知らずぶりにムカつきつつも惹かれてしまう魅力に
説得力がありました。
フィナーレではギターも登場!!

ヒロイン、マイコさん。
とにかくかわいい!! 遠目でも際立つ、美貌とスタイル!
そしてどこか硬質な感じがとっても魅力的でした。

小西遼生さん。実力者!
彼をちゃんと見ていないとストーリーに取り残されるのですが、素晴らしかった!

我らが壮一帆さん@川島芳子。
キーパーソンで、かなり美味しい役柄でしたが、これぞ男役!な実力を見せてもらいました。
李香蘭から「おにいさま」って呼ばれるのに違和感ないんだもん(笑)
「おねえさま」ちゃうんかい、というツッコミはあるけれど。
最後のチャイナドレス姿も美しかった~~。

山西惇さん(相棒の「暇?」課長ですな)。
2役やってる、ことを知らなかったために途中でやや混乱しましたが、
実直な籾井さんの悲哀も、飄々とした甘粕の食わせ物ぶりも、どっちも良かった。

松下洸平くん。ピアノも含めてカッコ良かった~。

この日の李香蘭は​浜崎香帆さん。説得力のあるかわいさ、そして歌も上手かった!!

「音楽劇」と銘打ってあるだけあって、生バンド最高。
秋夢乃さん、コング桑田さん、橋本さとしさん、春風ひとみさん、ああ、耳も目も幸せ。
そして村井國夫さんの歌まで聞けたーー!
(こっちは逆に2役かと思っちゃいましたよ。これは同じ役でした)

ミュージカルとは違うのですが(あくまでも「劇中歌」として歌うだけ)良い歌がいっぱい聞けました。
オープニングとエンディングで歌われる主題歌「オピウム・ラヴァーズ」も最高!
(「オピウム」って阿片のことだっけ…@『るろうに剣心』ヅカ版)
笑って泣いて、爽やかに帰れる、最高の夜でした!!
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