空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season鳥」

2017-08-04 22:54:22 | 観劇(タカラヅカ以外)
ステージアラウンド、初「登城」です。

生「髑髏城」は6年ぶり。
前作「花髑髏」はライビュで見て満足し(いや生で観たかったけれども)
期待に胸膨らませた今回の「鳥髑髏」。

阿部サダヲ・森山未來・松雪泰子と来れば、私にとっては10年前のミュージカル「キャバレー」
(個人的にはあの頃からずっと、未來君のMC役が見たいと思ってる。
ついでに、サダヲ氏のド・シリアスな芝居も見たいと思っている。)
今回は、歌って踊って、のエンタメ作品だと公言されているので、それも楽しみ~

ステージアラウンドはゆりかもめ沿線。
事前に聞いてはいたけれど、本当に、周りに何も無かった…!
パンフでいのうえさんも「早くコンビニできないかな」って書かれてるしね…。
劇場設備は面白かったです。客席が回転しちゃうから、座席に着いた時の「入り口」と、
休憩時点での「出入り口」が違う場所にあるのね!!
あと、トイレの構造も面白かったです。
宝塚大劇場と同じシステムだから慣れてはいたけれど、完全なる通り抜けにはなっていないから、
人が停滞するのが欠点かな。難しいな~。

さて、作品の話。
一言で言って、「リピーター向け」「一見さんに優しくない」作品だな、と感じた。
『ネタドクロ』という異名もあるらしいけど、私としては『裏ドクロ』という印象。
「正典」があった上で、それのパロディ、というか一ひねり、って感じ。
歌と踊りが増えた分、説明セリフとか説明シーンがカットされてるし、
「百人斬り」の場面も、斬鎧剣の扱いも、全て「元ネタ知ってるよね?」が前提になっていて、
……最低限、『花髑髏』(ライビュでも)か『ワカドクロ』DVDは見て来い、というスタンス。
それはそれで有りだと思うし、『花鳥風月』(+『極』が発表されましたが)の多バージョン
あるからこそ可能になった作品だと思う。そういう意味で、贅沢。
とにかく笑って笑って笑って、まあ関八州荒武者隊はやっぱり泣かされるんだけど、
贅沢な時間でした。


阿部サダヲ@捨之介。
「今までの捨之介とは異なる役になる」「『地の男』が強調される」と
事前に何度もアナウンスされ、実際、衣装も歴代捨之介とは全く異なる「忍び」姿。
ギャグとシリアスの切り替えの落差はさすがの阿部サダヲで、
惚れ惚れしつつ魅せられたのですが、一つ違和感を言うと。
「捨て」てないよね? この捨之介。
…いや、「捨てる」の意味が今までの捨之介とは違うのか。
能動的な捨之介という、新境地を見た。
捨之介って、「浮世の義理も昔の縁も、三途の川に捨之介」で、
過去を捨て、過去から逃れて生きようとしていたところを、
髑髏党騒動に巻き込まれてしまって……という「受け身」の印象だったんです、今までは。
それが、今回の捨之介は違う。
最初から、「天魔王の命を狙って」いる。
今回はあれだな、『ロード・オブ・ザ・リング』の如く、
信長の亡霊という禁断の、そして無敵の武器を自ら葬り去る、「捨て去り」に行く捨之介なのですね。
沙霧も無界も蘭兵衛も、捨之介に巻き込まれている。
そして、天魔王は逆に、捨之介が全く眼中に入っていないのも面白い。
これはこれで、「地を這う者たちが立ち上がる」というテーマに合致する感じ。

早乙女太一@蘭兵衛。
最高。
6年前から進化した、うつくしい人がそこにいた。
『ワカドクロ』の彼は、「蘭丸」だった。本能寺で信長を失ったままの、少年だった。
今回の彼は、「蘭丸」と「蘭兵衛」との間の断絶が見えた。
断絶がある故に、天魔王の執着も、極楽の切なさも際立っていた。
殺陣の美しさは相変わらず、その上で、「佇まい」の美しさも加わり、
息を呑む。
最期の場面の「反り」も素晴らしかったです。(宝塚の娘役並に反るよね…)
6年前の、触るだけで切れそうな鋭さも魅力でしたが、
6年経って、「色気」とか「儚さ」まで装備してくれて、非常に美味でございました。

森山未來@天魔王。
今回の天魔王、好みでした。
私は元々、「代償行為萌え」というのがありまして、
(「本当に欲しいもの」が別にあるのに…的な。源氏物語とか大好物)
そういう視点から見た、今回の、天魔王-信長-蘭兵衛の三角関係は、大好物でした。
(そのわりにキスシーンはあんまり萌えなかったんだけどね…)
萌えたのは蘭兵衛最期のシーンです。
なぜ、「人<ジン>の男」は「天魔王」を名乗ったのか。
信長になりたかった、のではなく、信長が欲しかった、のか。
なのに、彼が焦がれた「殿」…信長は、最期の瞬間に、彼を裏切った。
蘭丸に「生きよ」と告げた信長、人を愛し、慈しむ信長なんて、自分が愛した「殿」じゃない。
求めた「殿」を得られなかった彼は、信長に成り代わり、
自分が欲しかった「信長」に、自ら成ろうとした。
誰も愛したり慈しんだりしない。
だから、天魔王は、蘭兵衛を切り捨て、殺さねばならない。
彼が欲しかった信長は、蘭兵衛を個人として愛したりしない信長だから。
……いやー、好みでした。萌えました。
天魔王に救いがなくてね。
その上、全く眼中に入れていなかった捨之介に脚元をすくわれ、命を奪われる。
この天魔王は、髑髏城で死んだのだと思います。
『ワカドクロ』のサイコな天魔王も良かったけれど、今回の哀しい天魔王も良かった~。

そして天魔王と蘭兵衛の殺陣の素晴らしさったら!!
6年前も素晴らしかったし、今回も事前から散々「見所」とされてきたけれど、
がっつり2回も入れてくれたし。
蘭兵衛籠絡シーンの天魔王も色気ありましたね~歌も良かった。
ごちそうさまでした。

松雪泰子@極楽太夫。
どうしても蘭兵衛との年の差に引っ掛かるのですが(爆)
期待通りの太夫。
そして兵庫と少吉をあしらう様子の貫禄が素敵でした。

清水葉月@沙霧。
かわいい! やっぱり沙霧がヒロインだなあ。
彼女が決意するから、彼女を中心に「七人」がまとまるから、この物語は成立する。

福田転球@兵庫。
なにぶん、設定が一新されましたのでなかなか慣れなかったのですが、
さすがの安定感でした。よく笑った~~。
ラストに全部持っていくし。ずるい。
「兄貴」じゃなく「親分」になってしまう、のが笑いになる。

少路勇介@少吉。
う~~ん、設定がこうなってしまうと、あんまり意外性が無くなってしまうというか、
関八州荒武者隊が命懸ける動機も普通になってしまうのがやっぱり気になるんですが、
少路さんは文句なしに良かったです。
(でも鎌捌きが素晴らしいのも、若者なら「そりゃそうだ」にしかならんのだよね…
ラストに活入れに来るのもね。)

粟根まこと@渡京。
『アオドクロ』をゲキ×シネで見て以来の、念願の「裏切り渡京」です。
笑った笑った。
でも粟根さんは声がいいからなあ~~。聞き惚れる。

梶原善@狸穴二郎衛門。
名人芸ですね。この方の贋鉄斎(『アカドクロ』)も素晴らしかったけど、
ついつい見惚れる、聞き惚れる。

新感線メンバーだと、右近健一@妙声とか山本カナコ@生駒の歌が聞けて耳福だったのと、
村木仁@角丸によく笑わせていただきました。

そして、そして。
池田成志@贋鉄斎。
あんなの反則。ってぐらいの、独壇場。
一幕終盤の、捨之介との掛け合いとか、もうどこまで行くの~って勢いで。
二幕もそのテンションは健在。
前にも書いたけど、「百人斬り」のシーンがあんなギャグになっていいのか!?
(楽しかったから何でもOK!!)

シリアスな題材で、実力者たちが本気でバカをやる。
うーん、やっぱりこの作品は「ネタもの」だったのかなあ?(爆)

回転劇場の醍醐味は、フィナーレと退場時。
今回わりといい席だったのもあって、楽しんできました!
次回は「風髑髏」、それを支えに頑張ります。
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