空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

雪組「fff ~歓喜に歌え!~」「シルクロード~盗賊と宝石~」

2021-01-05 14:23:43 | 観劇(タカラヅカ)
だいきほコンビフォーエバー。

11ヶ月ぶりの宝塚大劇場。
1回だけ見られる、その幸運に感謝しながら、サヨナラ公演を見てきました。
コロナ禍では初めて来たので、劇場の変わりぶりにまず驚く。
女子トイレの鏡(もともとは化粧直し用)の下に全部水栓がついていて、手洗い場が5倍ぐらいになっていたのに一番驚いた。
11ヶ月も空いたのはいつ以来だろう?(産休より空いた・笑)
そして、雪組さんの大劇場公演も1年ぶりなのだ。
(1年前の「ワンス・アポナ・タイム・イン・アメリカ」はチケットも獲れず、まだ子どもを預けて行ける状態でもなかったので観劇はあきらめたのだった。だから見に来るのは「壬生義士伝」以来!)
この1年、本当にいろいろあった。
久しぶりにプログラムを買う。
「本当だったら」夏に終わっていた公演。
それでも、卒業の晴れ舞台が実施にこぎ着けられたことを、まず言祝ぐ。
あとは、千秋楽までとにかく無事で、健康で。

だいきほコンビの人気は凄まじく、平日でも立ち見が出る熱気ぶり。
開演アナウンスでの大拍手。

【fff-フォルティッシッシモ- ~歓喜に歌え!~

開演アナウンス聞くまで、ff(フォルティッシモ)だと思い込んでました。
fがもう1個多いのね。そしてそれこそが、話のテーマで。

伝説のトップコンビの退団公演にしてウエクミ先生の待望の新作は、
ベートーヴェンが「第九」を書くまでの物語。
だいもんがベートーヴェン(ルードヴィッヒ=「ルーイ」)、きいちゃんの役名は「謎の女」、
咲ちゃんがナポレオンで、翔ちゃんがゲーテ。
あーさの役はルーイの親友で、その奥さんが、ひらめちゃん。
予備知識として入れられるのはそれぐらいかな。

話、難しすぎません?(笑)

狂言回しは、死せる作曲家3人。
ヘンデル@まなはる、テレマン@縣くん、モーツァルト@みちるちゃん。
「神様のものだった」音楽を「人間(主に王侯貴族)のもの」に「おとしめた」として、
3人は裁きを待っている。天国へ行けるのか、地獄落ちか、音楽家の罪の有無は、
後進であるベートーヴェンがどんな音楽を生み出すかにかかっている――
(教会音楽しか作らなかったバッハはさっさと天国に行った)
と、ケルプ(智天使)@ヒロさんに告げられた3人は、現世でのベートーヴェンを観察することになる。
壮大な交響曲(「英雄」)を完成させ、飛ぶ鳥を落とす勢いのルーイ。
が、彼の音楽のあまりの「うるささ」(音量が大きい)に耐えかねた死せる音楽家たちは、
ルーイの耳に雲を詰め込み、彼の聴力を奪ってしまう……
ここまでがプロローグ。

大丈夫? 観客ついて来られてる?(笑)

この3人の死せる音楽家たち、肖像画や彫刻となって舞台上で細かく動いていて、
特にモーツァルトはマリー・アントワネットとやり取りしたり、
宮廷楽長のサリエリ@あす君に悪態をついたりとか、ここだけでも小ネタ満載で目が足りない。
…うっかりそちらに目を奪われていると、複雑でダイナミックな本筋に置いて行かれる。

ナポレオン時代のヨーロッパ情勢もちゃんと出てくるし、
毎度のことながら予備知識が要求される。
ベルばらだけでも何とかなるけど、『ナポレオン』は見ておいた方がいいかもなあ。
メッテルニヒ@レオ君が美しすぎて「こんな美形なメッテルニヒでいいの!?とうろたえましたw
タレーランも出てくると面白いかなあと思ったけど、『ひかりふる路』にいたからねえ。

聴力を失い、恋人ジュリエッタ@夢白あやちゃんにも去られ、失意のルーイの前に、
謎の女@きいちゃんが現れる。彼女はルーイにしか見えないが、
彼女が通訳の役割を果たしてくれて、ルーイは周囲の状況が飲み込める。
彼女と対話しながら、ルーイは不幸な生い立ちを振り返り、
革命の英雄ナポレオンへの熱い思いを語るが、その一方的な熱情は、
ナポレオンの皇帝即位によって裏切られる。
(戴冠式の超豪華衣装、100周年の時にちえさんとねねちゃんが着てたやつだよね!
 もう7年前か~とめっちゃ回顧モードに入る。)

「謎の女」はトート(エリザ)? アマデ(『モーツァルト!』)? と重いながら見てたら、
「おまえは俺の『才能』か?」「違う!」というやり取りがあって、また笑ってしまう。

ヒロインが概念なのに加えて、
ルーイの少年時代@野々花ひまりちゃんと青年時代@彩海せら君)、
希死念慮を象徴するウェルテル(ゲーテ作品の登場人物)@諏訪さき君、
更にはルーイの情熱の象徴「小さな炎」@ひーこちゃん(ダンス凄かった)と、
舞台上に「現実世界の人物」「死せる狂言回したち」「ルーイの脳内要素の象徴」が混在していて、
これ、分からない人には本当に分からないんじゃないかと危惧していたら、
やっぱりそういう感想は聞きました(笑)

ウエクミ先生やるなあ。
何よりも、きいちゃんへの信頼感が凄い。
歌ってしゃべることで、世界をさーーっと創り上げてしまう。
だいもんとの掛け合いはクスッと笑わせながら、デュエットは相変わらず素晴らしいし。

ナポレオン@咲ちゃんは歴史的事実として存在しながら、
ルーイの脳内での対話相手でもあり…って、
つまりヒロインと二番手が両方「概念」なんだよなこの作品。
ロシアで冬将軍に敗北した後の、ルーイとの対話場面はとっても良かったです。
『黒い瞳』の、主人公とプガチョフのそりのシーンを彷彿とさせて。
咲ちゃんは正統派ヒーローが似合う。これからの雪組をよろしくお願いします。

ゲーテ@翔ちゃんは、ナポレオンへの片思い破れた後のルーイの恋人(笑)
こちらは想像上の人物ではなく、ルーイにとって耳の痛いこともちゃんと言ってくれる人。

あーさ&ひらめちゃん夫婦は、ルーイの心の支えであると同時に観客の癒やし。

そしてだいもん。
怒って苦しんでのたうち回って絶望して…「見たかっただいもん」だ。
だいもんの歌は、もちろん「歌唱力」が素晴らしいんだけど、
芝居歌として感情が乗せられた時に爆発力を増す。
だいもんのラストにふさわしい役柄だった。

終盤、歌の力で物語が加速する。
きいちゃんの、「謎の女」が正体を明かす独唱で物語の方向性が初めて明らかになり、
その上での、ルーイが書き上げる「第九」=「歓喜の歌」がカタルシスとなる。

そして、ラストの興奮と熱狂。

いやあ、物語のクライマックスと、サヨナラ公演としての泣き所が同時に来る作劇が素晴らしい。
(ほら…何とは言わないけど、プログラムで大泣きしたのがクライマックスだったなーな某作品とか、
ストーリーは「それはさておき」で、それとは無関係のエンディングだけで泣かせにかかられた某作品とか、
いろいろあったからねえ…遠い目)
ジェットコースターのように揺さぶられた感情がきれいに着地して、
気持ちよく大泣きできました。これを「カタルシス」と言う。
だいきほブラボー、雪組さんブラボー、ウエクミ先生ブラボー。

だいきほのコンビ作品だと、お披露目の『ひかりふる路』が好きすぎて
(これは宝塚のオリジナル作品の中でも一番好きかも知れない)なかなか1位を更新できなかったのだけれど、
ラストにしてこれが1位になったかも(サヨナラ加点含む)。
しかし、だいきほ作品は歌が難しすぎて再演かなり困難だよねどれも。
それぐらい傑出した「歌」のコンビを、生で見られて幸せだったと思います。


【シルクロード ~盗賊と宝石~

お芝居でお腹いっぱいなのに、この上ショーまで見られていいのかしら、という感じ。
ショーの作者は、生田先生(いっくん)。
そう、「だいもんを愛しすぎている」ことに定評のある、生田先生。

お披露目が『ひかりふる路』で、退団が『シルクロード』。
生田作品に始まり、生田作品に終わる、だいもんのトップ人生。
両思いで良かったねえ、みんな(観客も)幸せだもんねえ、と思いながら見ていました。

盗賊@だいもんと宝石@きいちゃんが、時空を超えてめぐり逢い続けるストーリーショーなので、
フィナーレになるまではサヨナラ色は薄め。
次期トップコンビの咲ちゃん&ひらめちゃんの場面もあり、
黒燕尾ではだいもんが咲ちゃんにセンターポジションを譲る場面もあり、
(これ、かつて水さんが桂ちゃんに対してやりたくて、千秋楽にアドリブでやったという…!)
組内引き継ぎの幸せな形を見る。

あーさのシャフリヤール王が美しくて。
冷酷な役をやらせたら絶品ですねえ、あの美貌。

圧巻は、上海の場面。
きいちゃんが超絶ラップを歌い上げる中(凄かった…)
だいもんを中心として、赤衣装のグループと青衣装グループのダンスバトル。
(プログラム見たら「紅幣(ホンパン)」と「青幣(チンパン)」って書いてあった。オタクめ!)
そう、生田先生のデビュー作にして、だいもんとの出会いの作品、
『BUND/NEON上海』のオマージュ場面! ※主演はまぁ様です。
(このブログでもさんざん書いてますが)私にとって「魔都・上海」はキラーワードなので、
見に行けなかったけれどスカステで捕獲して見ました。
千秋楽のカーテンコールで、キャストから「先生も!」と呼ばれて舞台に上がっていた生田先生。
(トップになったまぁ様とも『Shakespeare』で組んでいますが)
『…上海』から始まった物語が、上海で完結する。

そして「盗賊と宝石」のストーリーの締めくくりは、超絶歌唱に圧倒される。

白衣装のデュエットダンスはしっとりと「卒業」の空気を演出し、
「おまえの最後を俺が奪おう 誰にも渡さない」という、すさまじいまでの愛の言葉に送られて、
稀代の歌ウマコンビに別れを告げました。
翔ちゃんも、ひーこも、退団者みんな、どうか幸せになってください。

繰り返しになるけれど、千秋楽まで皆が健康で、無事に公演が行われることを祈っています。

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