空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

ゲキ×シネ「蛮幽鬼」

2010-10-09 22:32:03 | ゲキシネ、舞台中継

待ちに待った公開です。

すっかり慣れてきたゲキシネですが、今回は1年前に生で見て、はまりまくった作品。
大好きな大好きな物語。

まだ色々と記憶は鮮明で、「ああ、そうだった、そうだった」と思い出しながら見ていました。
しかし大画面で見る稲森いずみ@美古都の美しいこと!
特に1幕ラスト、喪服で登場したときの凛とした美しさは息を呑みました。

堺雅人@サジの笑顔の物凄さ。
笑顔の裏の狂気。笑顔の裏の憎しみ。
同じ表情で、なぜこんなに感情を演じ分けることができるのか。

上川隆也@土門は、とにかく目が効く。
…でも生の舞台で感じた圧倒的な存在感や狂気のエネルギーは、
映像だと少し薄かったかな。生で見られて本当に良かった。

早乙女太一@刀衣はとにかく美しい!
あの殺陣は、舞台だとワイヤーアクションに見えたけど、映像だと特殊効果にしか見えない(笑)

橋本じゅん@道括は凄いなあ。映画館でも巻き起こる爆笑(笑)

ストーリー展開はわかっているので、後半のどんでん返しの連続も安心して見られて、
その分、ストーリーにしっかり入り込めました。
ラストはボロ泣き。

やっぱり、よくできたストーリーだ。
全部わかっていると、丁寧に伏線が張ってあるのがわかる。

そしてテーマの「復讐」。
言葉で「復讐は空しい」とか「憎しみは憎しみしか生まない」とかは一言も言わない。
でも、空麻呂と浮名を巡る怒涛の復讐合戦を見れば、
こちらには自然と、そんな感想がわいてくる。あの短い場面で。


舞台を見たときには何故か印象に残っていなかったセリフがあって。
最後、土門とサジが対峙するシーンの土門のセリフ。
「ここはまだ監獄島なんじゃないか。」
なぜ覚えていなかったのかわからない。でもこのセリフを改めて聞いて、
「蛮幽鬼」という物語の構造がとてもクリアに見えた。

勿論、壮大なスケールで多彩な人物が繰り広げる歴史絵巻でもあるんだけれど。
もう一方で、これは伊達土門(エドモン・ダンテス@『巌窟王』)という一人の男の
内面の物語でもあって。(あ、当たり前のこと言ってます。)

「監獄島に囚われている」というのは、
「復讐しか考えられなくなっている」という精神状態のメタファーだったのか。
土門はそこで、二人の人物と出会う。
「復讐を果たせ、人を殺せ」と唆すサジと、
「もういいじゃないか、別の世界で生きよう」と誘うペナン。
それぞれがちゃんと自らのバックグラウンドを持った独立したキャラクターなんだけど、
同時にこの二人は土門の精神世界の登場人物でもあった。
だから、サジはペナンを死に導く。復讐の邪魔をするもう一人の自分を殺してしまう。

サジを葬り、美古都の手にかけられて、初めて土門は言う。
「ああ、光が見えた。外の世界だ…」
彼が「復讐」という監獄から解き放たれるためには、それだけの過程が必要だった。

一回目ではわからなかった。見られて良かったー。

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