空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(光文社新訳文庫)

2010-02-27 21:13:15 | 読書
宝塚の原作、という認識で読み始めました(笑)

いやあ、長い戦いだった。
半年以上? 職場の図書館にご迷惑をおかけしましたが(爆)
全四巻プラス別巻、無事に読破しました。

結論から申しますと~(ルキーニ@東宝エリザベート編)
恐ろしいほど面白かった!!
のです。さすが世界文学。

読み終わるまでに宝塚版のDVDを5~6回は見直しましたが(笑)
あれだけのダイジェストにしちゃっても十分面白いほどに、
プロット自体が魅力的。
作中の表現を借りれば、疾走するトロイカのごとく、
ぐんぐんその作品世界に引き込まれる。

その上、そこに描かれる人間描写がものすごく興味深い。
「あなたは私のことをAだと思っているんでしょうが、私自身は本当はBなんですよ」
「あなたは私があなたのことをAだと思っているとおっしゃいましたが、私は…」
……これって『心の理論』だよな。
なまじ大学で心理学をかじったりしたために(修士までとってるくせに半可通)
色々考えられて面白い。
…反面、そこに足をとられて進まないこともしばしばでしたが。

個人的には「大審問官」のくだりは非常に面白く、一気に読んでしまいました。
光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』に出てきた、ナザレのイエスとピラトとの
議論を思い出したからかもしれない。
(いや、ドストエフスキーのほうが先なのは百も承知ですよ~)
あるいは宝塚の
♪大審問官 それは神をも裁く正義の合言葉~
が脳内に鳴り響いていたせいかもしれない(爆)

読むのが辛かったのは、やっぱりミーチャの辛い運命絡みの場面。
三千ルーブルを工面できずに翻弄されていたり、
裁判で冤罪に問われたり(結果がわかっているだけに…)
その辺りは読むスピードが鈍りました。


でもラストシーンはさすがのカタルシスで、
(第九のコーダに例えられていたのがよくわかる)
ここまで読んで良かった……!と実感できました。

そして何よりも、最後に付いていた、訳者・亀山氏による「解題」が究極に面白かった!!
列車内で読んでいたんですが、続きが気になって気になって!
目的地に着くのが残念に思ってしまうほどに。

実は、たびたび引用されていたバフチンの『ドストエフスキーの詩学』は、学生時代に読んでいて。
『罪と罰』(しかも抄訳)しかドストエフスキーを読んでいない、という浅学ぶりで、
それでも魅力的な本だったことだけは覚えているのですが。
「ポリフォニー」だの「カーニバル」だの、記憶から呼び覚ましながら読めて、幸福でした。
ジラールの欲望についての話も久しぶりに読んだ…


しかし宝塚版は、ざっくりダイジェストにしてしかもタカラヅカ用にあっちゃこっちゃ改変しながら、
うまいこと原作のテイストを残したな~と改めて感心しております。
「解題」を読んじゃうと違和感も残りますが、そこは解釈の違いというのもあるしな。

でも「解題」を読むと、つくづく、第二部が読みたかった…と恨めしくて仕方ない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« バンクーバーオリンピック・... | トップ | ミュージカル「カーテンズ」 »

コメントを投稿