空中楼閣―Talking Dream―

好きなものを徒然なるままに。

スタンダール『赤と黒』(新潮文庫)

2008-02-17 17:00:22 | 読書
『オペラ座』に引き続き、「宝塚作品の原作を読もう」シリーズですな。
次はサトクリフの『血と砂』の予定。

パリ行きの飛行機の中で(上)読了(ジュリアンと共に私もパリへ!)
帰りの飛行機と、親知らず抜歯のための病院で(下)読了。
(手術から生きて帰れないような感覚に陥りました…)

なかなかこの手の世界文学って手が出せてないんですよね。
だから恥ずかしながら初読です。

予備知識と言いますか、結末ぐらいは知ってる状態で読んでたんですが、
だからこそ後半結構辛かったです。

ジュリヤン(表記ママ)・ソレルという人物が、大好きになっていたから。
いやあ、もどかしいんですけどね。
真っ当にも生きられないけど、本当に打算的にもなれないツメの甘さが。
野心家で血も涙もないくせに高潔な魂の持ち主であるジュリヤンが。

第一部、レーナル夫人(表記ママ)との恋の駆け引きの部分では、
レーナル夫人に思いっきり感情移入して、ジュリヤンの言動に一喜一憂し、
神学校のくだりでは今度はジュリヤンに入れ込んで
腹を立てたり失敗に頭を抱えたりして。
わかるんだよね。彼の意図と、それがどうして通用しないのかが。

ヴァリエールに帰ってきてのレーナル夫人との2日間は、
レーナル夫人視点でも、ジュリヤン視点でも、ものすごく甘く幸せでした。

第二部の舞台はパリ。
ここで一気に読むペースが落ちる(笑)
ユーモアと皮肉を散りばめた上流階級の会話を読むのが大変で大変で
(読み飛ばしても何とかなった気がする)
高校世界史で習ったきりのフランスの歴史についての
曖昧な知識がそろそろ限界になってもきて。
「アンリ4世」「カトリーヌ・ド・メディシス」「サン・バルテルミの虐殺」という単語を見て
「ユグノー戦争」「ナント勅令」「ブルボン王朝」と関連単語は出てくるんだけど
カトリーヌとアンリ4世が系図上どういう関係になるんだっけとか
マリ・ド・メディシスってのもいたなとか(ちょうどルーブルで絵も見た)
うまく予備知識(曖昧)が整理できなくて随分混乱してきました。

いや、第二ヒロインのマチルド大好きなんですけどね。
この痛さが(笑)
自分は美貌にも出生にも頭脳にも恵まれた(実際そうだけど)特別な女性だという
山より高いプライドを持っていて、
ジュリヤンが押せば引き、引けば取りすがるこの難儀な性格が。
彼女が愛していたのはジュリヤン本人ではなく、
「非の打ち所の無い婚約者に飽き足らず、身分の低いジュリヤンの魅力を見抜いた
見る目のある特別な私(マチルド)」なんですよね。
でもジュリヤンのほうも、
「パリ一の貴婦人であるマチルド嬢に選ばれ愛された俺」を愛してるので
厄介ながらいいカップルなんじゃないかなあと思いましたが。
本文中では散々、マチルドの性格が「異常」だと強調されていましたが
むしろ現代だと共感されやすいんじゃないかしら。

すっかりマチルドに慣れてしまうと、後半で再登場したレーナル夫人の
純粋さと愚かさにびびりました(笑)
自分自身がキリスト教徒ではないので、神を心から信じてるレーナル夫人よりも
神の教えに懐疑的なジュリヤンやマチルドのほうがわかりやすいのもあるのか。


ラスト、ジュリヤンの死に対する二人のヒロインのそれぞれの対応が
それまでの彼女たちの描き方からすればさもありなんと納得させてくれて、
この話、実はハッピーエンドなんじゃないかと思いました。


宝塚の公演、まだチケット確保できてないんですが、やっぱり見たい…
(読んでる間、脳内ではマチルド=あすかちゃんだったんですがね。
 宝塚的には正ヒロインはレナール夫人だろうしなあ。)

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