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「映画 オッペンハイマー」の予習

2024-03-22 11:41:28 | 日記

「映画 オッペンハイマー」の予習

 むかし 二コラ・テスラの伝記映画を見て訳が分からなかったことがあった。フリーエナジーとかいうのでタダで電気呉れるんか、そんなうまい話あるんかとか疑問を感じているうちに、物語がどんどん進むので筋を追えなくなって入場料と時間を損した気になった。同じ轍を踏みたくないので今回はしっかり予習してから行く。

 私は新聞の死亡欄を読むことを趣味にしているが、オッペンハイマーの死亡欄には○○を研究中に研究室で亡くなったとわざわざ書いてあった。さりげないけど悪意のある書き方である。これは原爆製造をした人であるからであろう。

 大変な秀才で、若いころドイツの量子力学の創設者であるハイゼンベルグのもとで日本の仁科芳雄らとともに研究したとある。仁科も日本に帰ってから戦時中に原爆の研究をしたはずだから、仁科とはいわば兄弟にあたる。ハイゼンベルグもドイツに残って原爆の開発をしたのかどうかは知らないが、本人でなくとも別のヒトがやっていた可能性は高そうである。日米独が競争で開発して米国が勝ったということであろう。オッペンハイマーが他の人々より賢かったというのではなく、米国の物量が抜きんでて凄かったと言うだけではないのかと思う。

 その後、原爆の惨禍を見て悩むところがこの映画の見せ所になるはずである。ただし、西洋のヒトであるから悩み方は我々とは多分異なるはずである。我々は老荘の考えが少しは身についているからいざとなれば自分で自分をごまかしてしまうことができる。私が同じような立場になれば、「和光同塵」と大きく書いた額を部屋の中に掲げて気を紛らわせたりするであろう。または、「機械あれば必ず機事あり。機事あれば必ず機心あり。」の額になるかもしれない。ごまかすというのは、本来の老荘からは邪道であるがこの際はいい毒消しになるのではないか。

 しかし西洋のヒトである。しかも頭がいい。ずいぶんな悩みであったと想像される。そこの演技ができるかどうかである。その際の周囲の反応も日本とは異なるであろうが、見どころになるだろう。

 こうやって調べていくと、近代兵器または新しいモノはアメリカ発祥とばかり思っていたがその淵源はドイツにありそうなものも多い。ロケットはドイツが成功してソ連アメリカに広まった。コンピューターはフォンノイマンだからドイツのヒトがアメリカに渡って開発した。ハイゼンベルグ発明の量子力学は、あんまり実用化されなかったが最近は量子コンピューターとか言って脚光を浴びるようになってきた。他に目立たないけどアンモニアの合成もある。

 我が国の仁科芳雄は、その後つぶされそうになった理化学研究所を何とかしようと奔走したらしい。岡本理研ごむや圧力釜の製造で何とか糊口をしのいだとあるが、オッペンハイマーの競作として映画化すると面白そうである。仁科芳雄の悩みは、日本的な悩みであって我々は予習しなくても見ることが出来そうである。