映画 レミゼラブル
この社会派の文芸作品を、ミュージカルにするのは場違いな印象であった。ちょうど寿司にソースを掛けたような違和感がある。ミュージカルは恋愛とか別れとかの感情に訴えるものがよろしくて、これから社会をこう変えたいと考えているまじめな人が主人公ではどうもいただけない。この作品は、論理的に読んで批判する人賛成する人世の先を考える人いろいろだろうから、論理的なセリフが必要でこのように音楽に載せてはいけないような気がする。その意味では評判高いけど失敗ではないかと思う。同じ場面構成で考え抜かれたセリフを繰り出すのならいろいろ考えながら鑑賞できたと思う。
見ながら考えたことは、なぜこれでもかというほどしつこく「貧困」を描いたかということである。(空腹の人を結構な体格の俳優さんが演じたり、空腹の人がエライ馬鹿力を発揮したりするのはまあやむをえないとしてであるが。)おそらく原作のテーマは、「法とは何か」であったはずである。王様を無しにしたのであるから社会のお手本が法律になってしまうところで発生する問題点を列挙するというのが原作の意図ではないか。それを、貧乏だから革命やむなしの雰囲気つくりにしたいのか人々の貧乏を強調している。この時代の実際は知らないが、果たしてこうであったのか。
わたしは、映画の製作者監督には、現代の貧困と重ね合わせようとする意図があるのではないかと疑っている。髪の毛を売ったり歯まで売ったりするほどの貧困に相当するものがこれから起こるんですよと言いたのではないか。フランスの王室が極端なぜいたくをしたあとの国民の貧困をここまでしつこく描くのはなぜかとか、貧困の原因は重税だけではなく貨幣発行によるインフレだったんだろうなと想像しながら、この少し苦情を言いたくなる映画を見た。たぶん音楽だけ映像だけを楽しむ分には高い評価がつくであろうしそのことに異存はない。
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