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『殺人鬼がもう一人』 若竹七海

2025年02月11日 21時00分52秒 | ■読書
若竹七海の連作ミステリ短篇集『殺人鬼がもう一人』を読みました。
若竹七海の作品は、先月読んだ『暗い越流』以来ですね。

-----story-------------
都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。
二十年ほど前に連続殺人事件があったきりののどかな町だが、二週間前の放火殺人以来、不穏な 気配が。
そんななか、町いちばんの名家の当主・箕作ハツエがひったくりにあった。
辛夷ヶ丘警察署生活安全課の砂井三琴は相棒と共に捜査に向かうが……。
悪人ばかりの 町を舞台にした毒気たっぷりの連作ミステリー!
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光文社が発行する『宝石ザミステリー』等に連作された5篇に書き下ろし1篇を加えて、2019年(平成31年)に刊行された、東京郊外の架空の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘(こぶしがおか)を舞台とした連作ミステリです。

 ■ゴブリンシャークの目
 ■丘の上の死神(『母さん助けて』を大幅改稿の上改題 )
 ■黒い袖
 ■きれいごとじゃない
 ■葬儀の裏で
 ■殺人鬼がもう一人
 ■解説 千街晶之

都心まで1時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘……20年ほど前に"ハッピーデー・キラー"と呼ばれた連続殺人事件があったきり、事件らしい事件もないのどかな町だ、、、

それがどうしたことか2週間前に放火殺人が発生、空き巣被害の訴えも続いて、辛夷ヶ丘署はてんてこまい……そんななか町で一番の名家・箕作一族の最後の生き残り・箕作ハツエがひったくりにあうという町にとっての大事件が起き、生活安全課の捜査員・砂井三琴が捜査を命じられたのだが……。(『ゴブリンシャークの目』)

アクの強い住人たちが暮らす町を舞台にした連作ミステリ……著者の真骨頂!!

東京都の外れにある辛夷ヶ丘市という架空の町を舞台とした物語……高度経済成長期に急ごしらえで誕生したこのベッドタウンは、時の流れとともに住民も歳を取り、家も老朽化が進み、人口流出が止まらない状況にある、、、

そんな息苦しいコミュニティ、調子の良いエゴイスト、空き家が増え寂れゆく町を舞台に展開される、ダーク・コメディ・ミステリでしたね……全6篇、愉しませてもらいました。

この連作で重要な役割を務めるのは、人材の吹き溜まりと揶揄される辛夷ヶ丘警察署生活安全課の警察官2人……不倫の噂が原因で左遷された身長180cmに届きそうな大女・砂井三琴と冴えない男・田中盛のダークなコンビも印象的でした、、、

資産家の老婦人が巻き込まれた引ったくり事件を描いた『ゴブリンシャークの目』、

市長選を巡って巻き起こる大騒動を描いた『丘の上の死神』、

で徐々にブラックでダークな展開に慣れてきて、

トラブルが押し寄せる結婚式の内幕を描いた『黒い袖』のコメディタッチのユーモア溢れる展開でひと安心できたのですが、次から再びブラックでダークな展開に戻ります。

ホームクリーニング社社員が見た悲劇を描いた『きれいごとじゃない』、

葬儀の裏で繰り広げられる陰謀を描いた『葬儀の裏で』、

で、さらにブラックでダークな味わいが深く濃くなり、

20年前に起きた"ハッピーデー・キラー"と呼ばれた連続殺人事件の真相を探るためフリーの殺し屋を続ける女・マリを描いた『殺人鬼がもう一人』で、物語の暗さは最高潮に! もう悪徳警官を通り越してますねー そして、救いのない家族の物語でもありました。

人間関係の距離が近く、家族や親戚といった家をめぐる事柄が発端や経緯に絡んでいるんですよね……それって、ついつい目を逸らしがちなのですが、現実にも当たり前に存在していていることなんですよねー 社会批判、社会風刺でもある作品なのかなと感じました、、、

イチバン怖いのは人間なのかもしれませんね……そんな苦みのある読後感の作品なのですが、伏線回収の巧さやポップで柔らかな語り口の影響なのか、嫌な感じは全然なくて、面白く読めました。

ぜひ、続篇を描いて欲しいなぁ……悪い奴等が蠢く辛夷ヶ丘ワールドに嵌っちゃいました。
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