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『素敵な日本人』 東野圭吾

2017年10月31日 20時53分00秒 | ■読書
「東野圭吾」のミステリ短篇集『素敵な日本人』を読みました。


「東野圭吾」作品は、先日読んだ危険なビーナス以来ですね。

-----story-------------
短編も、東野圭吾。
規格外のベストセラー作家、死角なし。

夢中になってイッキ読み。
寝不足必至のサスペンス。
それもいいけれど、読書は、もっと優雅なものでもあるのです。
意外性と機知に富み、四季折々の風物を織り込んだ、極上の九編。
読書の愉楽を、存分にどうぞ。
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2011年(平成23年)12月から2016年(平成28年)8月に雑誌に掲載された作品を収録した短篇集… 身近にありそうな物語から、ミステリ、SF、ファンタジーまでバラエティに富んだ作品が収録されており、気分展開にぴったりの作品でしたね。

 ■正月の決意(旧題:正月ミステリ)
 ■十年目のバレンタインデー
 ■今夜は一人で雛祭り
 ■君の瞳に乾杯
 ■レンタルベイビー
 ■壊れた時計
 ■サファイヤの奇跡
 ■クリスマスミステリ
 ■水晶の数珠



『正月の決意』は、「達之」「康代」の夫婦が地元の神社に初詣に行き、その神社の賽銭箱の前で倒れているこの町の町長を発見したことから事件に巻き込まれて行く物語、、、

町長は鈍器のようなもので後頭部を殴られており、正月早々から警察は事件として調べることなり、「達之」「康代」も第一発見者として半強制的に協力させられることに… 真相は事故なのか?事件なのか?

そして、事件は意外な結末を迎え、そのことが「達之」「康代」の運命を大きく変えることに… 年寄り(町長と教育長)の色恋沙汰が原因となった迷惑な珍事が、二人を助けることになるとは、、、

事件の真相と、二人の運命… 驚きが2度用意されている作品でした。


『十年目のバレンタインデー』は、小説家の「峰岸」が、大学のサークル関係で知り合った元恋人の「津田知里子」から10年振りにデートの誘いを受け、期待して出かけるが、そこで驚愕の事実を知らされる物語、、、

「峰岸」は、10年前に「知里子」から突然別れを告げられ、それ以来会うことはなかったが、「峰岸」はずっと「知里子」のことを忘れたことがなかった… 「知里子」から10年振りに突然の連絡があり、バレンタインデーの日にフレンチレストランで再会し、シャンパンでの乾杯後、おいしいフレンチ料理を愉しみながら、懐かしい話で盛り上がっていたが、しだいに話題は「峰岸」が月刊誌に連載中で休載予定の作品『深海の扉』と、大学時代に「知里子」と同じサークルに所属しており、理由がわからぬまま自殺した「藤村絵美」に移っていく。

「峰岸」が小説家として成功した理由と「絵美」の死、そして連載中作品の休載… これらが最後に線としてつながってきます、、、

バレンタイデーのプレゼントと思われた箱の中身と手紙は驚くべきものでしたね… あと、「知里子」の職業にも驚きでした。


『今夜は一人で雛祭り』は、娘の「真穂」の結婚相手のことで悩んでいる「三郎」の心情を描いた物語、、、

「真穂」の結婚相手の「木田修介」は、東北地方で大病院を経営する地元の名家のご子息であり、名家なりのしきたりの厳しさが、「修介」の両親からも醸し出されていた… 「三郎」は、そんな名家に嫁げば、「真穂」はきっと苦労するに違いないと心配だった。

なぜなら、「三郎」の母も非常に厳しい人であり、妻の「加奈子」に非常に厳しく接していたのを見てきたからだ… 「加奈子」は、何一つ文句を言わなかったが、きっと大変な苦労をしたに違いない、と「三郎」は思っていた、、、

「加奈子」の性格に似た娘の「真穂」も、きっと文句も言わずに耐えるに違いないと思うと、娘の将来が不安で仕方がなかったが、「三郎」「加奈子」の気持ちについて、「真穂」から意外な事実を知らされる… ほっ とさせられる作品で、雛祭りのトリビアが詰まっている作品でした。


『君の瞳に乾杯』は、場外馬券場にいた「内村」が6年振りに偶然出会った大学時代の友人「柳田」から合コンに誘われ、そこで出会った女性とほろ苦い関係と驚きのエンディングが描かれた物語、、、

「柳田」は、モデルとの合コンのメンバーが一人欠けたので、「内村」に参加してほしいと言ってきた… 彼女いない歴8年の「内村」は喜んで合コンに参加し、同じアニメ好きということで「モモカ」という女性と意気投合して、何回かデートを重ねることになった。

「モモカ」は、黒目を大きく見せるカラーコンタクトがよく似あっていて、まるでアニメの美少女キャラクターのようで、「内村」の好みだった… しかし、カラーコンタクト外した「モモカ」の顔を見て、「内村」は愕然とする、、、

ここからは予想できない展開でしたね… 見上たり捜査って、目で人を判別するもんなんですね、『十年目のバレンタインデー』と同じく、主人公の職業に驚かされました。


『レンタルベイビー』は、子育てを疑似体験するために赤ちゃんのロボットをレンタルできるサービスを利用した「エリー」が子育てに奮闘する物語、、、

「アキラ」は、仕事優先の人間のため、子育ての負担はほとんど「エリー」ひとりにのしかかり、1週間もした頃にはノイローゼになりかけていたが、時が経つにつれて子育てにも慣れてきて、「エリー」「パール」と名付けた赤ちゃんロボットに愛情さえ感じるようになってきた… そして、いよいよレンタル期間の終了の日を迎えるのだが。

このオチは秀逸… 独りの女性、名前等から、女性像を勝手に想像してしまっていましたが、まさかねぇ、、、

平均寿命が延びているから、あり得ないことはないのかな… 見事な叙述トリックに気持ち良く騙されました。


『壊れた時計』は、闇の周旋屋「A」から仕事の依頼を受けた俺が、被害者の壊れた時計を持ち出したことをきっかけんに事件が思わぬ方向に向かってしまう物語、、、

俺は「A」から受け取った鍵で、ある部屋に忍び込んだ… 依頼の内容は、白い彫像を盗んでくることと、犯行日時を特定できる手がかりを残しておくことだったが、帰宅したその部屋の住人と出くわしてしまったことから、逃走するために住人をタックルで倒し、その衝撃で殺害してしまう。

その住人は腕時計を持っていたが、その腕時計が壊れてしまっていた… 時計の針はちょうど殺害時刻を指してまま止まっており、これが犯行日時を特定できる手がかりを残すことになると思ったのだが、犯行日時と時計の時刻がぴったり合致していることが犯行時間の偽装工作と疑われる可能性があると思い、腕時計を外して持ち出すことに、、、

俺は腕時計の処理に迷った末、偶然見つけた時計屋で腕時計を修理… 正確に動いていることが確認できたことから、腕時計を死体の腕に戻し、警察が偽装工作を疑うことはないと安心していたが、数日後、俺のマンションに刑事が現れる。

腕時計は、タックルの衝撃で止まったんじゃなかったんですね… 疑われるのを避けようとして、逆に疑われちゃったという皮肉な展開でした。


『サファイヤの奇跡』は、父を事故で亡くし、母と二人暮らしの「未玖」と彼女が神社で出会った猫との数奇な運命を描いた物語、、、

「未玖」の家は裕福ではなく、お金の掛かる遊びはできず、そのために放課後も一人でいることが多かった… 「未玖」の願いはお金持ちになり、働きづめの母を少しでも楽にさせてあげることだった。

お金持ちになれるようにお願いに行った神社で、「未玖」は一匹の猫を見つける… 「未玖」は、その猫を「イナリ」と名付け、食べ物をあげるために毎日のようにその神社に通うようになるが、ある日突然、「未玖」の前から「イナリ」は姿を消してしまった… 「イナリ」は車に轢かれて死んでいたのだった。

しかし、このことが、「未玖」に奇跡を起こすことになろうとは… 大人になって再会した「未玖」「イナリ(サファイア)」の運命は、、、

青い毛を持つペルシャ猫、脳移殖… ファンタジーとして読んだ方が良い作品かな。


『クリスマスミステリ』は、7年間付き合った女流作家「樅木弥生」のことが邪魔になった俳優「黒須」が、クリスマスに計画した完全犯罪の顛末を描いた物語、、、

7年前、女流脚本家の「樅木弥生」が脚本を書くドラマに出演することで知名度をあげた「黒須」は、「弥生」と男女関係になることで、今では劇団の看板役者の地位を築き上げていたが、他の女優と恋仲になった「黒須」は、邪魔になった「弥生」の殺害を決意… 「黒須」は、テレビドラマの収録終わりに開かれるクリスマスパーティーの前に「弥生」の家に行き、「弥生」が飲むワインに毒を入れて殺害し、動かなくなった「弥生」を確認してからクリスマスパーティーの会場へと向かった。

だが、そこで「黒須」が見たのは、クリスマスパーティーに参加する「弥生」の姿だった… そして、「弥生」「黒須」にクリスマスパーティーのあとにもう一度家に来るように告げるのだった、、、

企みがばれたと思い、焦る「黒須」に対し、「弥生」は別れを告げる… しかし、その後、「弥生」がワインに入った毒を飲んで死んでいるのが発見され、容疑は「黒須」に向けられる。

「弥生」の方が一枚上手でしたね、、、

自らの命を懸けてまで、裏切った男を陥れるとは… 怖いですね。


『水晶の数珠』は、父「真一郎」の反対を押し切ってハリウッド俳優を目指して渡米していた「度会(わたらい)直樹」と、末期癌により死期を目前とした「真一郎」の最期の交流を描いた感動の物語、、、

「直樹」は姉「貴美子」から父が末期の癌と知り、父の誕生日に帰国することにしたが、実家への帰路の途中で父から電話があり、「やっと馬鹿な夢を諦めて日本に帰って来たか」と言われ、そのことで口論となり、父に会わずにアメリカへ引き返す… その3週間後に、「直樹」は父の葬式で再び日本を訪れることになったのだが、父は「直樹」だけへの遺言を残していた。

その遺言で「度会家」に代々伝わる“水晶の数珠”の不思議な力を知った「直樹」は、なぜあの日自分が実家に着く前に、父が電話を掛けてきて口論になるようなことをわざわざ言ったのか、その驚きの真実を知ることになる… 仰天の種明かしと爽やかな読後感が味わえる感動の物語でしたね、、、

父親の息子に対する愛情… 良い話でした。



9篇とも、軽く読めるけど、機知に富んだ意外な結末が用意されていて、さすが「東野圭吾」作品って感じでした、、、

「東野圭吾」作品は、長篇の方が好きですが、たまには短篇も良いですね。


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