夢の夢―鎌倉河岸捕物控〈15の巻〉 (時代小説文庫)佐伯 泰英角川春樹事務所このアイテムの詳細を見る |
ここ数ヶ月、借りて読み続けているシリーズ。既に十六巻目。まだまだ続く。政次、亮吉、彦四郎、しほ、それを取り巻く面々が織り成すドラマ。
平岩弓枝の"御宿かわせみ"に似るが、"かわせみ"ほど人間関係が複雑ではない。それがちょっと物足りないが、テンポの良い文体と型にはまったストーリーは安定感が良い。
十五巻目の"夢の夢"あたりから雰囲気が変わり、特に"夢の夢"は彦四郎の失踪という身近な人物の話題ながら、舞台を鎌倉河岸・江戸から抜け出させ、青梅、秩父路を政次、亮吉が彦四郎を追いながら活躍するストリーになっており、街の捕物という比較的小さな空間の話が続いた中、気分が変わって面白かった。またそれまでもずっと続けられていたいくつかのエピソードを合わせて大きな主題を文庫本一冊で構成するという形から、文庫本一冊で一話読みきりというかたちになり、なかなか読み応えがあった。
(2010年9月 野田文庫)