ネットでこの本を検索すると「共産趣味」の本とある。
福本 勝清 「中国革命を駆け抜けたアウトローたち」 中公新書
中国革命を駆け抜けたアウトローたち―土匪と流〓の世界中央公論社このアイテムの詳細を見る |
1998年3月25日発行
著者は1948年北海道生まれ。1978年明治大学第二文学部史学地理学科卒。1981年から84年まで北京大学歴史系留学。明治大学商学部助教授。
この本は中国の相続制度が知りたくて本を漁っていた時に読んだ。相続についてはp14に「均分相続 二千年続く」とある。これではどんな大地主でも三代目には破産する。(特に華北に多い)
アウトローとあるのは清朝末から民国期に暴れまくった馬賊・匪賊のこと。職業としての馬賊・匪賊もあるが、農閑期に馬賊・匪賊となる農民も多い。とにかく彼らシナ人の行為は日本人の感覚から言えば別世界。村が匪賊に襲われると被害にあった村が新たな匪賊となり別の村を襲いに行く。連鎖反応がおこる。村や町は共同してこれらに立ち向かうかといえば全くそのようなことをしない。中国の町や村は柵や城で防備されているように思うのだが、どうもこれは形式だけのことのようで、そこに居住する人はばらばらで共同体ではない。中身が全くともなわないのだ。黒澤明の「七人の侍」の話はどうも中国ではありえない話のようだ。第二次世界大戦時、シナ人はまったく統制がとれておらず、昨日は共産党、今日は日本、明日は国民党というような感じだったが、さもありなんということだろう。民国期のシナのジリ貧状態は、日本を含めた帝国主義列強の侵略や1929年の世界恐慌では説明不十分。シナ自身のこのような体質による影響が大としている。
以下メモ
--↓------------------------------------
p7
日本の中世や近世の領主像からはかけ離れた中国民国期の指導者(実力者)。農政の安定など見向きもしない。治安・災害はなおざり。大河の治水などは統一国家がすべきこと(中央集権国家の弊害)。
雲特の「中国救荒史」に民国成立から1937年までの26年間に77回の災害ありと書かれている。
水害 24
旱害 14
地震 10
蝗害 9
風害及び疫病 6
雹害 4
飢饉 2
霜害 2
雲特=拓 河南大学在学中卒論をもとに1937年上海商務印書館から出版
p11
民国期は下降期というべき時期。この混乱を帝国主義列強の中国侵略や植民地化に押し付ける論法がまかりとおってきたが、中国の社会システム自体にすでにこの混乱の原因があったとする。
p12
清代。フロンティアの時代。農民は湖南、湖北から四川、雲南、貴州など西南の地へ入る。さらに湖北から陜西をへて甘粛に向かい華北農民は東北へ移動する。
耕地は増えるが人口増加と相殺。19世紀中には一人当たりの耕地は漸減。移住する土地がなくなる。
人口増加を抑制してきた王朝交代期の破局が明末清初を最後になくなってしまったため、人口は増える一方。
トウモロコシ、サツマイモなど外来作物は飢えを減らした。
p18
満州
19世紀末 人口1200万人
1931年 人口3000万人
p132
日本の村は運命共同体、共同体
p133
中国の村は共同体ではない、運命共同体ですらない
それぞれの家が利害得失を計算して打開を図るしかない
守るべきは家
p258
社会は敵意に満ちたものである
自分という身体の外側に位置するものは全て外なる世界に属する
家族や宗族の薄い表皮の外には、もう自らを守るものはなくなってしまう
解決方法は緒個人の契約であったり、個々人の自立性の強化であったりする・・・はず
だが敵意に満ちている社会においては、それとは全く異なった解決方法がはかられる
身内の極大化である
まず子供を多く生み育てる
百子千孫
婚姻を通じて身内を二倍に増やす
身内を不幸にして持たないもの増やせないものはどうする?
異姓結拝
p224
異姓結拝。
兄弟分の契りを結ぶ
血が繋がっていること、同姓であることを何よりも重視する中国社会において姓を異にするものどうしが兄弟分になることは、日本の若者組や娘組などより格別の意味を帯びる
p259
白蓮教に代表される華北教門の信仰共同体も一つの信頼の供給方法
p264
改革解放政策
人々を食わせることを保障したシステムは存在しない
中央は県城より下は城鎮までしか直接権力を行使しない伝統的な統治スタイルにもどりつつある
1980年代以降、古い中国が復活しつつある様に見える
幇会は黒社会となって中国のいたるところにはびこるようになっている
--↑------------------------------------