アルチンボルド展
2017年6月20日~9月24日
国立西洋美術館
アルチンボルド展に圧倒される!
これまで観た記憶のあるアルチンボルド作品は、
1)2002年の東京芸大美「ウィーン美術史美術館名品展」で《冬》および《水》の2点。
2)2009年のBunkamura「だまし絵展」で《ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)》
3)2014年のBunkamura「だまし絵2」で《司書》および《ソムリエ(ウェイター)》の2点
の計5点。
そのうち、4点が本展に出品されているが、全く違ったものに見える。
これまでのように、
ハプスブルク家コレクション/ウィーン美術史美術館コレクションの一つとしてアルチンボルド作品を観る。
あるいは、
だまし絵(トリックアート/トロンプ・ルイユ)のコンテクストのなかでアルチンボルド作品を観る。
のではなく、
「アルチンボルドの生きた時代や環境、彼の人生、彼の作品の歴史的意義」、「彼自身のコンテクストのなか」でアルチンボルド作品を観る。
ということ。実に素晴らしい。
「奇想」「寄せ絵」の画家程度の認識で、今までアルチンボルドを軽く考えていたが、とんでもない。
西洋美術史上の巨匠の一人であることを強く実感した。
まずは、それぞれ4点揃って出品される《四季》および《四大元素》の連作の展示室。
《四季》《四大元素》は、大変人気があって、いくつものバージョンがあるらしい。最も有名なバージョンは皇帝になる前のマクシミリアン2世に献上されたウィーン美術史美術館バージョンのようであるが、本展ではそのウィーン美術史美術館バージョンから2点のほか、後年制作された複数のバージョンからも集めて、全8点を揃えている。
やっぱり素晴らしいのは、ウィーン美術史美術館バージョンからの2点、《冬》と《水》。品格が違う。
次にマドリードの王立サン・フェルディナンド美術アカデミー美術館の《春》。
会期4日目の6/23から登場したスイス・個人蔵の《大気》と《火》は、申し訳ないけど、ウィーン美術史美術館バージョンとは比べものにならない。
《冬》
《水》
それから、カリカチュア的肖像画《司書》や《法律家》。あら不思議、静物画なのに上下をひっくり返して見ると人物の頭部になる《庭師/野菜》や《コック/肉》。
前者のカリカチュアぶりと後者の静物画ぶりに感心させられるばかり。素晴らしい。
本展のもう一つの驚き。
レオナルド・ダ・ヴィンチの素描が、ウィンザー城・イギリス王立コレクションやロンドン・大英博物館からやってきて、参考作品的扱いで展示されているという、これまでの経験ではあり得ない事態が起きている。
本展の地下ロビーには、お馴染み「顔出しパネル」ではなく、来場者の顔をカメラで認識して「アルチンボルド風」に描いてくれる「アルチンボルドメーカー」が設置されている。我が顔を全200種もの野菜や果物から構成して描いてくれるというもの。今回私はパスしたが、結構な待ち行列となっている。現状2台用意されているが、会期が進むにつれ、希望者が加速度的に増えたり、1台が故障したりと、大変な状況になるに違いない。
本展は、大人気の展覧会に化けそうだ。
《四季》《四大元素》連作の展示室、周りの人たちがその楽しさ、面白さ、素晴らしさ口々に話している。
入場者数は、クラナーハ展超えは確実、会期日数の違いからカラヴァッジョ展超えは厳しいかもだが、近い数字になる気がする。
会期早めの訪問、あるいは夜間開館時間帯(金・土曜日は21:00まで)を有効活用した訪問が望ましい。
以下、本展出品のアルチンボルド名の油彩画作品。
《四季》
1590年頃
ワシントン・ナショナル・ギャラリー
《大公皇女(マルガレーテ?)》帰属
1563年頃
ウィーン美術史美術館
《大公皇女(バルバラ?)》帰属
1563年頃
ウィーン美術史美術館
《マクシミリアン2世の娘、皇女アンナ》帰属
1563年頃
ウィーン美術史美術館
《春》
1563年
マドリード、王立サン・フェルディナンド美術アカデミー美術館
《夏》
1572年
デンヴァー美術館
《秋》
1572年
デンヴァー美術館
《冬》
1563年
ウィーン美術史美術館
《大気》(作者は?付)
スイス・個人蔵
《火》(作者は?付)
スイス・個人蔵
《大地》
1566年(?)
リヒテンシュタイン侯爵家コレクション
《水》
1566年
ウィーン美術史美術館
《ソムリエ(ウェイター)》
1574年
大阪新美術館建設準備室
《司書》
スコークロステル城
《法律家》
1566年
ストックホルム国立美術館
《冬》帰属
1572年(?)
ヒューストン、メニル・コレクション
《庭師/野菜》
クレモナ市立美術館
《コック/肉》
ストックホルム国立美術館
以上18点。うち?付き2点、帰属4点。
ほかに、自画像2点ほか素描作品もある。
書き足らないので、今後、もう少し細かく見ていきたい。