ルーヴル美術館展-地中海 四千年のものがたり-
2013年7月20日~9月23日
東京都美術館
2回訪問。
1回目は、会期初日。
初日にもかかわらず、というか、初日だからこそ、というか、家族ふれあいの日だからかもしれないが、相当の混雑である。
純粋に美術展として美術作品を楽しむというスタンスで鑑賞する。
成果は多くない。
2回目は、1か月少したってから。
入館すぐは混雑していると思ったが、初日ほどではない。
今回は、歴史展として、キャプションをじっくり読む、展示作品は書籍の参考図版のような位置づけで見る、というスタンスで鑑賞する。
となると、キャプションの内容不足は否めない。図録購入が必要だったか?
序章「地中海世界-自然と文化の枠組み-」。
・船、麦、葡萄、オリーブ油、ロードス島、クレタ島、キプロス島、シチリア島について、それぞれ数点の出土品が展示されている。
・オリーブ油運搬専用の壺(アンフォラ)の形状を見る。
・地中海世界というのは、時間的・地理的・文化的にも、日本とは遠く離れた世界なのだなあ、と感じ入る。
第1章「地中海の始まり-前2000年紀から前1000年紀までの交流-」
・アルファベットの起源、フェニキア文字の重要性を認識する。
・ロゼッタストーンの石膏レプリカ登場(本物は英国)は、ご愛嬌ということにする。
・地中海内の交流、といっても、私にとっては、同じ地中海。やはり遠く離れた世界なのだなあと改めて思う。
・両腕を延ばして泳いでいる豊かな胸の女性の形をした(していたらしい)≪受け皿を持つ女性の形の奉納用スプーン≫が6作品も出ている。時代も、出品作の範囲では、前1100年-前400年と非常に長く、相当ポピュラーだったらしい。そのなかでは、前700‐前650頃(エジプト)の作品が、今回のマイ・セカンド・ベスト。
第2章「統合された地中海-ギリシア、カルタゴ、ローマ-」
・あまりにも小さいペンダントくらいしか出土品がない、という状況に、ローマによるカルタゴ破壊の徹底さを感じ取る。
・ローマの勢力拡大→歴史上唯一の地中海世界の単勢力化、の関連は、多少馴染みがある時代だが、出品数は抑制気味。
・≪ハドリアヌス帝の胸像≫は、像の欠け方の具合で、少し左手から見ると3D的な効果が楽しめる。
・≪ローマ皇帝ルキウス・ウェルス(在位161-169年)の妻ルキッラの巨大な頭部≫の巨大さを楽しむ。
第3章「中世の地中海-十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)-」
・ラテン王国関連、パレスチナ出土品による柱頭彫刻、浮彫断片計3点を見る。
・ヨーロッパのイスラム美術、的な作品はなかった(と思う)。
・わずか30点による紹介では物足りない章である。
第4章「地中海の時代-ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)-」
・ヨーロッパ人のトルコ趣味(出品数が相当手厚い)、トルコに対するヨーロッパ輸出品を見る。
・なぜか「クレオパトラ」主題作品が並ぶ一画がある。「エウロパの略奪」主題も並ぶ。
第5章「地中海紀行(1750-1850年)」
・ナポレオンも扱ってはいるが、驚くほどにあっさり。
・「南イタリア」の“再発見“的作品が手厚く並ぶ。
・シャセリオーのオリエンタリズムなのだろう作品が2点。特にコメントはない。
・本展の目玉≪ギャッピーのディアナ≫はこの章にある。想像よりは背が低い。薄服を普通に着て、そのうえでさらにマントを羽織ろうとする、その表現ぶりに見入る。やはり、今回のマイ・ベストと言えるだろう。
本展の項立て自体が、本展の肝なのに、出品リストに記載していないのは残念。
序章 地中海世界-自然と文化の枠組み
1 敵対する海
2 気候と三つの作物(麦、葡萄、オリーヴ油)
3 島から島へ(ロドス島、クレタ島、キプロス島、シチリア島)
第1章 地中海の始まり-前2000年紀から前1000年紀までの交流
1 他者を描く
1)エウロペの神話
2)エジプト美術とオリエント美術における異邦人
3)ギリシア美術における異邦人
2 地中海の贅沢品
1)宮殿と神殿
2)海洋大国ミケーネ
3)洗練された国際様式
3 技術の交流
1)ガラス
2)古代ファイアンス
3)石彫
4)木工芸
4 言語と文字
1)楔形文字とフェニキア文字
2)エジプト文字、ギリシア字、ラテン文字
5 オリエント宗教の伝播
1)エジプトの神々
2)オリエントの神々
第2章 統合された地中海-ギリシア、カルタゴ、ローマ
1 ギリシア人の地中海
1)エジプトのヘレニズム化
2)キプロス島とフェニキアのヘレニズム化
3)北アフリカのヘレニズム化
4)タナグラ人形
2 カルタゴ人の地中海
1)西の海の王者カルタゴ
3 ローマ人の地中海
1)スペインからギリシアに至るローマの勢力拡大
2)征服者であるローマ皇帝たち
3)地中海沿岸のローマ帝国属州
第3章 中世の地中海-十字軍からレコンキスタへ(1090-1492年)
1 ラテン国家
1)十字軍の時代
2)エルサレム王国
3)リュジャンニ朝キプロス王国
4)キプロス王国とエルサレム王国の貴族ジャン・ド・カフランの墓碑銘
2 東西の移動と交易
1)レパートリーの伝播
2)工芸品の技法と生産地
3)ビザンチン帝国の崩壊
第4章 地中海の時代-ルネサンスから啓蒙主義の時代へ(1490-1750年)
1 海洋国家ヴェネツィア
2 オスマン帝国下の地中海
1)ジャン=エティエンヌ・リオタールの旅
2)オリエント市場に向けた工芸品
3)18世紀の「トルコ趣味」
3 地中海への憧れ:西洋美術に見る愛欲の物語
1)愛の略奪
2)クレオパトラの死
第5章 地中海紀行(1750-1850年)
1 地中海紀行の始まり
1)18世紀のグランド・ツアー
2)シチリアの発見
3)イタリアの魅惑
2 芸術家たちによるロマン主義的なオリエント
1)ナポレオンとエジプト遠征
2)オリエントへの旅
3)植民地となった地中海
3 地中海観光の始まり