東京でカラヴァッジョ 日記

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2018年11月のフェルメール展(上野の森美術館)

2018年11月18日 | フェルメール
フェルメール展
2018年10月5日〜2019年2月3日
上野の森美術館

 
   平日に休暇を取ってフェルメール展に行く。13:00〜14:30の回を当日コンビニで購入する。
   館到着は14時、入場待ち10分の表示、その表示どおり10分後に入館。音声ガイドは受け取らない。
 
   フェルメール・ルームに直行し、16時頃まで人だかりにまぎれこんでフェルメール作品8点を楽しむ。
 
    10月訪問時からの変化。10月時には《牛乳を注ぐ女》にのみあった足元のロープ&白線、今回は他の7作品の前にも登場した。絵までの距離が多少遠くなり、小品《赤い帽子の娘》は見にくくなったが、それ以外はそれほど影響ない感じ。
 
 
   16時を過ぎて2階に上がると、なんと、噂では聞いていた「空いた」状態になっているではないか。10月訪問時ではほぼスルーしていた2階のオランダ絵画たち、今回じっくり鑑賞する。
 
   アムステルダム国立美術館ほかオランダ国内の美術館からの出品を主に、いい作品が並んでいることに今更ながら感心する。
 
肖像画。
カレル・デュ・ジャルダン《自画像》、本展の最初に登場する小さな作品は、自身を画家ではなく紳士として描く。フランス・ハルス《ルカス・デ・クレルクの肖像》《フェインチェ・ファン・ステーンキステの肖像》、夫婦の一対の肖像画、ハルスらしいタッチの顔と服装の黒色。ヘラルト・ファン・ホントホルスト《アマリア・ファン・ソルムスの肖像》、オランダ総督の妃の30歳のときの肖像画。ワルラン・ヴァイアン《花の画家マリア・ファン・オーステルヴェイクの肖像》、オランダの数少ない女性画家を描く肖像画。ヤン・デ・ブライ《ハールレム聖ルカ組合の理事たち》、オランダで独自に発達した集団肖像画、理事である画家自身も画板を手にした姿で描かれる。
 
神話画と宗教画。
ヘンドリック・テル・ブリュッヘン《東方三博士の礼拝》、理想化されない、実際にいるような赤ん坊の姿の幼児イエス。ヤン・ファン・ベイレルト《マタイの召命》、カラヴァッジョの影響を受けつつ羽帽子の人物をおっさんに変えている。レンブラント周辺の画家《洗礼者ヨハネの斬首》、サロメと首のないヨハネの胴体。ヤン・デ・ブライ《ユーディトとホロフェルネス》、カラヴァッジョやアルテミジア・ジェンティレスキとはまた違って、ユーディトが熟睡のホロフェルネスに刀を振り下ろそうとする場面、背後の付き人は老女ではなく濃褐色の若い女性。
 
風景画/静物画。
ニコラス・ベルヘム《市壁の外の凍った運河》、17世紀当時のヨーロッパは寒冷化していたのだなあ。だから、シモン・デ・フリーヘル《海上のニシン船》、北極海生息のニシンがオランダ近海まで下がり、オランダでニシン漁が盛んとなり、ニシン船が日常の光景として描かれたのだなあ。
 
風俗画。
ヘラルト・ダウ《本を読む老女》、細密に描かれた老女の顔、皺のある手、帽子、襟の毛皮、読んでいる聖書のページも特定可能。ニコラス・マース《窓辺の少女、または「夢想家」》、窓の周りに描かれた桃とアプリコット。ヤン・ステーン《家族の情景》、画面中央には一見聖母子、その周りには飲み騒ぐ大人たち。アリ・デ・フォイス《陽気なバイオリン弾き》、その汚れた爪、コップへの映り込み。クリンリング・ファン・ブレーケレンカム《仕立て屋の仕事場》、来店した女性客とその相談を受ける職人、その横の若い助手2人は仕事に没頭中。ヨブ・ベルクヘイデ《パン屋でレースを編む女》、フェルメール作品2点をくっつけたような題材。ピーテル・デ・ホーホ《人の居る裏庭》は、フェルメール《ワイングラス》の野外版&《牛乳を注ぐ女》が「ワイングラスたちに給仕する女」「銅の鍋を洗う女」に。ハブリエル・メツー《ニシン売り》、若い女性が魚売り、客が老女でニシンを真剣に品定め中。同じくハブリエル・メツーの《手紙を書く男》《手紙を読む女》は、ダブリンからフェルメール《手紙を書く婦人と召使い》とともに来日、恋文をやりとりする男女を描く対作品、フェルメールからの影響を示す黄色のガウンを着る女性。
 
 
   ますます空いていく2階展示室。どん詰まりとなっていて今まで入り込めなかった海景画・建築画の展示スペースも人がいない。17時、次の枠の入場開始の気配がしたところで、フェルメール・ルームに戻る。
   こちらも人は少なめになっていて、約30分、今回の私的好み4点《牛乳を注ぐ女》《ワイングラス》《赤い帽子の娘》《真珠の首飾りの女》に絞って見つめる。
 
 
 
   日時指定入場制度がなければ、2016年若冲展に匹敵するような、常時の長時間入場待ち、会場内の朝の通勤電車以上の窒息しそうな環境での鑑賞となっていたかもしれない。
   制度導入により、入場待ち時間が劇的に短縮、かつ、多少の波はあるとはいえフェルメール・ルームの混雑も緩和。《牛乳を注ぐ女》も最前列真正面での多少の立ち止まり鑑賞が可能。最前列と後方を分けられ、最前列は係員からの前へ進め・立ち止まるな攻撃を受ける、どこかの展覧会のような酷い環境は回避されている。
   上野の森美術館とは思えない、これ以上望むべくもないフェルメール展である。
 


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