アンディ・ウォーホル展:永遠の15分
2014年2月1日~5月6日
森美術館
1 キャンベル・スープ缶
≪32のキャンベル・スープ缶≫は、1962年にロサンジェルスのフェラス画廊で開いたウォーホルの実質的なレビューとなる個展に出品された作品である。
なぜ32なのか。当時売っていたキャンベル・スープ缶の全32種類を全て描いたのである。
個展の主催者は、32点全部が揃っていることにこそ意味があると気付き、既に売れていた作品も買い戻し、32点全部を手元に残した。
作品は、長らくワシントン・ナショナル・ギャラリーに寄託されていたが、近年、ニューヨーク近代美術館に寄贈された。
当時、ウォーホルはニューヨークで個展を開きたがっていたが、うまくいかなかった。
時間を経て、その出品作は、今ニューヨークにある。
2 死と惨禍シリーズ
最近話題となったが、サザビーズのオークションにて、ウォーホルの≪銀の自動車事故≫が105億円で落札された。
ウォーホルとしては過去最高、美術品としては史上4位の金額である。
(2013年11月。その前日、フランシス・ベーコンの≪ルシアン・フロイドの3習作≫が史上最高となる142億円で落札されている。)
なぜ、そんな金額となったのか。
一つは、点数が少ないこと。本作は3点しか存在が知られていない。
(主題からしてそんなに売れるものではなく、制作点数が少ない。)
もう一つは、シリアスであること。
ヨーロッパでは、死と惨禍シリーズが早くから評価されており、特にドイツやスイスが買い集めている。
ウォーホルといえば、日本では、キャンベル・スープ缶やマリリン・モンローといった少し軽いイメージがあるが、ヨーロッパでは「死」で有名になった。
本展覧会出品作のなかで、オークションに出せば最も高い落札額になると思われる作品は、≪自殺(シルバーの飛び降りる男)≫。数十億円になるだろう。
3 ツナ缶の惨事
1963年、A&P社の「チャンク・ライト・ツナ」缶を食べて2人の主婦が死亡した事件。
そのツナ缶は今は存在しない。
1963年といえば、今から50年前。その子供たちは生きている。
(ウォーホルの作品により後世まで記憶されたことを)どう思っているのか聞いてみたい。
以上、2月24日、アカデミーヒルズでの宮下規久朗氏のレクチャーから覚書き。
後日、ウォーホル展を再訪。
≪自殺(シルバーの飛び降りる男)≫。これが一番高いのか、と長く眺める。
右隣の≪病院≫。一見不気味だけれども、実は通常の平穏な出産場面だったのだ、と安心して眺める。
左隣の≪電気椅子≫。紫一色による効果を感心して眺める。