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【画像】国立西洋美術館が所蔵する女性画家の作品 - 2024年11月の国立西洋美術館常設展

2024年11月15日 | 国立西洋美術館常設展示
 国立西洋美術館が所蔵する女性作家の作品を確認する。
 ずいぶん少ない。
 漏れがあるかもしれないが、油彩作品だと、7作家7点である。
 
 新収蔵でまだ未公開の作品1点を除き、6点が現在展示中。フル稼働の雰囲気である。
 
 
 以下、その6点の画像を掲載する。
 国立西洋美術館の取得順に並べる。
 
 
1959年フランス政府より寄贈返還
ヴィクトリア・デュブール(1840-1926)
《花》制作年不詳、松方コレクション
 肖像および花と果物の静物を専門に描いたフランスの女性画家。
 画家のアンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904)と結婚。
 
 パリの国立美術学校が女性に門戸を閉ざしていた19世紀半ば、デュブールは女性画家のアトリエやルーヴル美術館での模写を通じて絵画を修めました。美術教育の機会は限られていたものの、彼女は花や果物の静物画で名を成すことになります。マネやモリゾ、ドガとも親しく、1876年にはアンリ・ファンタン=ラトゥールと結婚し、夫との共同制作も行いましたが、旧姓で署名した静物画を展覧会に出品し続けました。
 
 本作は、1959年にフランス政府より寄贈返還された松方コレクションのひとつ。
 現在、夫の静物画と並んで展示されている。
 なお、デュブールは、夫の死後、回顧展の準備、作品目録の編纂、書簡などの資料の整理を行い、後世に残したという。
 
 
2001年度購入
マリー=ガブリエル・カペ(1761-1818)
《自画像》1783年頃
 22歳の時の自画像。
 フランス・リヨンの慎ましい家庭の生まれ。
 1781年開催の「青年美術家展」の出品作家として記録があり、この頃までにパリに出て、女性画家アデライード・ラビーユ=ギアール(1749-1803)のアトリエの一員となっている。
 師は、パリ生まれで、1783年にヴィジェ=ルブランとともに女性として初めて王立アカデミー会員となる肖像画家。
 入門後まもなく、師の仕事を直接補佐するようになり、以降ラビーユ=ギアール家に生涯尽くす。
 一方で、自らも作品を制作し、展覧会に出品する。1791年のサロンが女性画家にも開かれると、そこに出品した21人の女性画家のひとりとなり、以後も1814年に至るまで継続的に出品する。出品作の多くはミニアチュール画で、油彩やパステルもあるが、いずれも肖像画である。
 
 
2015年度購入
アンゲリカ・カウフマン(1741-1807)
《パリスを戦場へと誘うヘクトール》1770年代
 スイス・クール生まれのオーストリア人の新古典主義女性画家。
 ローマやロンドンで活躍し、女性としては当時めずらしく歴史画の領域で国際的な成功をおさめた。
 
 
2017年度購入
ベルト・モリゾ(1841-95)
《黒いドレスの女性(観劇の前)》1875年
 フランス人の印象派女性画家。
 父親が高級官僚で、母親の家系がフラゴナールの遠縁にあたるモリゾ。姉とともに嗜みとして美術に親しんでいるうちに本格的に画家を目指すようになる。姉は結婚により画家の道を断念するが、妹は絵筆を捨てることなく、1874年の第1回印象派展に参加するに至る。
 同年、マネの弟のウジェーヌと結婚。無職で金利生活者のウジェーヌは、妻の画家としての活動を支えることに生きがいを見い出し、作品の展示や売却などに関してマネージャー的な役割を果たしたらしい。
 
 
2017年度購入
ローラ・ナイト(1877-1970)
《屋内訓練場のジョー・シアーズとW・エイトキン衛兵伍長 》1917年、旧松方コレクション
 
 本作品は撮影不可。
 代わりに、現在、小企画展「オーガスタス・ジョンとその時代  ー 松方コレクションから見た近代イギリス美術」に展示中の、2024年度新寄託作品の画像を。
 
 
2024年度寄託作品
ローラ・ナイト
《オレンジ色の上着》
1917年、旧松方コレクション、西村常次郎氏遺族より寄託
 20世紀前半のイギリスでもっとも高い評価を受けた女性画家のひとり。
 母親に絵の手ほどきを受けた後、ノッティンガム美術学校で学ぶ。そこで出会って結婚した画家ハロルド・ナイトとともに、オランダやフランス滞在を経て、1907年からコーンウォール地方のニューリンやラモーナの芸術家コロニーに加わり、フォーブスやマニングスらと交流、戸外制作に励む。この頃、半裸や下着姿で海水浴を楽しむ女性たちを大画面に描いた《太陽の娘たち》が1911年のロイヤル・アカデミー展で議論を招く。1920年代にはロンドンへ転居。劇場やサーカスを題材とした作品で名声を高め、1936年に女性として初めて投票によってロイヤル・アカデミーの正会員に選出された。1768年のアカデミー設立に加わったアンゲリカ・カウフマンとメアリー・モーザー以来の快挙であった。
 
 第一次世界大戦中、イギリス政府は国防上、海岸での制作を制限したが、特別許可を得たローラ・ナイトは1916年から1917年にかけてモダンな装いの若い女性たちをモデルとして一連の絵をラモーナの海岸で描いている。
 これらの作品は1918年2月にロンドンのレスター画廊で披露され、画家の評判を確かなものとした。
 ロンドン滞在中の松方幸次郎はこの出品作の中から4点購入。本作品はそのうちの一つである。
 
 
 
2024年度購入
ラヴィニア・フォンターナ(1552-1614)
《アントニエッタ・ゴンザレスの肖像》1595年(?)
 2024年9月14日から公開開始。
 ボローニャ生まれ、当地で活動した女性画家。高名な画家である父プロスペロ・フォンターナから絵画の手ほどきを受け、1580年代には画家として成功を収めている。
 西洋美術史で初めて職業画家として成功した女性とされ、18世紀以前に活動した女性画家のなかでは最多の現存作品が知られているという。
 1603/04年にローマへ移り、美術アカデミーであるアカデミア・ディ・サン・ルカの会員となる。
 
 
 油彩画は以上となる。
 
 彫刻だと、カミーユ・クローデルが1点(2021年購入)。
 素描や版画だと、マリー=ジュヌヴィエーヴ・ブリアール、メアリー・カサット、ローランサン、ケーテ・コルヴィッツ、パウラ・モダーゾーン=ベッカー、ヴァラドンなどがあるようだ。
 
 
 さて、現時点で未公開の新収蔵作品。
 
2024年度購入
フェーデ・ガリツィア(1578-1630)
《ホロフェルネスの首を持つユディト》
 
 17世紀初頭のミラノで活躍した女性画家。
 展示時期は決まり次第お知らせするとのこと。
 どんな作品か楽しみであるが、別人作の懸念はないのだろうか。
 国立西洋美術館は、ちょっと冒険してでも、女性画家の作品を収集したいというのがあるのだろうか。


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