神聖ローマ帝国皇帝
ルドルフ2世の驚異の世界展
2018年1月6日~3月11日
Bunkamuraザ・ミュージアム
アルチンボルド
《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》
1591年
スコークロステル城、スウェーデン
1526年にミラノで生まれたアルチンボルドは、1562年、皇帝フェルディナント1世のハプスブルク家に宮廷画家として任命され、ウィーンに移る。1564年、マクシミリアン2世が皇帝に即位。1569年、《四季》《四大元素》連作を皇帝に献上。1576年、ルドルフ2世が皇帝に即位。1587年、アルチンボルドは宮廷画家を辞して故郷ミラノに戻る。
本作品は、故郷に戻ったアルチンボルドが皇帝のために制作し、1591年に贈呈したもの。皇帝を、季節の移り変わりをつかさどるローマの神ウェルトゥムヌスになぞらえている。
本作品は、 2009年のBunkamuraミュージアム「奇想の王国 だまし絵展」で来日したことがある。その時はほぼスルー状態だった私、昨年のアルチンボルド展を経た今、「最晩年の最高傑作」とも評される本作の再見を楽しみにしていたところ。
会場内解説によると63種類に及ぶ四季全般・世界中の草花・果物・野菜により形作られ、正面向きにすることで威厳さを醸しだした肖像画。
まず惹かれるのが、顔、特に鼻と頬を形作る果物。鼻は洋ナシ、向かって左頬がリンゴ、右頬がモモ。図版で見るよりずっと瑞々しい。上瞼のサヤエンドウや下瞼の洋ナシ?も良い。
また、大きな野菜(カボチャ)に支えられた首から肩にかけての野菜の描写。カブ、ズッキーニ、ナス、エシャロット、玉ネギ、アンティチョーク、、、野菜好きの私、ただ見つめるばかり。図版で見るより断然よい。
期待どおり魅力的な作品である。
アルチンボルド作品の左隣には、
ハンス・フォン・アーヘン作のコピー
《ハプスブルク家、神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の肖像》
1600年頃
スコークロステル城、スウェーデン
両作品の肖像は似ているか? はさておき、両作品ともスウェーデンにあるのだなあ。Rマーク上、アルチンボルドが「ルドルフ2世旧蔵と考えられている作品」、後者が「オリジナルがルドルフ2世旧蔵と考えられている作品」かつ「ルドルフ2世旧蔵の可能性のある作品」に分類されている。
アルチンボルド作品の出品は1点ではあるが、追随者・模倣者の作品も出品され、1593年のアルチンボルド死去後も長く人気があったことが伺えるようになっている。
アルチンボルドの追随者
《秋の寓意》
17世紀、個人蔵
アルチンボルドのコピー作品。悪くはない。
作者不詳
《四季のうち春》
《四季のうち夏》
《四季のうち秋》
17世紀
エスターハージー財団、フォルヒテンシュタイン城宝物殿
花・野菜・果物による寄せ絵であること以外は、技術的にも品格的にもアルチンボルドから遠くに来てしまった作品。でもなかなか面白い。何故か「冬」の出品が無い。
フォルヒテンシュタイン城を調べる。
エスターハージー侯爵家は、ハンガリーの貴族で、首尾一貫してハプスブルク家に忠誠を誓ってきた。その財力は、時にハプスブルク家を上回るほど。交響楽の父ハイドンが楽長として仕えていた。
侯爵家の城であるフォルヒテンシュタイン城は、ウィーンから南東へ車で1時間ほど、ハンガリーとの国境にもほど近い街の丘の上に立つ。トルコ軍に対する西側諸国の砦として貢献。今は観光スポット。城内には侯爵家の肖像画ギャラリー(人気作品は、世界で唯一の「ドラキュラ伯爵の全身肖像画」)や、侯爵家版「驚異の部屋」である宝物殿などがある。本展のエピローグ「驚異の部屋」の工芸品はこの宝物殿からお借りしたものが多い。
出品作は、城内ではこんな感じで展示されているようだ。
アルチンボルド展が終了し、しばらくご無沙汰と思っていたアルチンボルド作品をこんなに早く観ることができるとは、ありがたいこと。現在、ローマでアルチンボルド展が開催中であることを思うと、よくこの時期に出品してくれたものである。
次のアルチンボルドは、5月からのルーヴル美術館展となる筈である。