東京でカラヴァッジョ 日記

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ルドルフ2世の驚異の世界展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2018年01月09日 | 展覧会(西洋美術)
神聖ローマ帝国皇帝
ルドルフ2世の驚異の世界展
2018年1月6日~3月11日
Bunkamuraザ・ミュージアム
 
 
 
   神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世(1552-1612)。11歳から19歳まで母の兄フェリペ2世のスペイン宮廷で過ごす。1576年、父・マクシミリアン2世の後を受け皇帝に即位。在位中、ウィーンからプラハに遷都。政治的には無能とされる一方、稀代の収集家、芸術の庇護者として知られ、プラハは当時のヨーロッパの芸術文化の一大拠点となる。占星術や錬金術に強い関心を示したことでも知られる。生涯独身。死去後、帝位は弟マティアスが継ぐ。ハプスブルク家史上最も仲の悪い兄弟であったと言われる。
 
 
 
本展の章立て
 
プロローグ   ルドルフ2世とプラハ
第1章   拡大される世界
第2章   収集される世界
第3章   変容する世界
エピローグ   驚異の部屋
 
 
 
   作品名のキャプションの下にRマークが付けられた作品。
   3種類のRがある。
 
・ルドルフ2世旧蔵と考えられている作品
・ルドルフ2世旧蔵の可能性のある作品
・オリジナルがルドルフ2世旧蔵と考えられている作品
 
   前半の出品作には殆ど見当たらず、後半になって立て続けに出てくるRマーク。数えると、15作品に16個のマーク(見落としあるかも)。2種類のマークを持つのが1作品。出品作はコピー作品だが、オリジナルはルドルフ2世旧蔵と考えられ、かつ、出品作であるコピー作品自体もルドルフ2世旧蔵の可能性のある作品、ということ。
 
 
 
プロローグ   ルドルフ2世とプラハ
 
   入場後いきなり行く手に立ちはだかる「南蛮屏風」に面食らう。神戸市立博物館所蔵《泰西王侯騎馬図》の複製。4人描かれる王侯のうち左端の王侯がルドルフ2世を描いたものだという。
   ルドルフ2世の胸像および肖像画のほか、ハプスブルク皇帝等の肖像版画。
 
 
 
 
第1章   拡大される世界
 
   「拡大される世界」とは、アレクサンドロス大王2点、バベルの塔2点、略奪系2点、眺望系3点、そして天文学関係資料10点強。
 
   バベルの塔作品2点が楽しい。いずれもブリューゲル《バベルの塔》の影響下にあるのだろう。
 
作者不詳
《バベルの塔》
1575-99年頃、油彩
コルトレイク市美術館、ベルギー
 
 
ルーカス・ファン・ファルケンボルフ
《バベルの塔の建設》
16世紀前半、グアッシュ
P.&N.ド・プール財団、アムステルダム
 
 
 
第2章   収集される世界
 
   動物画の巨匠、ルーラント・サーフェリー。動物画が油彩8点、版画6点。さらに静物画2点、他章にも風景画3点があって、こんなにサーフェリーを見たのは初めて、「プチ」サーフェリー展のよう。
 
   ドードーにも触れられる。16世紀にモーリシャス島で西洋に「発見」されてから1世紀たたないうちに絶滅した鳥。どうやらハプスブルク宮廷動物園で飼育されていたのか剥製があったのか、本展には参考図版のみの掲示であるが、サーフェリー(1576/78〜1639)が鳥類画のなかにドードーを描きこんでいるとの説明。小さい図版なのでどれがドードーか確信は持てなかったけど。
 
参考図版
ルーラント・サーフェリー
《鳥のいる風景》
1628年、ウィーン美術史美術館
 
 
 
  本展では、ヤン・ブリューゲル(父)の油彩画《陶製の花束に生けられた小さな花束》と写本挿絵画家ヨーリス・フーフナーヘルの水彩画《人生の短さの寓意(花と昆虫のいる二連画)》も推している。
 
ヨーリス・フーフナーヘル
《人生の短さの寓意(花と昆虫のいる二連画)》
1591年
リール美術館
 
 
 
第3章   変容する世界
 
   ハプスブルク皇帝の宮廷画家の作品を紹介。世はマニエリスム時代。
   目玉はアルチンボルドだが、ここではアルチンボルド以外で、気になる作品3選。
 
 
ハンス・フォン・アーヘン(1552-1615)
《少女の肖像(マリア・マクシミリアーナ・フォン・アーヘン》
1612年
プラハ城美術コレクション
   画家の次女を描いた作品。まだ幼くて愛らしい。ルドルフ2世旧蔵と考えられている作品。
 
 
レアンドロ・バッサーノ
《9月》
1580年以降
プラハ城美術コレクション
 
   2015年Bunkamuraの「ウィーン美術史美術館所蔵  風景画の誕生」展に、レアンドロ・バッサーノの月暦画連作が9点10枚展示された。日本にいながらにしてメジャーとは言い難い画家の大型連作に三方を囲まれる貴重な鑑賞経験であった。月暦画だから本来は12点、1〜8月と11月はあるが、9、10、12月がない。そのときの説明では、12月は所在不明、9・10月はプラハにあるとのこと。
   そして本展。プラハにあると言っていた、おそらくその「9月」が出品されている。サプライズである。私のイメージするバッサーノらしい色彩を楽しむが、一度9点の迫力を経験すると、1点ではどうもなあ、「10月」もあればなあ、と思うのは贅沢か。

 
パルミジャニーノ作のコピー
《神話画》(弓を作るキューピット)
17世紀
スコークロステル城、スウェーデン
 
   ウィーン美術史美術館が所蔵するパルミジャニーノ作品のコピー。ウィーンへの旅情に誘われる。オリジナルがルドルフ2世旧蔵と考えられている作品に分類される。コピー作品の現所蔵がスウェーデンというのは面白い。1648年のプラハ略奪、本作に関してはオリジナルではなくコピーのほうを略奪したのか。
 
 
 
エピローグ   驚異の部屋
 
   『偉大なるローマ皇帝のクンストカマーで見ることができる物品の1607年の目録』(リヒテンシュタイン侯爵家コレクション)。工芸作品20点強。参考出品として神奈川県立生命の星・地球博物館から「イッカクの牙」などの自然物ほか。
 
   錬金術も少し。プラハの修道会修道院所蔵の書籍が3点なので、コーナーとしては非常に小さく目立たない。
 
 
 
  アルチンボルドについては、別記事とする。


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