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イギリスとスコットランドの画家たち -【その2】「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展(東京都美術館)

2022年04月30日 | 展覧会(西洋美術)
スコットランド国立美術館
THE GREATS 美の巨匠たち
2022年4月22日〜7月3日
東京都美術館
 
 本展のお目当ては、ベラスケス、レンブラント、ラファエロであるが、それ以外にも興味深い作品が結構出品されていて、非常に楽しめる。
 
【本展の構成】
プロローグ ー スコットランド国立美術館
1.ルネサンス
2.バロック
3.グランド・ツアーの時代
4.19世紀の開拓者たち
エピローグ
 
 スコットランドの美術館のコレクション展なのだから、イギリス美術、スコットランド美術にも期待!
 
 ということで、以下では、3章および4章から、イギリスとスコットランドの画家たちによる印象に残る作品を記載する。
 
 
3章 グランド・ツアーの時代
(油彩15点、水彩・素描8点)
 
レノルズ(1723-92)
《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》
1780-81年、143×168.3cm
 
 第2代ウォルドグレイヴ伯爵ジェイムズ・ウォルドグレイヴ(1715〜63)の3人の娘が共同で手仕事(針仕事)に勤しむ姿は、レノルズによる「三美神」。
 中が20歳の長女エリザベス・ローラ。
 左が19歳の次女シャーロット・マリア。
 右が18歳の三女アン・ホレーシャ。
 制作当時の当主は第3代伯爵ジョンで、彼女たちの叔父(父の弟)にあたる。
 グラント・ツアーの時代、英国の画家レノルズも、イタリア・ローマに遊学歴(1749-52年)がある。
 
 
ジョージ・モーランド(1763-1804)
《勤勉さのもたらす快適さ》
《惰性のもたらす惨めさ》
1790年以前、31.5×37.6cm/31.6×37.3cm
 
 ホガース(1697-1764)の影響が伺える道徳的なテーマを取り扱った対作品。
 夫婦と三人の子どもから構成される家族の対称。
 ロンドン出身の画家は、大酒飲みで多額の借金を抱え、晩年の数年は刑務所で過ごし、最後は41歳でアルコール中毒で亡くなるという、《惰性のもたらす惨めさ》の将来を地で行くような人生であったらしい。
 
 
 
4章 19世紀の開拓者たち
(油彩25点、水彩・素描6点、版画6点)
 
ウィリアム・ブレイク(1757-1827)
《石板に十戒を記す神》
1805年頃、41.9×34.2cm
 
 日本では見る機会の少ない英国の画家・詩人ウィリアム・ブレイクの出品は嬉しい。
 ひざまずくモーセ、その上にそびえ立つ神が腕を上げ、彼の前の石板に十戒を刻む準備をする。
 ブレイクが1800〜09年の間に制作した聖書の主題の80の水彩画の1つとのこと。
 
 
ジョン・マーティン(1789-1854)
《マクベス》
1820年頃、50.1×71cm
 
 天変地異、破局を伴う壮大な風景を描けば天下随一と言われる英国の画家。
 その迫力ある風景で、小さく描かれた人物たちの物語が展開される。
 本作も、壮大な風景で、マクベスとバンクォーが3人の魔女と出会う。
 
 
フランシス・グラント(1803-78)
《アン・エミリー・ソフィア・グラント("デイジー"・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人(1836-1880)》
1857年、223.5×132.3cm
 
 スコットランド貴族の次男として生まれ、キツネ狩りや絵画の収集で財産を使い果たし、お金を得るため、ほぼ独学で油彩画を学び、職業画家となったという。
 自身の出自も生かして、当時の上流階級から多くの注文を受ける肖像画家となる。
 本作品は、絶頂期の画家が、結婚直前の次女の姿を描いたもので、終生手元に残したという。
 
 
ジョン・コンスタブル(1776-1837)
《デダムの谷》
1828年、144.5×122cm
 
 19世紀イギリスを代表する風景画家。
 生まれ故郷サフォークのお気に入りの田園風景を描いたという本作品、その素晴らしさに驚く。
 私的には、2021年の三菱一号館美術館「コンスタブル展」で見た作品たちを大きく上回る素晴らしさ。
 隣り展示のターナー《トンブリッジ、ソマーヒル》1811年 も霞んで見える。
 画家自身が本作を「おそらく私の最高傑作」と評したらしい。
 2014年の「ロイヤル・アカデミー展」で見た《水門を通る舟》 1826年 とともに、コンスタブルの私的2大お気に入り作品とさせてもらう。
 
 
エドウィン・ランドシーア(1802-73)
《荒野の地代集金日》
1855-68年、122×265cm
 
 動物画により知られるロンドン出身の画家。
 本作は、何の場面なのだろうか。
 歴史画であるようだが、会場に作品解説がなく、図録も参照していないので、分からないままでいる。
 
 
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96)
《「古来比類なき甘美な瞳」》
1881年、100.5×72cm
 
 ミレイお得意の理想化された子供を感傷的に描いた「ファンシー・ピクチャー」。
 モデルは、当時11〜12歳の子役俳優ベアトリス・バックストンで、ミレイは1881年に彼女をモデルに3作描いたという。
 本作の当初タイトルは《スミレの花を持つ少女》であったが、後に英国の女性詩人エリザベス・バレット・ブラウニング(1806-61)の詩「カタリーナからカモンイスへ」から引用した現在のタイトルへ、画家自身が変更したという。
 'Sweetest eyes were ever seen'
 
〈参考〉ベアトリス・バックストン(1869-1956)をモデルとしたミレイの他2作品。
 
 順にミレイ《シンデレラ》、《Caller Herrin》(スコットランド民謡をもとにした作品)、& 写真家ルパート・ポターが同年に撮影した「シンデレラ」。
 
 
 
 3章・4章では、ロココから印象派までのフランス美術も出品されているが、割愛する。
 
 
 会期は7月頭までなので、再訪するつもり。
 まずはベラスケスを改めてじっくり見る。
 また今回時間があまり取れなかった2階フロアの作品もしっかり見たい。
 


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