ティツィアーノとヴェネツィア派展
2017年1月21日~4月2日
東京都美術館
日伊国交樹立150周年記念の大型美術展の大トリ。
ティツィアーノ作品4点に魅入る。
《フローラ》
1515年頃
ウフィツィ美術館
・肌の質感が素晴らしい。画家も手間暇かけて描いたらしい。一方、白い衣装は素早いタッチ。変な気持ちは抜きで、白い衣装なしで画面の大半が肌ならば、より魅惑的な作品になるかも。今白い衣装を取り除いても、下から肌が出てくる訳はないけど。
・2001年の国立西洋美術館「イタリア・ルネサンス:宮廷と都市の文化展」でも来日。
《ダナエ》1544-46年頃
カポディモンテ美術館
・初来日!!
・金貨の混ざった黄金の雨を見つめるダナエ。カーテンにシーツに、柱に、広がる後景。彼女は一体どんな空間にいるのか。
《教皇パウルス3世の肖像》1543年
カポディモンテ美術館
・70歳代半ばの男の肌の描写に注目。
・教皇が1543年に神聖ローマ皇帝カール5世に会うためにボローニャを訪れた際、教皇自身がティツィアーノのモデルとなって描かれた、とのこと。
《マグダラのマリア》
1567年
カポディモンテ美術館
・着衣のマグダラのマリア。
・2010年の国立西洋美術館「カポディモンテ美術館展」以来の来日。
もう一人、パルマ・イル・ヴェッキオの2作品も魅力的。
パルマ・イル・ヴェッキオ
《ユディト》
1525年頃
ウフィツィ美術館
・クラーナハとは真逆、えらくふっくらとした着衣の女性。男の首を切るには、このくらいの体格がないと。首の切断面は見せないようにする大人の配慮が好ましい(見せない方が普通か)。
パルマ・イル・ヴェッキオの工房
《女性の肖像(スキアヴォーナ)》
1520年頃
ウフィツィ美術館
・工房作とあるが、画家らしさを味わえる肖像画(特定の個人を描いたものではないらしいが)。
油彩画51点と版画17点からなる本展。
油彩画作品の出品元を確認する。
ヴェネツィア、コッレール美術館 4点
ウフィツィ美術館 16点
カポディモンテ美術館 9点
ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館 21点
国立西洋美術館 1点
出品元は、意外にもイタリアの4つの美術館に限られ、かつ、ヴェネツィアからはコッレール美術館1館の4点に限られる。
ただ、ヴィチェンツァも、本展の対象期間を含む4世紀間(1404年〜1797年)、ヴェネツィア共和国の支配下にあった都市である。
本展の主流出品作は、ウフィツィやカポディモンテやコッレール所蔵の作品。
一方、ヴィチェンツァ所蔵の作品は、補完的な役割を担当している。
ヴェネツィア派のトップクラスにいない画家の作品を広く担当し、ヴェネツィア派の裾野を提示している。
その中でなかなかの仕事も2件。
1)ティツィアーノに兄がいて、兄も画家だったことを初めて知る。彼も85歳頃までと長命であった。
フランチェスコ・ヴェチェッリオ
《聖家族とマグダラのマリア》
1530年代
ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
2)ルーヴル美術館所蔵のヴェロネーゼの6.77m×9.9mの超大作《カナの婚礼》。さすがにそれは持って来れないが、代わりに別画家による縮小模写作品により、ヴェロネーゼの真価を示唆する。
ダル・フリーゾ
《カナの婚礼(ヴェロネーゼに基づく)》
1590年頃
ヴィチェンツァ、キエリカーティ宮絵画館
私も『ティツィアーノとヴェネツィア派展』を見てきましたので、画像と鑑賞レポートを読ませていただき、この美術展で作品を見た感動を再体験することができました。ティツィアーノの繊細な色彩の諧調と光の表現と色彩感覚に力強さと抑揚が加わり、新しい絵画の可能性を切り開言っていったことを作品から体験できて良かったと思います。ティツィアーノの『フローラ』のつややかな肌の質感の表現のすばらしさから、『ダナエ』の美しい色彩感覚とは動的な表現と画風が変化しているのを興味深く感じました。
私もこの美術展を見て、代表的な作品の魅力とヴェネツィア派絵画とフィレンツェやローマのイタリアルネサンスとの違いを考察してみました。読んでいただけると嬉しいです。内容に対してご意見・ご感想などコメントをいただけると感謝いたします。