改修工事のため2020年10月より長期休館していた国立西洋美術館が、2022年4月9日、リニューアル・オープンした。
1年半ぶりの開館である。
当面の間、常設展および小企画の展示のみ。
企画展は、6月4日から開始予定。
で、早速リニューアル・オープン初日の午後、国立西洋美術館を訪問する。
記事その2は、休館前と変わったところを取り上げる。
まずは、新収蔵作品&初展示作品。
新収蔵作品3点。
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-96)
《狼の巣穴》
1863年、83.8 x 114.3 cm
グランドピアノを狼の巣穴に見立てて遊ぶ、画家の4人の子どもたちを描く「ファンシー・ピクチャー」。
左から、長女、長男、次女、次男。
1863年の制作なので、長女5歳、長男7歳、次女3歳、次男6歳の頃となる。
1863年時点の画家は、1歳頃の三男、生まれたか生まれる前かの三女もおり、その後も男女一人ずつ、結果8人の子どもに恵まれている。
本作は旧松方コレクション。
1920年頃に松方が購入し、日本に持ち込むが、コレクション散逸期に売り立てられる。その後は、国内を転々とした模様であるが、2020年に国立西洋美術館が東京の個人より購入(109,815,550円)。
同じく旧松方コレクションである《あひるの子》とあわせ、国立西洋美術館が所蔵するミレイ作品は2点となる。
長男エヴァレット、7歳頃
次男ジョージ、6歳頃
長女エフィー、5歳頃
次女メアリー、3歳頃
ベルナルド・ストロッツィ(1581-1644)
《聖家族と幼児洗礼者聖ヨハネ》
制作年不詳、82.1x104.9cm
17世紀前半にジェノヴァとヴェネツィアで活躍した画家。
本作は、ナチスがユダヤ人のコレクションから不当に収奪した歴史を有する。
戦後は長くルーヴル美術館に預けられていたが、1999年に元所有者の遺族に返還される。
2000年にオークションにかけられ、以降、所有者の変遷を経て、2020年に国立西洋美術館が購入(58,202,400円)。
アドルフ・ピエール・ルルー(1812-91)
《鵞鳥を連れた子供たち》
1855年、99.1×.74.3cm
2020年に個人から寄贈された作品。
私的には初めて名を聞くフランスの画家。
初展示作品も2点。
ヨゼフ・イスラエルス(1824-1911)
《煙草を吸う老人》
制作年不詳、65.2 x 50.2cm
本作も旧松方コレクション。日本に持ち込むが、コレクション散逸期に売り立てられ、その後国内に所蔵され、2017年に国立西洋美術館が購入。
イスラエルスは、オランダ「ハーグ派」の画家。
フランク・ブラングィン(1867-1956)
《木陰》
制作年不詳、64.2 x 79cm
2018年度に個人から寄贈された作品。
ブラングィンは英国の画家で、ロンドンで美術品収集を開始した松方と親しく交流。
松方から、自作の売却、共楽美術館のデザイン制作、他の画家の作品の購入の代理を依頼され、協力している。
そして、前庭のリニューアル。
2016年に本館と前庭を含む敷地全体がユネスコ世界文化遺産に登録された際、過去の工事で前庭を改変した結果、普遍的価値が減じているとの指摘がなされていた。
そこで、今回の改修工事において、前庭を、当初の設計意図が正しく伝わるような形で、開館時の姿にできる限り戻すこととしたもの。
植栽がほぼなくなって、一面がコンクリートの前庭。
ロダンの《考える人》と《カレーの市民》も当初に近い位置に変更。
柵は、透過性のあるものに。
残る植栽、ロダン《カレーの市民》の芝生。
西側の門(開館当初の入口)からロダン《地獄の門》へ、一直線に伸びる白い線。
その白い線はT字型で、途中で左に直角に曲がり本館へと伸び、来館者を誘導する。
(参考:完成予想図)
建物内の変化としては、本館1階の常設展示室の入口は同じだが、1階の「19世紀ホール」が今回から無料開放されることとなり、その変更に伴い、チケットもぎり場所が、入口ではなく、「19世紀ホール」内の2階展示室に上るスロープの手前に変更となっている。
さて、国立西洋美術館のリニューアルオープン後の最初の企画展は、6月4日から。
自然と人のダイアローグ
フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで
2022年6月4日〜9月11日
国立西洋美術館
ドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館との共同企画の第二部(第一部は現在フォルクヴァング美術館で開催中)。
チラシを見て知ったのだが、フォルクヴァング美術館からは、なんと!!次の作品が出品される。
ゴーガン
《扇を持つ娘》
1902年
フォルクヴァング美術館
1996-97年に7都市を巡回(東京は、かつて池袋にあった東武美術館)した「フォルクヴァング美術館展」に出品された。
同じく同展に出品された他2点とあわせて計3点のフォルクヴァング美術館所蔵のゴーガン作品。そして、ほぼ同じ時期に開催された別展覧会に出品された別美術館所蔵のゴーガン作品1点。
その4点が、長らく分からなかったゴーガンの楽しみ方を私に教えてくれた。
その作品の一つに再会できるとは、今から興奮している。